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ロックン・ロールの歴史に名を刻んだ名盤『アペタイト・フォー・ディストラクション』(Appetite for Destruction)- ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)

『アペタイト・フォー・ディストラクション』(Appetite for Destruction)は、ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)が1987年にリリースしたアルバムである。
発表当初こそ注目されることは少なかったものの、翌年に行ったツアーやラジオで放送された"Welcome to the Jungle"、"Paradise City"、"Sweet Child o' Mine"の3曲が火付け役となり、人気が急上昇。
リリースから50週間後にビルボードチャートにて1位を獲得し、その後爆発的に売り上げを伸ばし続けた。
現在のトータルセールス枚数は脅威の3,000万枚を記録しており、アメリカ国内のみだけで1,800万枚の出荷枚数を達成。
これにより、ボストン(Boston)のセルフタイトル・アルバムやメタリカ(Metallica)の通称ブラック・アルバム(Metallica)を抑え「アメリカ合衆国で最も売れたアルバム」にて12位にランクインすることとなった。

ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)の記念すべきデビュー作となった『アペタイト・フォー・ディストラクション』(Appetite for Destruction)
今回はこのロックン・ロールの歴史に名を刻んだ名盤と共に「ガンズ・アンド・ローゼズ」というバンドについても説明していこう。

ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)は、1985年に結成したロックバンドである。
結成当初のメンバーは、L.A.ガンズ(L.A.GUNS)のトレイシー・ガンズ(Tracii Guns)、ロブ・ガードナー(Rob Gardner)、オレ・ベイチ(Ole Beich)イジー・ストラドリン (Izzy Stradlin)、そしてボーカルのアクセル・ローズ (Axl Rose)。
アクセルはこの時ハリウッド・ローズ(Hollywood Rose)と呼ばれるバンドに所属しており、L.A.ガンズとリウッド・ローズの名前を組み合わせ「ガンズ・アンド・ローゼズ」と命名した。

初めてライブを行ったのは、1985年3月26日。このライブの後、ベーシストだったオレ・ベイチが解雇され、代わりにダフ・マッケイガン(Duff McKagan)が加入。
それからすぐにガンズ・アンド・ローゼズはミニ・アルバムの作成にとりかかり、後の1stアルバムにも収録される"Think About You"、"Anything Goes"や"Don't Cry"、"Heartbreak Hotel"のカバーなどのレコーディングを行った。
一見順調そうに見えたバンド活動だったが、ある日アクセルとトレイシーが口論になり、トレイシー、さらにロブ・ガードナーがバンドを脱退。これに伴い、ミニ・アルバムのリリースも消滅してしまうこととなった。

ギタリスト、ドラマーを失ったガンズ・アンド・ローゼズは、彼らに代わりにハリウッド・ローズ(Hollywood Rose)のメンバーだったスラッシュ(Slash)、スティーヴン・アドラー(Steven Adler)を招集。
いわゆる「ザ・ガンズ・アンド・ローゼズ」と呼ばれるメンバーが揃ったのは、1985年6月4日のことであった。
その2日後、バンドはすぐにファースト・ライブを終えると、カリフォルニア州サクラメントからシアトルを横断するツアーを行っている。
これはかなり過酷なものだったようで、途中で移動用のバンが壊れたため、ヒッチハイクをしながらカリフォルニアとシアトルを横断したそうだ。
この当時の様子を、ベーシストのダフ・マッケイガンは以下のように語っている。

「あのツアーは俺たちにとってよいベンチマークになった。俺たちがバンドとして、どのように目標を達成するか良い試練になったよ。」

その後もライブやツアーを精力的にこなし、ガンズ・アンド・ローゼズはハリウッドのクラブシーンで徐々に存在感を示していき、大手メジャーレベールからも声がかかるようになる。
その中から、彼らは契約金7万5000ドルでゲフィン・レコードと契約を締結。
バンド結成から約1年後となる、1986年3月のことだった。

同じ年の12月、ガンズ・アンド・ローゼズは4曲入りのミニ・アルバム『ライブ・ライク・ア・スーサイド』(Live ?!*@ Like a Suicide)をリリース。"Nice Boys"やエアロスミス(Aerosmith)の"Mama Kin"など含んだこのアルバムは、1万枚限定で発売され、すぐに完売することとなった。

そこからガンズ・アンド・ローゼズはフル・アルバムの制作に着手。
何名か選考を行った結果、プロデューサーはアメリカ出身のマイク・クリンク(Mike Clink)が担当することとなった。
レコーディングが行われたのは1987年1月、場所はロサンゼルスにあるランボ・レコーダーズ。
基本的には録音は2週間で完了させ、ここからオーバーダブのギターやボーカルなどを加えていった。
ギタリストのスラッシュはギブソンとマーシャルの組み合わせで最高の音色を出すため、何時間を費やしていたそうだ。
最終的にはニューヨークにあるメディアサウンド・スタジオへ移り、ミックス、マスタリングを完成させた。

そして1987年7月21日、ガンズ・アンド・ローゼズの記念すべきデビュー・アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』(Appetite for Destruction)が発売。
前述したとおり、リリース当初こそ話題にならなかったものの、いまでは「ロック界に残る名盤中の名盤」として愛されている。
収録されている曲は、メンバーが以前所属していたバンドで書いたナンバーが多く並ぶ結果となった。
ここからは、その名曲達を1曲ずつ解説していこう。

Appetite for Destruction - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Welcome to the JungleGuns N' Roses4:31
2.It's So EasyGuns N' Roses, West Arkeen3:21
3.NightrainGuns N' Roses4:26
4.Out ta Get MeGuns N' Roses4:20
5.Mr. BrownstoneGuns N' Roses3:46
6.Paradise CityGuns N' Roses6:46
7.My MichelleGuns N' Roses3:39
8.Think About YouGuns N' Roses3:50
9.Sweet Child o' MineGuns N' Roses3:55
10.You're CrazyGuns N' Roses3:16
11.Anything GoesGuns N' Roses, Chris Weber3:25
12.Rocket QueenGuns N' Roses6:13

Background & Reception

1曲目の"Welcome to the Jungle"は、ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)のみならずロック界を代表する名曲中の名曲である。
特徴的なリフが誕生したのは、ボーカルのアクセル・ローズ(Axl Rose)がギターのスラッシュ(Slash)の実家に居候していた頃。
バンド・メンバーで新曲を作曲している際に、アクセルはスラッシュが自宅で何気なく弾いた"Welcome to the Jungle"のリフを思い出した。
これをスラッシュに再び演奏してもらい、バンド全体で曲として完成させたそうだ。
ちなみにブレイクダウンの個所は、ベーシストのダフのアイデアらしい。
タイトルとなった「ジャングル」とは、実際にアクセルがニューヨークでホームレスから掛けられた以下の言葉が元となっている。

「お前がどこにいるか知っているか?お前は今、ジャングルにいる。死んじまうぞ!」(You know where you are? You're in the jungle baby; you're gonna die!)

2曲目"It's So Easy"は、 ベースのダフ・マッケイガン(Duff McKagan)とウエスト・アーキン(West Arkeen)が共作した楽曲。
元はアコースティック・ソングだったが、それにアクセルがロック・アレンジを加え、現在の形となった。
作曲に参加したウエストは、バンド・メンバーではないもののベースのダフと仲が良く、ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)のために数曲を提供している。
ダフが作曲に参加しているだけあり、ギターはもちろんベースラインが特徴的な楽曲だ。

3曲目の"Nighttrain"は、スラッシュとリズムギターのイジー・ストラドリン(Izzy Stradlin)のアイデアが元となり完成した曲。
ギタリストの二人が作ったナンバーらしく、ギターのハモリから始まるクールなナンバー。
曲のタイトルは、当時彼らがよく飲んでいたナイト・トレイン(Night Train)と呼ばれるワインから起源となっている。
安くてアルコール度数が高く、バンド結成当初、メンバー間で人気のワインだったそうだ。
まさに「アメリカン・ロックンロール」なナンバーで今作の中でもおすすめの楽曲。
特にレスポール奏者は"Welcome to the Jungle"と並び必聴のナンバーだろう。

4曲目"Out ta Get Me"は、ギターソロから始まる力強いロック・ナンバー。
歌詞はボーカルのアクセルがインディアナ州に住んでいた時の体験を元に書かれている。
「怒り」を歌に昇華させた、ロック・ミュージシャンらしい楽曲だ。
スラッシュの歌うようなギターソロにも注目。

スラングでヘロインの意味を示す"Mr. Brownstone"は、5曲目に収録。
タイトルのとおり、ドラッグについて歌われた楽曲でスラッシュとイジーの実際の体験を元に書かれている。
ガンズ・アンド・ローゼズがゲフィン・レコードと契約し、始めた書いた楽曲でもあるようだ。
シャッフルビートが心地よい、ロックンロール・ナンバー。

6曲目"Paradise City"は、"Welcome to the Jungle"と並び非常に人気の高いロック・チューン。
アメリカ国内では、スポーツスタジアムでよくプレイされる楽曲でもある。
作曲が行われたのは、サンフランシスコでライブを終えた帰り道の車中。
アコースティック・ギターでスラッシュがイントロを演奏すると、ダフとイギーがこれに合わせバッキングを構成していく。
そこからアクセルとスラッシュがボーカルラインを乗せていき、完成させたナンバー。
曲のエンディングではアップテンポになり、中々に珍しいスラッシュの速弾きを聴くことが出来る。

今作では唯一ダークな雰囲気を持つ"My Michelle"は、7曲目に収録。
スラッシュはアルバムを通してギブソン(Gibson)のレスポールを使用しているが、この曲でのみ、1960年代のギブソン(Gibson)SGにてレコーディングを行っている。
タイトルにもなっているミシェル(Michelle)とは、スラッシュの友人であるミシェル・ヤング(Michelle Young)という実在する人物。
彼女はスラッシュに「いつか誰かがあたしについての歌を歌ってくれないかしら」と語っていたそうだ。


8曲目"Think About You"は、サイド・ギターのイジーが中心となり作曲した楽曲。
シングルカット等はされていないものの、ロック色が強くノリの良いナンバーだ。
バンドの最も初期段階の時点で作曲されており、"Welcome to the Jungle"、"Night Train"と共におすすめの曲。
今作では珍しく、作曲したイジー自身がリードギターを担当している。

"Welcome to the Jungle"と並び「ロックの名曲」として広く愛されている楽曲が、9曲目"Sweet Child o' Mine"
シングルとしてもリリースされており、ガンズ・アンド・ローゼズが初めて全米ビルボードチャートで1位を獲得した曲でもある。
特徴的なイントロはスラッシュが運指のエクササイズをしていた際、適当に考えたフレーズらしく、それを基にバンド全体で曲として完成させた。
1発撮りで完成させたというギターソロは「世界の素晴らしいギターソロ・ランキング100」(100 Greatest Guitar Solos)にて37位にランクインしている。

10曲"You're Crazy"は、疾走感のあるロックンロール・チューン。
ボーカル、楽器隊の演奏が素晴らしく、聞いていて非常に心地が良い楽曲だ。
サビではお得意のシャッフル・リズムに変化する小節もみせ、飽きさない曲構成に仕上がっている。

11曲目"Anything Goes"は、アクセルが以前所属していたハリウッド・ローズ(Hollywood Rose)がオリジナルのナンバー。
作曲のクレジットには、アメリカのロック・バンド"U.P.O."のギタリストであるクリス・ウェバー(Chris Weber)が記載されいる。
"Think About You"と同じくバンドの結成時に作曲されており、初期のミニ・アルバムに収録されリリースされる予定となっていた。
ガンズ・アンド・ローゼズらしい、ストレートなロックンロール・チューンだ。

アルバムのラストを飾るのは、6分超を誇る12曲目"Rocket Queen"
曲の中間からテンポが変わり、メロディーが強調されたキャッチーな楽曲へと変化するのが特徴だ。
メインのリフは、ギターのスラッシュとサイドギターのダフのアイデアが元となっている。
曲中に女性の喘ぎ声が聞こえるが、これはアクセルがボーカルのレコーディング・ブースで女性と性行為を行い、その声をミックスしたもの。
ある意味ロックミュージシャンらしい、かなりぶっ飛んだエピソードである。

Appetite for Destruction - Credit

アクセル・ローズ(Axl Rose)- リードボーカル、シンセサイザー(Track 6)、パーカッション
スラッシュ(Slash)- リードギター、リズムギター、アコースティックギター、スライドギター、トークボックス、バックボーカル
イジー・ストラドリン(Izzy Stradlin)- リズムギター、リードギター、バックボーカル、パーカッション
ダフ・マッケイガン(Duff McKagan)– ベース、バックボーカル
スティーヴン・アドラー(Steven Adler)- ドラム、パーカッション

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