最もキャッチーなジプシージャズ・アルバム『素顔のままで』（Just The Way You Are）- ビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）

「ジプシージャズ」と呼ばれるジャンルを生み出した、最も偉大なジャズギタリストの一人、ジャンゴ・ラインハルト（Django Reinhardt）。
そんなジャンゴの後継者として真っ先に名前が挙がるのが、フランス出身のギタリストであるビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）だ。

1966年にアルザス地方で生まれたビレリは4歳からギターを始め、8歳の頃にはジャンゴの楽曲をコピーし、演奏していた。
10代に入るとラリー・コリエル（Larry Coryell）やジャンゴの相方だったステファン・グラッペリ（Stéphane Grappelli）などと共演。1886年には、当時20歳ながらジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius)とアルバムをリリースするなど順調にキャリアを築いていった。

ビレリは自身のルーツを見直すべく、2000年ごろから「ジプシージャズ」の作品を多くリリースするようになる。
2001年にフランス・ホット・クラブ五重奏団を彷彿とさせる編成で『ジプシー・プロジェクト』（Gipsy Project）。そしてその翌年には、プロジェクト第二弾となる『ジプシー・プロジェクト&フレンズ』（Gipsy Project & Friends）を発表した。
ビレリ・ラグレーンは、この2作で「ジャンゴ・ラインハルトの後継者」としての地位を確立したといっても過言ではないだろう。

勢いそのままに、2004年にはプロジェクト第三弾『ムーブ』（Move）をリリース。ジャンゴ色を残しつつも、ソプラノサックスとエレキギターが加わったこの作品は、フランス人らしい優雅さのあるアルバムとなった。

そして2007年にリリースしたのが、今回紹介するアルバム『素顔のままで』（Just The Way You Are）だ。

本作の特徴はなんと言っても「キャッチーな楽曲が多く選ばれていること」だろう。

まず、ジャンゴが演奏した楽曲の中でも人気の高い”After You've Gone”、”I'll See You in My Dreams”を収録。2曲とも明るいメロディーが特徴的で、ジャズ好きでなくとも聴きやすい楽曲だ。

2曲目はアルバムのタイトルにもなっているビリー・ジョエル（Billy Joel）の名曲”Just The Way You Are”。アレンジが素晴らしく、ジプシージャズと原曲の泣けるメロディーが上手くマッチしている。

ジャズの定番曲である”All Of Me”は5曲目に並んでおり、この曲ではビレリがボーカルを担当。この楽曲で彼の歌声を始めて聞いた方も多いのではないだろうか。

11曲目“Before You Go”は、ジョージ・ベンソン（George Benson）作曲によるアップテンポなナンバー。ビレリのエレキギターの音色が心地よい、エレガントな楽曲だ。

今作で最も知名度の高いであろう、エルヴィス・プレスリー（Elvis Presley）の名曲”Love Me Tender”は13曲目に収録。原曲はバラードだが、このアレンジではテンポを少し上げており、ポップな印象を受ける楽曲となっている。

合計14曲の今作だが、どのナンバーも聴く人を選ばないキャッチーなアルバムだ。

参加メンバーはサックス奏者のフランク・ウルフ、ギタリストのホノ・ヴィンターシュタイン、ベーシストのディエゴ・インベルトと前作と同じメンツ。フランクは基本的にソプラノサックスをプレイしており、楽曲を更に優雅に仕上げている。

アコースティックなサウンドやお洒落な楽曲を楽しみたい。

そんな方にはおすすめできる作品が、フランス出身のギタリストであるビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）の『素顔のままで』（Just The Way You Are）だ。

Just The Way You Are - Track Listing

Just The Way You Are - Credit

ビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）- ギター、ボーカル（Track 5）
ホノ・ヴィンターシュタイン（Hono Winterstein）- ギター
ディエゴ・インベルト（Diego Imbert）- アップライトベース
アンドレ・チェッカレリ（André Ceccarelli）- ドラム
フランク・ウルフ（Franck Wolf）- ソプラノ、テナーサックス