『キス・アンド・テル』(Kiss And Tell)は、マーティン・テイラー(Martin Taylor)が1999年にリリースしたジャズ・アルバムである。
4歳の頃からギターを始め、8歳になる頃には父バック・テイラー(Buck Taylor)と共にバント活動を行っていたマーティン・テイラー。
15歳からプロとしての活動を開始し、1979~1990年の間はステファン・グラッペリ(Stéphane Grappelli)と共にフランス・ホット・クラブ五重奏団(The Quintet of the Hot Club of France)の一員としても活躍していた。
順調なキャリアを築いていたマーティンだったが、1980年代後半は不遇の時期を過ごし、一時期は所持していたギターを売り払い生活費に充てるほど追い込まれていたそうだ。
しかし、幸か不幸かこのあたりからソロ・ギタリストとしての実力が開花し始め、1992年にリリースしたソロギター・アルバム『アーティストリー』(Artistry)が大ヒット。12週に渡りHMVジャズ・チャートで1位にランクインし、一気に”世界のジャズ・ギタリスト”として認知されることとなった。
恐らく、「マーティン・テイラー=ソロ・ギタリスト」として認知している方が多いだろう。しかし、今回紹介する『キス・アンド・テル』(Kiss And Tell)はコンボ・スタイルでの作品であり、”ジャズで良く見る編成”のアルバムとなっている。
このアルバムの素晴らしいところは、単なるジャズ・アルバムで終わっていないところだ。
ジャズ・スタンダード、ポップス、スムース・ジャズ、ラテン、ソロギターなど様々な楽曲が収録されており、1枚でマーティン・テイラーの魅力が存分に味わえる仕上がりとなっている。マーティンの特徴であるアコースティックで美しいサウンドとフレーズも健在であり、アメリカ系ジャズ・ギタリストとの違いも楽しむことができるだろう。
ゲストとして参加しているミュージシャンも一流のプレイヤー達が集まっている。
まず、サックス奏者としてレコーディングに加わったのが、メンフィス生まれのカーク・ウェイラム(Kirk Whalum)。
クインシー・ジョーンズ、ルーサー・ヴァンドロス、アル・ジャロウ、ホイットニー・ヒューストンらと共演歴があり、グラミー賞ノミネート歴もあるミュージシャンである。
フリューゲルホルン奏者にはフュージョン界で知らぬものはいないであろう、ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)が参加。また、トロンボーンにジェイ・アッシュビー(Jay Ashby)、テナー・サックスにはジョージ・ガゾーン(George Garzone)も名を連ねている。
今名を挙げたプレイヤー達は、ジャズを基調としながらもスムースジャズやフュージョン界でも活躍している幅の広いミュージシャンばかり。彼らが集結したことにより、ジャズ・アルバム特有の"堅苦しさ"のない、聴き心地のよい作品が完成することとなったのだ。
本アルバムは『アーティストリー』(Artistry)に勝るとも劣らない高い評価を獲得し、これがきっかけでマーティンはレコード会社であるザ・ギター・ラベル(The Guitar Label)とアルバム7枚の契約を勝ち取ることとなった。
Kiss And Tell - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Kiss and Tell | Martin Taylor | 5:11 |
2. | You've Changed | Bill Carey, Carl Fischer | 4:48 |
3. | The Odd Couple | Sammy Cahn / Neal Hefti | 7:55 |
4. | Garden of Dreams | Carol Novack | 6:09 |
5. | What a Friend We Have in Jesus | Charles C. Converse, Joseph Scriven | 1:01 |
6. | Midnight at the Oasis | David Nichtern | 3:58 |
7. | Mona Lisa | Ray Evans | 4:53 |
8. | Five-O | Mort Stevens | 6:13 |
9. | Sunstep | Antonio Forcione | 4:16 |
10. | Ginger | Martin Taylor | 6:38 |
11. | Midnight Voyage | Joey Calderazzo | 4:16 |
12. | The Nearness of You | Hoagy Carmichael / Ned Washington | 11:25 |
Kiss And Tell - Credit
マーティン・テイラー(Martin Taylor)- ギター
カーク・ウェイラム(Kirk Whalum)- ソプラノサックス
ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)- フリューゲルホルン(Track 11)
ジェイ・アッシュビー(Jay Ashby)- トロンボーン
ジョージ・ガゾーン(George Garzone)- テナーサックス
クリス・ケント(Chris Kent)- ベース
エディ・ゴメス(Eddie Gómez)- ベース
アル・フォスター(Al Foster)- ドラム
エリック・ダーケン(Eric Darken)- パーカッション
ジョン・キャッチングス(John Catchings)- バイオリン
デイビット・デイビッドソン(David Davidson)- チェロ
クリスティーン・ウィルキンソン(Kristin Wilkinson)- ヴィオラ