『ア・フラワー・フォー・オール・シーズンズ』(A Flower For All Seasons)は、エディ・ダニエルズ(Eddie Daniels)とバッキー・ピザレリ(Bucky Pizzarelli)が1973年にリリースしたアルバムである。
この作品を紹介する前に、まずはこの優れた2人の奏者を紹介しておこう。
エディ・ダニエルズ(Eddie Daniels)は、1941年10月19日生まれの楽器演奏家。
ニューヨーク市内のブルックリンで育った彼は、10歳の時にアーロン・サックス(Aaron Sachs)からアルトサックスを習い始める。
13歳からはクラリネットのレッスンも開始し、その2年後にはニューポート・ジャズフェスティバルの青少年コンテスト部門に出演。
大学はニューヨーク州に本部を置くジュリアード音楽院に入学し、修士号を取得している。
1966年、エディはサド・ジョーンズ / メル・ルイス・ジャズ・オーケストラに入団し、約6年間ここに在籍。
この間はテナーサックス、クラリネット、さらにはフルートも演奏していたようだ。
1980年以降は主にクラリネットを演奏することが多くなり、1989年にはロジャー・ケラウェイ(Roger Kellaway)が編曲を行った”Memos from Paradise”の演奏にて、自身初のグラミー賞を獲得している。
その後も精力的に活動を続け、2001年はゴードン・グッドウィンズ・ビッグ・ファット・バンド(Gordon Goodwin's Big Phat Band)の1stアルバムに収録された”Sing Sang Sung”にて超絶なクラリネットソロを披露。
また、2ndアルバムでは"Mozart 40th Symphony in G minor”、3rdアルバムでは"Under The Wire"のソロを担当するなど、現在ではビッグ・ファット・バンドに欠かせない存在となった。
次に紹介するのは、7弦ギタリストの使い手として名高いバッキー・ピザレリ(Bucky Pizzarelli)。
17歳からプロギタリストとしての活動を開始し、1970年以降はベニー・グッドマン(Benny Goodman)楽団、ステファン・グラッペリ(Stéphane Grappelli)、サラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)などと共演し、サイドマンとして数々の名盤に参加している。
バッキーはソリストとしても素晴らしいが、特に高く評価されているのが彼の伴奏だ。
伝統的な4つ切りバッキングを得意とし、楽曲をスウィングさせる能力は世界No.1といっても過言ではない。
2020年に亡くなってしまったものの、元祖リズムギタリストとして知られるフレディ・グリーン(Freddie Green)に次ぐ存在として、歴史に名を刻んだ演奏家である。
さて、ここからは『ア・フラワー・フォー・オール・シーズンズ』(A Flower For All Seasons)の内容について説明していこう。
本作はエディ・ダニエルズの三作目のリーダー・アルバムであり、1973年2月に発表された作品である。
前述のとおり、エディは1980年以降クラリネットを中心に演奏しているが、このアルバムではフルート、アルトフルート、クラリネット、バスクラリネットの4つの楽器を使用。
ボーナストラックを含めると全15曲が収録されており、そのうち9曲でフルート(アルトフルート含む)、3曲でクラリネット、3曲でバスクラリネットをプレイしている。
フルートを演奏している割合が多いため、エディのクラリネットを期待している方は少し注意が必要だ。
しかし、逆に言えばエディの様々な側面が楽しめる作品とも言える。
特にフルート奏者であれば、エディの超絶技巧は一聴の価値アリだ。
もちろん、クラリネットがフューチャーされた3曲も高い完成度を誇っており、クラリネット奏者にもお勧め。
バッキーのスウィンギーな伴奏も素晴らしく、エディとの相性も抜群。
7弦ギターだけでなく、アコースティックギターも使用しており、こちらでも安定感のあるバッキングを披露している。
A Flower For All Seasons - Track Listing
No. | TItle | Writer | Length |
1. | Samia | Les McCann | 3:40 |
2. | Afterthought | Eddie Daniels, Bucky Pizzarelli | 5:01 |
3. | Entr'acte | Jacques Ibert | 3:31 |
4. | Emily | Johnny Mandel, Johnny Mercer | 3:25 |
5. | Etude No. 14 In F Minor, Opus 25 No. 2 | Frederic Chopin | 3:54 |
6. | Variations On An Autumn Theme | Pat Williams | 1:25 |
7. | As Long As I Live | Harold Arlen, Ted Koehler | 3:19 |
8. | Two For The Road | Henry Mancini, Leslie Bricusse | 1:35 |
9. | Blue Bossa | Kenny Dorham | 3:17 |
10. | Wistful Moment | Roland Hanna | 4:13 |
11. | Shine | Ford Dabney, Cecil Mack | 3:07 |
12. | A Flower For All Seasons | Roland Hanna | 4:15 |
13. | Samia (Take 2) | Les McCann | 3:55 |
14. | Blue Bossa (Take 2) | Kenny Dorham | 3:23 |
15. | Samia (Unpublished Take) | Les McCann | 4:14 |