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【ゲーム音楽 meets ビッグバンド】新たな記録を打ち立てた作品『カップヘッド・サウンドトラック』(Cuphead Soundtrack)- クリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)

『カップヘッド・サウンドトラック』(Cuphead Soundtrack)- クリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)

『カップヘッド』(Cuphead)は2017年にリリースされ、現在までに600万本を売り上げている人気の2Dアクションゲーム。
制作者はカナダ人兄弟のチャド&ジャレッド・モルデンハウワーで、彼らは幼い頃からカートゥーンの大ファンだったそうだ。

『カップヘッド』(Cuphead)は1930年代の「古き良き」アニメーションをリスペクトして制作されており、全編を通して手書きのセル画で作成。この枚数は45,000枚を超えており、「ゲーム制作に使われた最も多い手描きセル画の枚数」として、ギネス世界記録にも認定されている。

ゲームの難易度やキャラクターなど、様々な部分に拘りが見られる今作だが、そのひとつに「音楽」がある。
『カップヘッド』(Cuphead)で使用されているBGMは、1930年代に大流行したビッグバンド、ラグタイムが中心となっているのだ。
しかも音源は打ち込みではなく、全てプロが行った生演奏によるもの。
この音楽は、ゲームが発売された直後から多くの関心を集め、同年に発売されたサウンドトラックCDはすぐに売り切れ状態。その後も再販を繰り返し、2019年にはゲームのサントラとして初めてビルボードのジャズ・チャートで1位を記録するという快挙を成し遂げた。

作曲を行ったのは、カナダ出身の作曲家であるクリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)
クリストファーはトロント周辺にてジャズの楽曲や編曲の提供を行っており、2010年からはカナダ国立バレエ団のパーカッショニストとしても活動している。
2013年には研究プロジェクトの一環としてトロントで行われた『マイバーチャルドリーム』(My Virtual Dream)に作曲家として参加。
2017年の『カップヘッド』(Cuphead)にて、自身初のゲーム用の音楽を作曲することとなった。
クリストファーが生み出した楽曲達は「古き良き時代の音楽」を忠実に再現しており、聞き心地の良いナンバーが揃っている。ジャズが基調とされているが、ゲーム音楽らしいポップさも含まれており、万人受けする音楽とも言えるだろう。
本サウンドトラックは全56曲が収録されているため、全曲を紹介することは出来ないが、その中から特におすすめの楽曲を紹介しようと思う。

まずは、エリア1の序盤ボスステージで流れる"Botanic Panic"
緊張感のあるメロディーと激しめのドラミングが特徴でまさに"ボス戦で流れる音楽"といった感じだ。
ヴィブラフォンのリズミカルなソロも心地が良い。

"Threatenin' Zeppelin"はヴィブラフォンに加え、クラリネットがフューチャーされた楽曲。
明るく軽快なクラリネットのサウンドは、カップヘッドの雰囲気にしっかりとマッチしており、ゲームプレイ画面が思い出されるほどだ。
魔女、ヒルダ・バーグ(Hilda Berg)戦で使用されたナンバー。

キャグニー・カーネーションとの戦闘ステージで流れるラテン・チューンが、「花の憤激」を意味する"Floral Fury"
パーカッショニストであるクリストファーが作曲しただけあり、パーカッションがフューチャーされた珍しい曲でもある。
様々な打楽器が使われており、それらが楽曲に躍動感を与え、思わずサンバを踊りだしたくなるようなナンバーだ。

"Clip Joint Calamity"では、リズミカルなドラムの上を様々な楽器の音色が飛んで跳ねているような楽曲である。
クラリネット、トランペットなどのソロもメロディアスで聴きごたえ抜群。転調後のサックス・ソロも非常にクールだ。
二匹のカエル、リビー&クロークス(Ribby and Croaks)との戦闘でBGMとして使用されている。

バリトンサックスのムーディーなサウンドから始まる楽曲が"Sugarland Shimmy"
お菓子の世界のボス、レディ・ボンボン(Baroness Von Bon Bon)との戦闘で使用されているナンバー。
こちらも様々な楽器が元気に飛び回っているような楽曲で、曲間のクラリネットとヴィブラフォンのユニゾンが心地よい。
また、ジョン・ジョンソン(John Johnson)のクラリネットソロも適度な緊張感があり、ボス戦らしさを演出している。

"Carnival Kerfuffle"は、ジェットコースターのレール上で戦う道化師ベッピ(Beppi The Clown)戦で使用されているナンバー。
イントロのピアノからスウィング感抜群でサックスのメロディーラインも非常にムーディーだ。
タイトルどおり、カーニバルな楽曲だと言えるだろう。
ちなみにホーンセクションのバッキングでは、ビッグバンドの名曲"Sing, Sing, Sing"のオマージュ的なラインを聴くことができる。

舞台女優サリー(Sally Stageplay)戦のBGM"Dramatic Fanatic"では、舞台が戦場となっているだけあってタップダンスのサウンドを使用。
ミュージカル風な仕上げになっているパートがあり、他のナンバーより比較的長い演奏時間にもかかわらず、飽きさせない曲構成に仕上がっている。

 "Pyramid Peril"は、作曲者であるクリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)もお気に入りのラテン・ナンバー。
本人も語っているとおり、デューク・エリントン(Duke Ellington)からの影響が感じられる曲だ。メロディーは違うものの、デュークの名曲"Caravan"と似た雰囲気があると思うのは、私だけだろうか。

個人的に最も気に入っているナンバーが、ラスボスであるデビル(The Devil)戦で流れる"One Hell of a Time"
疾走感があり、まさにラスボス戦に相応しい楽曲だ。ホーンセクションの掛け合いもキレがあり、非常にクール。
ヴィブラフォン、サックスのソロも例にもれず素晴らしく、後半になるにつれ、盛り上がりを見せる曲構成も高揚せずにはいられない。
ラストにはメジャー・キーに転調し、明るい雰囲気で終わる感じもアニメーションらしい演出だと思う。

『カップヘッド』(Cuphead)の音楽は、本ゲームをプレイしたことが無くとも、ビッグバンドやラグタイムを好む人であれば間違いなく楽しめる。
またそれ以外でも、吹奏楽や1930年代の音楽を愛する人にもお勧めできるアルバムだ。

Cuphead Soundtrack - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Don't Deal with the DevilKristofer Maddigan0:42
2.Don't Deal with the Devil (Instrumental)Kristofer Maddigan1:04
3.IntroductionKristofer Maddigan3:31
4.TutorialKristofer Maddigan1:40
5.Elder KettleKristofer Maddigan5:14
6.Inkwell Isle OneKristofer Maddigan3:15
7.Botanic PanicKristofer Maddigan4:01
8.Die HouseKristofer Maddigan1:36
9.Elder Kettle (Piano)Kristofer Maddigan5:11
10.Threatenin' ZeppelinKristofer Maddigan3:28
11.Treetop TroubleKristofer Maddigan2:54
12.Ruse of an OozeKristofer Maddigan4:25
13.Floral FuryKristofer Maddigan3:45
14.Inkwell Isle One (Piano)Kristofer Maddigan3:07
15.Clip Joint CalamityKristofer Maddigan3:54
16.Forest FolliesKristofer Maddigan2:47
17.Inkwell Isle TwoKristofer Maddigan2:49
18.Sugarland ShimmyKristofer Maddigan3:41
19.Aviary ActionKristofer Maddigan4:03
20.Inkwell Isle Two (Piano)Kristofer Maddigan2:49
21.Carnival KerfuffleKristofer Maddigan4:01
22.Fiery FrolicKristofer Maddigan3:37
23.Funfair FeverKristofer Maddigan2:19
24.The MausoleumKristofer Maddigan1:24
25.Legendary GhostKristofer Maddigan1:45
26.Pyramid PerilKristofer Maddigan5:40
27.Victory TuneKristofer Maddigan1:40
28.Hurry UpKristofer Maddigan0:35
29.A Quick BreakKristofer Maddigan1:11
30.Coin-Op BopKristofer Maddigan4:55
31.High ScoreKristofer Maddigan1:05
32.Funhouse FrazzleKristofer Maddigan3:09
33.Inkwell Isle ThreeKristofer Maddigan2:54
34.Honeycomb HeraldKristofer Maddigan4:38
35.Porkrind's ShopKristofer Maddigan2:16
36.Shootin' 'n' Lootin'Kristofer Maddigan3:47
37.Dramatic FanaticKristofer Maddigan4:57
38.Perilous PiersKristofer Maddigan2:09
39.Murine CorpsKristofer Maddigan4:09
40.Junkyard JiveKristofer Maddigan4:24
41.Rugged RidgeKristofer Maddigan3:20
42.High Seas Hi-JinxKristofer Maddigan3:22
43.Railroad WrathKristofer Maddigan4:15
44.Inkwell Isle Three (Piano)Kristofer Maddigan3:22
45.The AirshipKristofer Maddigan5:07
46.All Bets Are OffKristofer Maddigan1:36
47.Inkwell HellKristofer Maddigan2:46
48.The King's CourtKristofer Maddigan3:51
49.Inkwell Hell (Piano)Kristofer Maddigan2:43
50.Chief Evil OfficerKristofer Maddigan0:41
51.Admission to PerditionKristofer Maddigan3:47
52.Ominous InterludeKristofer Maddigan0:10
53.One Hell of a TimeKristofer Maddigan3:02
54.The EndKristofer Maddigan1:21
55.Winner Takes AllKristofer Maddigan2:14
56.Closing CreditsKristofer Maddigan7:10

Cuphead Soundtrack - Credit

【リード楽器】
バーン・ドージ(Vern Dorge)- クラリネット、アルトサックス
アンディ・バランタイン(Andy Ballantyne)- アルトサックス、クラリネット
アレックス・ディーン(Alex Dean)- テナーサックス、テナーサックスソロ、クラリネット
ボブ・レオナルド(Bob Leonard)- バリトンサックス、クラリネット
ジョン・ジョンソン(John Johnson)- アルトサックスソロ、クラリネットソロ
マイク・マーリー(Mike Murley)- テナーサックスソロ

【管楽器】
ジェーソン・ローグ(Jason Logue)- トランペット
デイブ・ダンロップ(Dave Dunlop)- トランペット
ケビン・ターコット(Kevin Turcotte)- トランペット
スティーブ・マックデイド(Steve McDade)- トランペット、トランペットソロ、フリューゲルホルン
アラステア・ケイ(Alastair Kay)- トロンボーン、トロンボーンソロ
クリスチャン・オーバートーン(Christian Overton)- トロンボーン
ピーター・ヒーセン(Peter Hysen)- バストロンボーン
スコット・アーバイン(Scott Irvine)- チューバ

【リズムセクション】
ロビ・ボトス(Robi Botos)- ピアノ
ジェフ・マクラウド(Jeff McLeod)- ピアノ、ピアノソロ
ロブ・ピルチ(Rob Piltch)- ギター、バンジョー
ポール・ノヴォトニー(Paul Novotny)- ベース
ジム・ビビアン(Jim Vivian)- ベース
ニール・スウェインソン(Neil Swainso)- ベース
テッド・ウォーレン(Ted Warren)- ドラム
クリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)- ヴィブラフォン、パーカッション
マーク・ドゥガン(Mark Duggan)- ヴィブラフォンソロ
アラン・ヘザーリントン(Alan Hetherington)- ブラジリアンパーカッション

Ragtime Band

【リード楽器】
ローラ・チェンバーズ(Laura Chambers)- ピッコロ、フルート、バスフルート
サシャ・ボーイチョーク(Sasha Boychouk)- クラリネット

【管楽器】
ロバート・ヴェナブルズ(Robert Venables)- コルネット
トム・リチャーズ(Tom Richards)- トロンボーン
スコット・アーバイン(Scott Irvine)- チューバ

【弦楽器】
アーロン・シュウェーベル(Aaron Schwebel)- バイオリン
エミリー・ハウ(Emily Hau)- バイオリン
モイラ・バーク(Moira Burke)- ヴィオラ
リザ・マクレラン(Liza McLellan)- チェロ

【リズムセクション】
エリザベス・アッカー(Elizabeth Acker)- ピアノ
ジェフ・マクラウド(Jeff McLeod)- ピアノ
ロブ・ピルチ(Rob Piltch)- ギター、バンジョー
ポール・ノヴォトニー(Paul Novotny)- アップライトベース
クリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)- ドラム、シロフォン

Ragtime - Solo Piano/Trio

ローラ・チェンバーズ(Laura Chambers)- ピッコロ
ジョナサン・ダイク(Jonathan Dyck)- ピアノ
クリスティーナ・ファイユ(Christina Faye)- ピアノ
リズ・アッカー(Liz Acker)- ピアノ
クリストファー・マディガン(Kristofer Maddigan)- ピアノ、パーカッション

アリソン・トファン(Allison Toffan)- タップダンサー
アラナ・ブリッジウォーター(Alana Bridgewater)- ボーカル

【バーバーショップ音楽】
トム・ミフリン(Tom Mifflin)- ボーカル
マイケル・ブラック(Michael Black)- ボーカル
マイケル・ラ・スカーラ(Michael La Scala)- ボーカル
ジョエル・ラ・スカーラ(Joel La Scala)- ボーカル

【Additional】
ジョナサン・ダイク(Jonathan Dyck)- オルガン

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