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グラミー賞を受賞した、ジャジーなサウンドトラック・アルバム『ラ・ラ・ランド サウンドトラック』(La La Land Soundtrack)- ジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)

『ラ・ラ・ランド - オリジナル・サウンドトラック』(La La Land: Original Motion Picture Soundtrack)- ジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)

『ラ・ラ・ランド』(La La Land)は、2016年に公開されたアメリカ合衆国のミュージカル映画である。
タイトルが示すとおり、LAが舞台となっているこの作品は、450億以上の興行収入を突破し、英国アカデミー賞にて6部門を受賞。
第89回アカデミー賞では、1997年の映画『タイタニック』(Titanic)に並ぶ14部門にノミネートされ、そのうちの6部門を受賞した名作である。

ストーリー、キャストが素晴らしいのはもちろんだが、『ラ・ラ・ランド』(La La Land)が世界で絶賛された理由のひとつとして、「音楽の良さ」がある。
女優の卵であるミア、ジャズピアニストのセブを中心に物語が進んでいく今作は、「ミュージカル」「ジャズ」の要素を含む音楽を多く使用。
同年に発売された『ラ・ラ・ランド - オリジナル・サウンドトラック』(La La Land: Original Motion Picture Soundtrack)は、アメリカのビルボードチャートで2位、全英アルバムチャートでは1位を獲得している。
これに加え、8か国以上の音楽チャートでも1位にランクイン。ここ日本でも人気が高く、売り上げ枚数は10万を突破し、ゴールド・ディスクにも選ばれているほどだ。
また、第89回グラミー賞では「最優秀編集サウンドトラック・アルバム賞」「映画・テレビサウンドトラック部門」2部門を受賞する快挙を成し遂げた。

音楽を担当したのは、監督デイミアン・チャゼル(Damien Chazelle)のハーバード大学時代の同級生、ジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)。この二人は2009年の『Guy and Madeline on a Park Bench』、2014年『セッション』(Whiplash)でもタッグを組んでおり、今作が3回目の共演となっている。
ジャスティンは今作により、ゴールデングローブ賞である「作曲賞」「主題歌賞」に加え、アカデミー賞「作曲賞」「歌曲賞」を受賞することとなった。

La La Land Soundtrack - Track Listing

No.TitlePerformerWriterLength
1.Another Day of SunLa La Land CastJustin Hurwitz3:48
2.Someone in the CrowdEmma Stone, Callie Hernandez, Sonoya Mizuno and Jessica RotheJustin Hurwitz4:20
3.Mia & Sebastian's ThemeJustin HurwitzJustin Hurwitz1:38
4.A Lovely NightRyan Gosling, Emma StoneJustin Hurwitz3:57
5.Herman's HabitJustin HurwitzJustin Hurwitz1:52
6.City of StarsRyan GoslingJustin Hurwitz1:51
7.PlanetariumJustin HurwitzJustin Hurwitz4:17
8.Summer Montage / MadelineJustin HurwitzJustin Hurwitz2:05
9.City of StarsRyan Gosling, Emma StoneJustin Hurwitz2:30
10.Start a FireJohn LegendJustin Hurwitz3:12
11.Engagement PartyJustin HurwitzJustin Hurwitz1:27
12.Audition (The Fools Who Dream)Emma StoneJustin Hurwitz3:48
13.EpilogueJustin HurwitzJustin Hurwitz7:39
14.The EndJustin HurwitzJustin Hurwitz0:46
15.City of Stars (Humming)Justin HurwitzJustin Hurwitz2:43

Background & Reception

1曲目を飾るのは、映画のオープニング・ナンバーでもある”Another Day of Sun”
この楽曲について、作曲者ジャスティン・ハーウィッツ、作詞家ジャスティン・ポール(Justin Paul)は以下のように語っている。

ジャスティン・ハーウィッツ
「この楽曲は楽観的な歌でもあるが、それと同時に実現することの出来ない夢を歌った曲でもある。」

ジャスティン・ポール
「夢を追い、ベッドに入って明日が来れば、素晴らしい一日が始まる。それから一息ついて、もう一息つくころには、自身が惨めに失敗することを認めさせないだろう。起きた時の気分に失敗は似合わない。眩しくて輝く日であるべきなんだ。」

楽曲のキーはE♭でテンポは126bpm、コード進行はA♭-B♭-Cm-Gmを中心に進行していく。キーはメジャーコードだが、マイナーコードも効果的に使用していることが特徴。これにより、作曲者のジャスティン曰く「見た目よりも、ビタースウィートな曲」に仕上がっている。
サビではかなりの音が重ねられているが、録音には95人構成のオーケストラに加え、40人の合唱団も参加したようだ。
元々のタイトルは”Traffic”となる予定だったが、後に現在の”Another Day of Sun”に変更することとなった。
2018年のグラミー賞では「最優秀ヴォーカル入りインストゥルメンタル編曲賞」にノミネートされている。

2曲目に並んだのは、こちらもアップテンポなミュージカル曲”Someone in the Crowd”
ボーカルを担当しているのは、エマ・ストーン(Emma Stone)、そしてルームメイト役のキャリー・ヘルナンデス(Callie Hernandez)、ジェシカ・ローズ(Jessica Rothe)、ソノヤ・ミズノ(Sonoya Mizuno)の計4名。
歌詞の内容は、売れない女優を演じる彼女達が運命の人、または運命の場所を見つけることを願うといったもの。
ミュージカル・ナンバーらしく、曲がストーリー仕立てになっており、サビでは”Another Day of Sun”に勝るとも劣らない盛り上がりを見せている。

3曲目"Mia & Sebastian's Theme"は、これまでの2曲と打って変わってピアノ・オンリーの楽曲。寂しげなアルペジオから始まるナンバーだが、「フリージャズ」が題材となっているだけあり、曲の後半では束縛のない自由な演奏を見せている。
ちなみに劇中では、主人公役のライアン・ゴズリング(Ryan Thomas Gosling)が、レストランでこの曲を演奏。しかし、これは予定されていた曲ではなかったため、このレストランを解雇されることとなった。

4曲目には、エマ・ストーンとライアン・ゴズリングが歌うデュエット曲"A Lovely Night"
これまでの曲はどことなくジャズの要素を含んでいたが、このナンバーは踊り出したくなるザ・ミュージカル・ソングといった感じだ。(とは言っても、ジャズスタンダードの多くはミュージカル曲が元となっているのだが…)
この楽曲が流れるシーンの撮影は、ハリウッド北東の丘に広がる巨大な市営公園「グリフィス・パーク」で行われた。

5曲目"Herman's Habit"は、ライアンがエマに「本物のジャズを教える」とジャズ・クラブへ彼女を連れて行った際にジャズメンが演奏していた曲。実際のジャズ・スタンダードではないものの、楽曲は「ジャズ」そのもの。
スウィンギーなリズム隊、スリリングなホーンセクションのソロなど、ジャズの魅力が存分に詰まったインスト・ナンバーだ。

『ラ・ラ・ランド』(La La Land)で最も印象的な曲とも言えるのが、6曲目に並んだ"City of Stars"だ。ピアノの弾き語りで哀愁溢れる、少し寂しげなメロディーが特徴。
作曲者のジャスティン自身、この楽曲には思い入れがあるようで、以下のコメントを残している。

「この曲は、僕の感情的な部分から生まれたトーンで構成された曲なんだ。この曲のメロディーは、希望と憂鬱を同時に持っていると思う。メジャーとマイナーを行き来する楽曲なんだけど、これは僕が考える『この曲のあるべき姿』。物語で映し出される瞬間は、人生やロサンゼルスで目にする”それ”よりも素晴らしい。それを考慮して、メロディーをシャープで美しいものにしようと試みた。"City of Stars"はジャズの要素を持っているだろうね。それはセバスチャン(劇中のジャズ・ピアニスト)が演奏しているからなんだ。」

7曲目“Planetarium”は、優雅なオーケストラのサウンドが強調されたワルツ・ナンバー。サビの後半では、3曲目に収録されている"Mia & Sebastian's Theme"のテーマを聴くことが出来る。
劇中では、グリフィス天文台に忍び込んだ二人が躍る際に起用された。

8曲目には、ジャズのテイストが存分に詰め込まれたミュージカル曲”Summer Montage / Madeline”を選曲。
スウィング感に溢れ、ジャズの中でも特にビッグバンドの要素を強く感じる楽曲だ。
短いソロ回しではあるが、トランペットとトロンボーンの掛け合いにも注目。

6曲目"City of Stars"をアレンジし、デュエット曲にしたのが9曲目"City of Stars"
インスト・バージョンとは異なった曲構成になっており、美しく、そしてどことなく悲しいメロディーラインが特徴。劇中でも、この辺りから二人の心が少しずつ離れていくシーンでもあり、彼らの心情を上手く表現した楽曲と言えるだろう。

10曲目に並んだ”Start a Fire”は、セブ役のライアンが友人役のジョン・レジェンド(John Legend)に誘われ加入したバンドで演奏した曲。ボーカルは実際にジョン・レジェンドが担当している豪華なナンバーでもある。
劇中では「売れる音楽」を意識して作曲されているため、意図的に”ダサい”曲に仕上げているのが特徴。
ちなみにこの仮想のバンド名は「メッセンジャーズ」だが、これはジャズ界の巨匠アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ(Art Blakey & Jazz Messengers)から取ったものと思われる。

11曲目"Engagement Party"は、ピアノ・ソロによる寂しげな楽曲。
メロディーは"Someone in the Crowd"のサビ部分と同じラインを使用している。
劇中ではセブが姉の婚約パーティーで演奏していた。

エマ・ストーンのボーカルがフューチャーされている楽曲が、12曲目”Audition (The Fools Who Dream)”。ザ・ミュージカル曲らしく、1曲を通して様々な感情が表現されており、ストーリー仕立てになっている。
作曲者のジャスティンは、『ラ・ラ・ランド』の曲中で最もこの楽曲がお気に入りらしい。

「”Audition (The Fools Who Dream)”は、映画の中で最もお気に入りのナンバーかもしれない。少なくとも、作曲した中で最も自分を誇れるナンバーだ。僕の純粋な部分から誕生したこの曲は、僕に『君は創造的な人物である』と話しかけてくれる。
他の曲は何回も行ったり来たりしてデモを作ったり、インスパイアを得ようと様々な曲を聴いた。でも”Audition (The Fools Who Dream)”は、何も参考にすることもせず、ただピアノに座って作曲をしたんだ。僕の純粋な部分、もしくは感情的な部分から生まれた曲だと言えるね。」

”Audition (The Fools Who Dream)”は89回アカデミー賞にて「ベスト・オリジナル・ソング」にノミネート、セントルイス映画批評家協会では「ベスト・ソング」部門を受賞している。

13曲目には、これまでの楽曲をメドレーアレンジした”Epilogue”。劇中で流れた名曲達のサビ部分がメドレーになっており、曲としての完成度も非常に素晴らしい。
『ラ・ラ・ランド』のエンディングを飾るのに相応しい、壮大で美しいナンバー。

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