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ジョン・メイヤー(John Mayer)の最高傑作として称され、グラミー賞2冠を達成したブルース・ポップの名盤『コンティニュアム』(Continuum)

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『コンティニュアム』(Continuum)は、アメリカ出身のギタリスト、ジョン・メイヤー(John Mayer)が2006年にリリースしたアルバムである。

3枚目のアルバムとして発表された本アルバムは、リリース初週にて300,000枚の売上枚数を突破し、世界各国の音楽チャートでTOP10にランクイン。
現在までのトータルセールス枚数は500万枚以上を記録し、第49回グラミー賞では「ベスト・ポップ・ボーカル・アルバム賞」「最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞」の二つを受賞することとなった。
また本アルバムは、2020年にローリング・ストーンが行った「歴代最高のアルバム 500選」にて486位にも選出されている。
今回はこのジョン・メイヤーの最高傑作として呼び声の高い『コンティニュアム』(Continuum)について、紹介していこう。

アルバムのタイトルであるコンティニュアムは、日本語で「連続体」「連続性」を意味する。
ジョンはこの言葉を3枚目のアルバム名にすることをリリースする1年以上前から決めていたようだ。
2005年4月に行われたインタビューにて、ジョンは以下のように語っている。

「僕は最近"時間"という概念に取りつかれていてね。連続性の中に存在する僕を感覚的に掴もうと、絶えず計算しているんだ。」

『コンティニュアム』(Continuum)に収録されているナンバーは、もちろん全て新曲。
しかし、ほとんどの楽曲は事前にライブで演奏されており、音源として発表されているものもいくつか存在する。
例えば、"Gravity"、"Vultures"の2曲は、2005年のライブ・アルバム『トライ!』(Try!)にも収録。
また、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)のカバー曲"Bold as Love"についても、ジョンはよくライブで演奏するお気に入りのナンバーだ。

このアルバムの素晴らしいところは、どの楽曲も非常にメロディアスで存在感が強く、捨て曲が一切ないところだ。
ジョン・メイヤーの持つポップな要素とブルージーな部分が完璧に調和しており、「最高のブルース・ポップ・アルバム」に仕上がっている。
それは1曲目"Waiting on the World to Change"のメロディーや、3曲目"Belief"のギターソロを聴けばすぐに理解出来るだろう。
1stアルバム『ルーム・フォー・スクウェアズ』(Room for Squares)、2ndアルバム『ヘビヤー・シンクス』(Heavier Things)も、もちろん素晴らしい作品だ。
しかし、「ジョン・メイヤーの最高傑作を1枚選べ」と言われれば、私は迷うことなく『コンティニュアム』(Continuum)を選ぶ。
それほどまでに完成度が凄まじく、それぞれの楽曲が主役級の輝きを放っているからだ。
実際にトータルセールス枚数500万枚以上はジョンの作品で最も大きな数字であることから、『コンティニュアム』(Continuum)= ジョンの最高傑作と考える人物が私だけではないことを証明しているだろう。
(売上枚数で作品の完成度を語るのはナンセンスではあるが…)

それではここからは名盤『コンティニュアム』(Continuum)の収録曲について語っていこう。

Continuum - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Waiting on the World to ChangeJohn Mayer3:21
2.I Don't Trust Myself (With Loving You)John Mayer4:52
3.BeliefJohn Mayer4:02
4.GravityJohn Mayer4:05
5.The Heart of LifeJohn Mayer3:19
6.VulturesJohn Mayer, Steve Jordan, Pino Palladino4:11
7.Stop This TrainJohn Mayer4:45
8.Slow Dancing in a Burning RoomJohn Mayer4:02
9.Bold as Love (The Jimi Hendrix Experience cover)Jimi Hendrix4:18
10.Dreaming with a Broken HeartJohn Mayer4:07
11.In RepairJohn Mayer, Charlie Hunter6:09
12.I'm Gonna Find Another YouJohn Mayer2:43

Background & Reception

1曲目の"Waiting on the World to Change"は、暖かい雰囲気を持つポップ・ソング。
コード進行は、ロックやソウルでよく見られる"I - vi - IV - I - V - vi - IV - I"が基調とされている。
シンプルなコード進行が故にメロディアスな部分が強調されており、サウンドも相まって非常に聴き心地がよい。
甘いトーンで奏でられる印象深いギターソロ、またジャズ・トランペット奏者のロイ・ハーグローヴのサウンドにも注目だ。
先行シングルとしても発表されており、グラミー賞「最優秀男性ポップボーカルパフォーマンス賞」を受賞した名曲中の名曲。

2曲目"I Don't Trust Myself (With Loving You)"は、R&Bの要素を強く感じさせるナンバー。
リズム隊のサウンドが洗練されており、楽曲が流れるように進行していくのが特徴だ。
"Waiting on the World to Change"と同じく、この曲でもロイ·ハーグローヴがトランぺッターとして参加。
また、このナンバーのみウィリー・ウィークス(Willie Weeks)がベーシストとして名を連ねている。

スティーヴ・ジョーダンの深みのあるドラミングから始まるのが、3曲目"Belief"
ギターのメイン・リフやオブリガードもクールで、「三大ギタリスト」としての能力を遺憾なく発揮している。
スティーヴィー・レイ・ヴォーンをポップな要素を加え、現代風にアレンジしたようなサウンドとギターソロは圧巻の一言。
また、アメリカ人ギタリスト、ベン・ハーパー(Ben Harper)が参加していることも、忘れてはならない。
受賞こそならなかったものの、第50回グラミー賞では「最優秀男性ポップボーカルパフォーマンス賞」にノミネートされた名曲だ。

4曲目"Gravity"は、スローテンポでキャッチーなバラード曲。
トーンの抑えられた暖かいギターのサウンドと歌メロは、ジョンの作曲者としての能力の高さを感じることができる。
この楽曲は、2005年にリリースされたライブ・アルバム『トライ』(Try!)にも収録されているため、興味のある方はチェックしてみてほしい。
バックボーカルとしてアリシア・キーズ(Alicia Keys)が参加していることも忘れてはならない。(正直なところ、あまり目立ってはいないが…)
ジョン自身のお気に入りのナンバーらしく、ライブやYouTube動画などでもよく演奏しているナンバーだ。

メロディーライン、イントロのアルペジオなど「美しい」という言葉よく似合う楽曲が、5曲目"The Heart of Life"
ジョン・メイヤーは「印象的なアルペジオ・パターン」の作曲能力が非常に高く、それがこの楽曲でも遺憾なく発揮されている。
オブリガード、ギターソロもブルージーで歌っており、ギタリストならば必ず参考になるだろうフレーズばかりだ。
また、アルバム内で唯一のドラムレス曲であり、弾き語りに近い構成で演奏されているナンバーでもある。

作曲にスティーヴ・ジョーダン、ピノ・パラディーノが参加したのが、6曲目"Vultures"
イントロのフレーズを中心に曲が展開していく楽曲で、"I Don't Trust Myself (With Loving You)"と同じくリズムが強調された楽曲だ。
リズム隊とギターリフが生み出すシャッフル・リズムが心地よく、ライブでもよく演奏される人気の高いナンバー。
"Gravity"と同じく、2005年発表のライブ・アルバム『トライ』(Try!)で初披露されたナンバーでもある。
個人的にはジョン・メイヤーの楽曲の中で最もお気に入りのチューン。

7曲目"Stop This Train"は、アコースティックギターのアルペジオが印象的な楽曲。
何気なく弾いているが、曲中のアルペジオの難易度は高く、更にジョンはこれを歌いながら弾いているから驚きだ。
弾き語りのスタイルに近く、実際にライブ・アルバム『ウェアー・ザ・ライト・イズ』(Where the Light Is: John Mayer Live in Los Angeles )では弾き語りにてこの楽曲を披露している。
どことなく寂しさのある楽曲でもあり、メロディアスな歌メロにも注目してほしい。
ギタリストとして、マルーン5のジェームス・バレンタイン(James Valentine)がクレジットに名を連ねている。

深みのあるマイナー調の楽曲"Slow Dancing in a Burning Room"は、8曲目に収録。
楽器隊のサウンドが心地よく、まさにゆったりと踊り出したくなるナンバーだ。
ジョンはここでもギタリストとしての力を遺憾なく発揮しており、ブルージーなギターソロを弾きまくっている。
"Belief"と同じく、ジョンの「ギタリストとしての側面」も楽しめるR&B・チューン。

9曲目には、ギターの神様ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)が生んだ"Bold as Love"を選出。
ジミヘンのカバーだけあって、収録曲の中で最もギターが暴れている楽曲だ。
オリジナルでは自由にメロディーを歌っているものの、ジョンは忠実にラインをなぞっているため、オリジナルよりも聴きやすい印象だ。
ギターのサウンドはジミヘンではなく、ジョンの敬愛するスティーヴィー・レイ・ヴォーン(Stevie Ray Vaughan)に近い。

10曲目に並んだ"Dreaming with a Broken Heart"は、ピアノとボーカルがフューチャーされた美しいバラード曲。
ここで発揮されているのは、ジョン・メイヤーの「シンガーとしての才能」である。
歌声・メロディー・バックトラックなど全てが美しく、シングルとしても100万枚を売上を記録。
今作の中でも特にポップ色が強い、多くの人に愛されている楽曲だ。

次に続く11曲目"In Repair"も、"Dreaming with a Broken Heart"と似た雰囲気を持つ暖かいバラード曲である。
アメリカのギタリストであるチャーリー・ハンター(Charlie Hunter)との共作であり、曲中の8弦ギターはチャーリーの演奏によるもの。
ブルージーなギターソロも披露しており、ここでも「三大ギタリスト」としての腕前を発揮している。
ライブ・アルバム『ウェアー・ザ・ライト・イズ』(Where the Light Is: John Mayer Live in Los Angeles )では、"The Heart of Life"とメドレーで演奏され、観客を沸かせた。

アルバムのラストを飾るのは、エレキギターの弾き語りから始まる"I'm Gonna Find Another You"
穏やかな雰囲気のある楽曲であり、夕暮れ時に聴きたくなるような楽曲だ。
ホーンセクションが効果的に使われており、これまでの収録曲よりも広がりのあるナンバーに仕上がっている。
ライブではいつものストラトキャスターをギブソンのL-5に持ち替え、演奏することが多いようだ。
(恐らく本レコーディングでも箱物のギターを使用している様子)

Continuum - Credit

ジョン・メイヤー(John Mayer)- ボーカル、ギター
ピノ・パラディーノ(Pino Palladino)– ベース
スティーヴ・ジョーダン(Steve Jordan)- ドラム(Track 5を除く)、パーカッション(Tracks 1, 2, 5, 8, 10)、バックボーカル(Track 1)
リッキー・ピーターソン(Ricky Peterson)- キーボード(Tracks 1, 6, 11, 12)、バックボーカル(Track 1)
ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)- トランペット(Tracks 1, 2)
ウィリー・ウィークス(Willie Weeks)- ベース(Track 2)
ベン・ハーパー(Ben Harper)- ギター(Track 3)
クレイトン・キャメロン(Clayton Cameron)- ドラム(Track 3)
マノロ・バドレーナ(Manolo Badrena)- パーカッション(Track 3)
ラリー・ゴールディングス(Larry Goldings)- キーボード、オルガン(Track 4)
ジェームス・バレンタイン(James Valentine)- ギター(Tracks 7, 11)
ジェイミー・ミュホベラック(Jamie Muhoberac)- キーボード(Tracks 7, 11)
チャーリー・ハンター(Charlie Hunter)- 8弦ギター(Track 11)
レスター・スネル(Lester Snell)- キーボード、ホーンアレンジアシスタント(Track 12)
ローレンス・ミッチェル(Lawrence "Boo" Mitchell)- ホーンアレンジ(Track 12)
ウィリー・ミッチェル(Willie Mitchell)- ホーンアレンジ(Track 12)
カルロス・サウデソ(Carlos Saucedo)- ギター(Track 12)
ハーレイ・パスターナック(Harley Pasternak)- バックボーカル(Track 1)
ジェニー・マルティネス(Jeannie Martinez)- バックボーカル(Track 1)
クリステン・モス(Kristen Moss)- バックボーカル(Track 1)
リー・パジェット(Lee Padgett)- バックボーカル(Track 1)
マギー・スラヴ(Maggie Slavonic)- バックボーカル(Track 1)
リッキー・シトンバウム(Ricky Cytonbaum)– バックボーカル(Track 1)
サンディー・ヴォグダシィー(Sandy Vongdasy)- バックボーカル(Track 1)
スコッティ・クロウ(Scotty Crowe)- バックボーカル(Track 1)
アリシア・キーズ(Alicia Keys)- バックボーカル(Track 4)

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