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2017年、世界で最も愛されたアルバム『ディバイド』(÷ / Divide)- エド・シーラン(Ed Sheeran)

divide エドシーラン

皆さんは、エド・シーラン(Ed Sheeran)が2017年にリリースした3枚目のアルバム『ディバイド』(÷ / Divide)をご存じだろうか。

イギリス国内だけで672,000枚を一週間で売り上げ、アデル(Adele)の"25"、オアシス(Oasis)の"Be Here Now"につぐ歴代3番目の記録を樹立。
最終的に「2017年で世界一売れたアルバム」にも選ばれている。
現在までに740万枚以上を売り上げ、今なお多くの人に愛されている作品だ。

なぜ 『ディバイド』(÷ / Divide) はここまで愛される作品となったのだろうか。

エドのこれまでの作品と比較してみると、このサード・アルバムは良い意味で「ポップ寄りで多彩」な曲が多い印象を受ける。
1stアルバムの『プラス』(+ / Plus)では"Drunk"、"Lego House""This"など、"暖かい"曲が多く、2ndアルバム『マルティプライ』(x / Multiply)では、イギリスらしい"One""I'm a Mess""Don't"など、哀愁漂う曲が多かった。

対してこの『ディバイド』(÷ / Divide)は、お得意のラップ・ソングから始まり、疾走感溢れる2曲目、ちょっとした社会現象を巻き起こした4曲目、エドのルーツが感じられる6曲目など、多彩なアルバムに仕上がっている。
250曲以上から選ばれた収録曲は、これまでより更に「ポップ色」の強い曲達ばかりだ。

÷ / Multiply - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.EraserEd Sheeran, Johnny McDaid3:47
2.Castle on the HillSheeran, Benjamin Levin4:21
3.DiveSheeran, Levin, Julia Michaels3:58
4.Shape of YouSheeran, McDaid, Steve Mac, Kevin Briggs, Kandi Burruss, Tameka Cottle3:53
5.PerfectEd Sheeran4:23
6.Galway GirlSheeran, Foy Vance, McDaid, Amy Wadge, Eamon Murray, Niamh Dunne, Liam Bradley, Damian McKee, Sean Graham2:50
7.HappierSheeran, Levin, Ryan Tedder3:27
8.New ManSheeran, Levin, Jessie Ware, Ammar Malik3:09
9.Hearts Don't Break Around HereSheeran, McDaid4:08
10.What Do I Know?Sheeran, Vance, McDaid3:57
11.How Would You Feel (Paean)Ed Sheeran4:40
12.Supermarket FlowersSheeran, Levin, McDaid3:41
[Deluxe edition]
13.BarcelonaSheeran, Wadge, Vance, McDaid, Levin3:11
14.Bibia Be Ye YeSheeran, Nana Richard Abiona, Joseph Addison, Stephen Woode, Levin, Shaam Panch2:56
15.Nancy MulliganSheeran, Wadge, McDaid, Vance, Murray Cummings, Levin2:59
16.Save MyselfSheeran, Wadge, Timothy McKenzie4:07

Background & Reception

1曲目の"Eraser"はエド・シーラン、スノウ・パトロール(Snow Patrol)のボーカルであるジョニー・マクデッド(Johnny McDaid)の共作。 ジョニーは作曲家として有名でピンク(P!nk)やロビー・ウィリアムズ(Robbie Williams)にも曲を提供している。シャープなギターのアルペジオから始まる、マイナーのラップ調の曲だ。

"Castle on the Hill"は4曲目の"Shape of You"と並び、このアルバムを代表するナンバー。シングルとリリースされ、CDとダウンロード版も含め、600万以上も売り上げた。エドの故郷である、イギリスのフラムリンガムをテーマにした疾走感溢れる曲で「スノウ・パトロールの"Fallen Empires"というアルバムに影響を受けた」と語っている。

3曲目の"Dive"はアメリカの活躍しているミュージシャンのベニー・ブランコ(Benny Blanco)、ジュリア・マイケルズ(Julia Michaels)とエド・シーランの共作。初めのリフとメロディーをベニーとジュリアで作り上げ、そこからエドが加わり、完成した曲。ギターソロはあのエリック・クラプトン(Eric Clapton)がプレイしている。

4曲目の"Shape of You"は"間違いなく、このアルバムを代表する曲だ。シングルとして、ダウンロード版も併せると脅威の2,000万を超える売り上げを誇り、第60回グラミー賞も受賞している。日本でもよくラジオやTVで流れていたので、聞いたことがある方も多いのではないだろうか。
元はリアーナ(Rihanna)の為に書いた曲だったが、完成していくうち、「彼女には合わなそう」との理由で自分で歌うことにしたそうだ。
作曲はエド・シーラン、スティーブ・マック(Steve Mac)、ジョニー・マクデッド(Johnny McDaid)。スティーブがイントロのフレーズをキーボードで演奏し、そこにエドがギターを重ねていき完成した。アコースティックとダンスホール・ミュージックがミックスされたノリの良いナンバーで、リリース直後は多くのYouTuber達がこの曲をカバーし、投稿していた。

次の曲、"Perfect"は後に奥さんとなるチェリー・シーボーン(Cherry Seaborn)の為に書かれたナンバー。ロマンチックなバラードでイギリスでは、2017年のNo.1クリスマスソングにも選ばれた。
また、ビヨンセ(Beyoncé)とデュエットしたバージョンの"Perfect Duet"もリリースされており、こちらも人気がある。
6曲目がアイリッシュ・フォーク・バンドのベオガ(Beoga)とコラボした"Galway Girl"。アイルランド系の血を持つ、エドならではの「アイリッシュ色」の強いフォークソング。
リリース前、レコード会社から「フォーク・ソングはクールじゃない」との理由で、アルバムに収録することを反対されていましたが、エドの強い希望により追加されたナンバー。

7曲目の"Happier"はタイトルとは裏腹に少し悲しげなナンバー。エドが高校生のとき、以前付き合っていた彼女が新しい彼氏といるところを見て、「自分よりも凄くお似合いで、幸せそうだった」らしく、当時の気持ちを歌にした曲。
作曲はエド、 ワンリパブリック(Onerepublic)のライアン・テダー(Ryan Tedde)、 ベニー・ブランコ(Benny Blanco)の共作。ライアンはビヨンセ(Beyoncé)、マルーン5(Maroon 5)、アデル(Adele)など、超大物ミュージシャンに楽曲を提供しているミュージシャンでもある。

"New Man"は当初、エドはボーナストラックとして収録する予定だったが、レコード会社の勧めにより、メインアルバムに収録された曲。作曲はエド、アマル・マリク(Malik)、ジェシー・ウェア(Jessie Ware)、ベンジャミン・レヴィン(Benjamin Levin)がクレジットされている。
曲調は少しダークで前回のアルバム『マルティプライ』(x) らしい雰囲気もある。

"Hearts Don't Break Around Here"もジョニー・マクデッド(Johnny McDaid)との共作。エド自身もお気に入りの曲らしく、歌詞は学生時代に出会った女の子をことを歌っている。

10曲目の"What Do I Know?"はストレートなフォーク・ポップソング。ギターで作った曲らしい、弾き語りにも合うナンバー。元は「僕がどれぐらい早く曲を書けるか、レコード会社に見せる為、急いで作った」曲だった。
"How Would You Feel (Paean)"は中々面白いストーリーを持つ曲だ。

当時はまだ彼女だったチェリーさんがエドの元を訪れ、その帰りに空港に向かっていた彼女にエドがiPhoneに録音して送った曲だった。と言っても、エドはこの曲をすっかり忘れてらしい。
思い出したのはアルバムがほぼ完成した時。
奥さんとなったチェリーさんにエドが「アルバムの中でどの曲が好き?」と尋ねると、チェリーさんが「あなたは忘れてると思うけど、あなたが私にだけ送ってくれたこの曲が好き」と選んだのが"How Would You Feel (Paean)"だった。そこからレコーディングを完了させ、アルバムに追加することとなった。
ギターソロはプライベートでも中の良い、ギタリストのジョン・メイヤー(John Mayer)が演奏している。

アルバムの最後を飾る曲はエドの祖母のことを歌った"Supermarket Flower"
エドはアルバム作りを自宅で行っており、祖母はその近くの病院に入院していた。エドはよく彼女に会いにいっていたが、アルバムの制作途中、祖母はこの世を去る。そんな彼女への想いを書いた曲にしたのが"Supermarket Flower"。元はアルバムに収録するつもりはなかったが、この曲を聞いて感動した祖父がエドに「新しいアルバムに収録してほしい」と頼み、収録することになったようだ。

Divide - Credit

エド・シーラン(Ed Sheeran) – リードボーカル(all tracks)、ギター(1-3, 5-7, 9-11)、バックボーカル(1-6, 9, 10, 13-16)、マンドリン(2), ベース(3, 9, 10)、パーカッション(4, 10, 14)、チェロ(7), ドラム(9, 14)、ボディパーカッション(9)、ビートボックス(13)
ベニー・ブランコ(Benny Blanco)– プログラミング・キーボード(tracks 2, 3, 7, 8, 12-15)、バックボーカル(7, 15)
レオ・エイブラハムズ(Leo Abrahams)– ギター(track 1)
ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson)– ヴィオラ(tracks 5, 7)
トーマス・バートレット(Thomas Bartlett)– キーボード・ピアノ(tracks 2, 3, 7)
フェネラ・バートン(Fenella Barton)– バイオリン(tracks 5, 7)
レオン・ボッシュ(Leon Bosch)– ダブルベース(tracks 5, 7)
リアム・ブラッドレイ(Liam Bradle)– ピアノ(tracks 6, 7, 15)、バックボーカル(6, 7, 15)、パーカッション(15)
カール・ブラジル(Karl Brazil)– ドラム(track 11)
オイフェ・バーク(Aoife Burke)- チェロ(track 16)
アーチ-・カーター(Archie Carter) – バックボーカル(track 15)
ニック・カートレッジ(Nick Cartledge)– フルート・ピッコロ(tracks 5, 7)
メーガン・キャシディ(Meghan Cassidy)– ヴィオラ(tracks 5, 7)
エリック・クラプトン(Eric Clapton)– ギターソロ(track 3)
トラビス・コール(Travis Cole)– バックボーカル(track 4)
ニック・クーパー(Nick Cooper)– チェロ(tracks 5, 7), オーケストラリーダー(16)
ビリー・カミングス(Billy Cummings)- バックボーカル(track 15)
マーレイ・カミングス(Murray Cummings)- バックボーカル(track 15)
マンドヒラ・デ・サラム(Mandhira De Saram)– バイオリン(tracks 5, 7)
マシュー・デントン(Matthew Denton)– バイオリン(tracks 5, 7)
ジェームス・ディッケンソン(James Dickenson)– バイオリン(tracks 5, 7)
アリソン・ドッズ(Alison Dods)– バイオリン(tracks 5, 7)
ニーアム・ダン(Niamh Dunne)– フィドル・バックボーカル(tracks 6, 7, 15)、パーカッション(15)
マイク・エリゾンド(Mike Elizondo)– ドラムプログラミング、シンセサイザーベース、ピアノ・キーボード(track 6)
DJファイナル(DJ Final)– スクラッチ(track 8)
ブライアン・フィネガン(Brian Finnegan)– ティンホイッスル(tracks 6, 15)
ニコール・フィッシャー(Nicole Fischer)- ヴィオラ(track 16)
ゲオ・ガブリエル(Geo Gabriel)– バックボーカル(track 4)
オスカー・ゴールディング(Oscar Golding)– ベース(tracks 1, 11)
シェーン・グラハム(Sean Graham)– アコーディオン・バックボーカル(tracks 6, 7, 15)、パーカッション(15)
ローレンス・ラブ・グリード(Laurence Love Greed)– ピアノ(tracks 9, 11)
チャーリーズ・グリーン(Charys Green)– クラリネット(tracks 5, 7)
ピーター・グレグソン(Peter Gregson)– チェロ(track 11)、 コンダクター(5, 7)
イアン・ヘンドリクソン・スミス(Ian Hendrickson-Smith)- サックス(track 13)
ウェイン・ヘルナンデス(Wayne Hernandez)– バックボーカル(track 4)
ウィル・ヒックス(Will Hicks)– エレキギター、パーカッション、プログラミング(track 5)
マーティン・ジャクソン(Martyn Jackson)– バイオリン(tracks 5, 7)
キャサリン・ジェンキンソン(Katherine Jenkinson)– チェロ(tracks 5, 7)
マグナス・ジョンストン(Magnus Johnston)– バイオリン(tracks 5, 7)
マライヤ・ジョンストン(Marije Johnston)– バイオリン(tracks 5, 7)
サイモン・ヒューイット・ジョーンズ(Simon Hewitt Jones)– バイオリン(tracks 5, 7)
パトリック・キーナン(Patrick Kiernan)– バイオリン(tracks 5, 7)
ラビリンス(Labrinth)- ピアノ(track 16)
トレバー・ローレンス・ジュニア(Trevor Lawrence Jr.)– ドラム(track 6)
クリス・ローズ(Chris Laws)– ドラム(track 4)
ジェイ・ルイス(Jay Lewis)– ドラム(track 5)
ティム・ロー(Tim Lowe)– チェロ(tracks 5, 7)
スティーブ・マック(Steve Mac)– キーボード(track 4)
アマル・マリク(Ammar Malik)– バックボーカル(track 8)
カースティ・マンガン(Kirsty Mangan)– バイオリン(tracks 5, 7)
ジョン・メイヤー(John Mayer)– エレキギターソロ(track 11)
ジョー・マッキャン(Joe McCann)- バックボーカル(track 15)
ジョニー・マックデッド(Johnny McDaid)– ギター(track 1)、アコースティックギター(6, 15)、キーボード(1)、ピアノ(7, 12)、プログラミング(1)、バックボーカル(12, 15)
ダミアン・マッキー(Damian McKee)– アコーディオン・バックボーカル(tracks 6, 7, 15)、パーカッション(15)
リサーネ・メルキオール(Lisanne Melchoir) - ヴィオラ(track 16)
ジェレミー・モリス(Jeremy Morris)– バイオリン(tracks 5, 7)
イーモン・マレー(Eamon Murray)– バウロン・バックボーカル(tracks 6, 7, 15)、パーカッション(15)
フェイリミッド・ヌーナン(Feilimidh Nunan)- バイオリン(track 16)
ÒT - ギター(track 14)
ピノ・パラディーノ(Pino Palladino)– ベース(tracks 2, 3, 5, 8, 13)
フィリップ・ピーターソン(Phillip Peterson)– ストリングス(track 7)
ディアドール・レッディ(Dierdre Reddy)- バイオリン(track 16)
ジャン・レグルスキー(Jan Regulski)- バイオリン(tracks 5, 7)
レイチェル・ロバート(Rachel Roberts)- ヴィオラ(tracks 5, 7)
マイキー・ロウ(Mikey Rowe)- キーボード(track 1)
ジョー・ルーベル(Joe Rubel)- ドラムプログラミング(tracks 9, 10)、ギター(9, 11)、シンセサイザー(9)
ベン・ラッセル(Ben Russell)- ダブルベース(tracks 5, 7)
コトノ・サトー(Kotono Sato)- ヴィオラ(tracks 5, 7)
ニコ・セガール(Nico Segal)- トランペット(track 13)
マシュー・シーラン(Matthew Sheeran)- ストリングスアレンジメント(tracks 5, 7, 16)
ヒラリー・スキューズ(Hilary Skewes)- コーディネーション(tracks 5, 7)
フランシス・アンド・ザ・ライツ(Francis Farewell Starlite)- バックボーカル(track 8)
アウラ・ストーン(Aura Stone)- ダブルベース(track 16)
ユエ・タン(Yue Tang)- チェロ(track 16)
レオ・テイラー(Leo Taylor)- ドラム(tracks 2, 3)
ライアン・テダー(Ryan Tedder)- ピアノ(track 7)
ジョン・ティリー(John Tilley)- ピアノ・ハモンドオルガン(track 5)
フォイ・バンズ(Foy Vance)- バックボーカル(tracks 6, 15)
アニータ・ベドレス(Anita Vedres)- バイオリン(track 16)
エイミー・ワッジ(Amy Wadge)- バックボーカル(track 15)
ジェシー・ウェア(Jessie Ware)- バックボーカル(tracks 3, 7, 8)
デビー・ウィッドゥップ(Deborah Widdup)– バイオリン(tracks 5, 7)

Conclusion

エド・シーランのアルバムはどれも素晴らしいが、一番聞きやすいのはこの 「ディバイド」(÷ / Divide だろう。様々なタイプの曲が収録されている為、自分の好きな曲から聞き始めるのも良いと思う。クレジットされているミュージシャンも大物ばかりで、曲のクオリティーはどれもハイレベルだ。
今後も活躍が期待できるエド・シーランの3rdアルバム「ディバイド」(÷ / Divide
是非、あなたの耳で確かめてみてほしい。

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