Reviews

賛否両論を巻き起こした問題作『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)- ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)

"Cantaloupe Island"、"Watermelon Man"、"Maiden Voyage"などの名曲を生み出し、「ジャズ/フュージョン界で最も優れたピアニストの一人」として数えられているハービー・ハンコック(Herbie Hancock)
これまでに40枚以上の作品を発表してしており、グラミー賞も10回以上受賞しているレジェント的存在のピアニストだ。

今回紹介する『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)は、ハービーが29歳になる1969年にリリースされた8thアルバム。今作はハービーファンの間でも評価が分かれる、ある意味有名な作品である。

当時、ハービー・ハンコックはHey, Hey, Hey, It's Fat Albertと呼ばれるテレビアニメの音楽を担当していた。
その楽曲をアレンジし、収録したのが『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)
つまり、元々はテレビアニメのサントラとして作られていた楽曲達なのだ。
ハービーは今作の1年前に『ザ・プリズナー』(The Prisoner)、2年前に『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(Speak Like a Child)をリリースしている。どちらも紛れもない名盤であり、ハービーを代表するアルバムだ。
そしてこの2作と本作『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)を比較すると、全く別物であることが分かると思う。

『ザ・プリズナー』(The Prisoner)、『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(Speak Like a Child)は芸術性の高い、ハービーが自分自身を表現するための作品。
対して『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)は敢えて大衆向けに作った、まさしくテレビ番組用のポップな音楽に仕上がっているのだ。
ハービーのスリリングなソロや掛け合い、美しい旋律は無いものの、耳当たりの良いBGMに最適な音楽と言えるだろう。

そして今作に良曲が無いかと言われれば、そんなことはない。

クラブでよくネタとして使用される1曲目"Wiggle-Waggle"や、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)がカバーした"Tell Me a Bedtime Story"も知名度の高い楽曲。
イージーリスニング的な2曲目"Fat Mama"や、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)のサックスが堪能できる7曲目"Lil' Brother"も聴き心地の良いナンバーだ。

バックを支えるメンバーもバスター・ウィリアムス(Buster Williams)、アルバート・ヒース(Albert "Tootie" Heath)など豪華な面々が揃っている。
また"Wiggle-Waggle""Lil' Brother"にはあのジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius)が「最も影響を受けたベーシスト」として挙げているジェリー・ジェモット(Jerry Jemmott)も参加。ベーシストは必聴のナンバーと言えるだろう。

『ファット・アルバート・ロトゥンダ』(Fat Albert Rotunda)は、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)を知るのに適したアルバムとは言えないが、一般の方でも広く楽しめる一枚。
ハービーファンでない方にもおすすめできるアルバムだ。

Fat Albert Rotunda - Track Listing

No.TitleWriterlength
1.Wiggle-WaggleHerbie Hancock5:51
2.Fat MamaHerbie Hancock3:49
3.Tell Me a Bedtime StoryHerbie Hancock5:01
4.Oh! Oh! Here He ComesHerbie Hancock4:08
5.JessicaHerbie Hancock4:13
6.Fat Albert RotundaHerbie Hancock6:29
7.Lil' BrotherHerbie Hancock4:26

Fat Albert Rotunda - Credit

ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)- ピアノ、エレキピアノ
ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)- テナーサックス、アルトフルート
ガーネット・ブラウン(Garnett Brown)- トロンボーン
ジョニー・コールズ(Johnny Coles)- トランペット、フリューゲルホルン
バスター・ウィリアムス(Buster Williams)- エレキベース、アコギベース
アルバート・ヒース(Albert "Tootie" Heath)- ドラム
ジョージ・ディヴンズ(George Devens) - パーカッション
ジョー・ニューマン(Joe Newman)- トランペット(Tracks 1, 7)
アーニー・ロイヤル(Ernie Royal)- トランペット(Tracks 1, 7)
ジョー・ファレル(Joe Farrell)- テナーサックス、アルトサックス(Tracks 1, 7)
アーサー・クラーク(Arthur Clarke)- バリトンサックス(Tracks 1, 7)
ベニー・パウエル(Benny Powell)- トロンボーン(Tracks 1, 7)
エリック・ゲイル(Eric Gale)- ギター(Tracks 1, 7)
ビリー・バトラー(Billy Butler)- ギター(Tracks 1, 7)
ジェリー・ジェモット(Jerry Jemmott)- ベース(Tracks 1, 7)
バーナード・パーディ(Bernard Purdie) - ドラム(Tracks 1, 7)

-Reviews
-, , , ,

© 2024 Tororopizza Music Magazine