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パット・メセニーも参加した、暖かみのあるブラジリアン・ミュージックの名盤『トニーニョ・オルタ』(Toninho Horta)

『トニーニョ・オルタ』(Toninho Horta)

『トニーニョ・オルタ』(Toninho Horta)とは、ブラジル出身のトニーニョ・オルタが1980年にリリースしたセカンド・アルバムである。

1948年12月2日に生まれたトニーニョは、幼少期から母、祖父の手ほどきでギターを始め、10代の頃から作曲を開始。ミルトン・ナシメントのアルバムに参加したことで徐々に注目を集め、活動の範囲をアメリカにまで広げる。
その後、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターらとも共演を果たしつつ、MPBに分類されるアーティスト達と定期的に作品を発表。
1979年には念願のファースト・ソロ・アルバム『テーハ・ドス・バッサロス』(Terra Dos Passaros)をリリースし、高い評価を獲得した。

そしてその翌年にリリースしたのが、自身の名を冠したセカンド・アルバムが『トニーニョ・オルタ』(Toninho Horta)である。
今作の特徴は「柔らかい、暖かみのある楽曲が多くならんでいる」ことだろう。
曲の割合はボーカル曲が6、インスト曲が4とほぼ半々で並んでおり、編曲家でもある彼らしい内容だ。

Toninho Horta - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Aqui, Oh!Fernando Brant, Toninho Horta4:54
2.SaguinToninho Horta3:45
3.Vôo Dos UrubusToninho Horta3:44
4.Caso AntigoRonaldo Bastos, Fernando Brant, Toninho Horta2:50
5.Prato FeitoRonaldo Bastos, Toninho Horta6:34
6.Era Só Começo Nosso FimMurilo Antunes, Iuri Popoff4:55
7.Minha CasaToninho Horta4:47
8.Bons AmigosRonaldo Bastos, Toninho Horta3:30
9.VentoToninho Horta3:00
10.Manuel O AudazFernando Brant, Toninho Horta5:57

Background & Reception

1曲目には、トニーニョが有名となるきっかけをつくった曲でもある“Aqui, Oh!”を収録。
パーカッション、ギターなどの生楽器が生み出すサンバのリズムがたまらない、軽快でノリのよい曲だ。アルバムの中で最も聴きやすいサンバの名曲中の名曲。

2曲目”Saguin”は、トニーニョが作曲に加え、編曲、指揮を担当したバラード曲。オーケストラのサウンドが楽曲に壮大感を与えており、暖かく包み込むようなナンバーだ。ちなみにピアノのサウンドはトニーニョ本人が演奏したものである。

トニーニョのギタリストとしての腕前が発揮されているのが、3曲目”Vôo Dos Urubus”
アップテンポなビートの上で交わるギターのサウンド、そしてニヴァルド・オルネラス(Nivaldo Ornelas)のサックスがクールな楽曲だ。ギターの音作りに関してはかなりジャズ・ギターのものに近く、これは友人であるパット・メセニーの影響を受けているのであろうか。

4曲目”Caso Antigo”は、哀愁漂うマイナー調の楽曲。こういった曲ひとつとっても、邦楽とも洋楽とも違う独特のメロディーとコード進行が使われている点が非常に興味深い。曲間のソロは、ブラジル出身のトロンボーン奏者として有名なハウル・ヂ・ソウザ(Raul De Souza)によるものだ。

5曲目には、暖かく軽快なインスト曲”Prato Feito”を収録。作曲はトニーニョによるものだが、全編を通してほぼパット・メセニー(Pat Metheny)によるギター・ソロである。この曲だけでもこのアルバムを買う価値があるといってよいほど、素晴らしいソロを演奏しており、メセニー・ファンであれば間違いなく必聴の一曲だろう。

続く“Era Só Começo Nosso Fim”もインスト・ナンバーだが、こちらはマイナー調の少し寂しげな楽曲。こちらのギターソロはトニーニョが担当しており、ジョージ・ベンソンを思わせるフレーズを聴くことが出来る。美しいフルートのサウンドは、妹であるレナ・オルタによるものだ。

曲の展開が物語のように変化していく楽曲が“Minha Casa”。トニーニョの編曲家としての実力が遺憾なく発揮されており、ギター、ベース、オーケストレーションの絡みも素晴らしい。

“Minha Casa”は、作曲をトニーニョ、作詞をプロデューサーのホナルド・バストスが行った共作の楽曲である。今作らしい暖かみのある楽曲で癒されるナンバーだ。滑らかなソプラノ・サックスのソロにも注目してほしい。

9曲目には、トニーニョ・オルタがソロ・ギターで演奏している”Vento”を収録。ボーカルとギターをここまで高いレベルで演奏できるのは、世界でも彼を含めて数えるほどしかいないだろう。ここでもジョージ・ベンソンを思わせるボーカルとギターのユニゾンを聴くことができる。

ラストの楽曲は自身の息子のことを歌った”Manuel O Audaz”。弾き語りに近いスタイルで楽曲がスタートし、後半ではオーケストラのサウンドが加わり豪華さを増していく。優しさのあるメロディー、ギターソロから息子への愛情が存分に伝わってくる暖かい楽曲だ。

Toninho Horta - Credit

トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)- ギター、ボーカル、アレンジ、ピアノ、オーケストレーション
ヴァグネル・チゾ(Wagner Tiso)- シンセサイザー
ジャミル・ヨアネス(Jamil Joanes)- ベース
パウロ・ブラガ(Paulo Braga)- ドラム
ホベルト・シルヴァ(Roberto Silva)- パーカッション
ジルソン・バルボーザ(Gilson Barbosa)- オーボエ・ダモーレ
ニヴァルド・オルネラス(Nivaldo Ornelas)- サックス(Track 3)
ハウル・ヂ・ソウザ(Raul De Souza)- バストロンボーン(Track 4)
パット・メセニー(Pat Metheny)- ギター(Track 5)
レナ・オルタ (Lena Horta)- フルート(Track 6)

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