『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』(Blizzard of Ozz)は、オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)がソロ名義として初めてリリースしたアルバムである。
1979年4月、オジーはそれまで在籍していたブラック・サバス(Black Sabbath)を重度の薬物・アルコール依存の為、クビになってしまった。しかし、僅かその約一年半後である1980年9月、オジーはベースにレインボー(Rainbow)のボブ・デイズリー(Bob Daisley)、キーボードに同じくレインボーのドン・エイリー(Don Airey)、ドラマーとしてユーライア・ヒープ(Uriah Heep)のリー・カースレイク(Lee Kerslake)、そしてギタリストにランディ・ローズ(Randy Rhoads)を迎え、1stアルバム「Blizzard of Ozz」を発表した。
ブラック・サバス負けず劣らずのメンバーを従え、リリースされたこのアルバムは、各方面から高い評価を獲得し、現在までに600万枚の売り上げを突破している。また、2017年にはアメリカの音楽雑誌であるローリングストーン誌が発表した「最も偉大なメタル・アルバム100枚」において9位を獲得。今日ではメタル史に残る名盤として、広く知られている作品なのだ。
豪華なメンバーが揃っているが、特筆すべきはやはりギターのランディ・ローズ(Randy Rhoads)だろう。メロディアスなフレーズやギターソロで多くのオーディエンスを魅了し、メタルファン以外でも、彼を好きなギタリストに挙げる人は多い。またランディーは、このアルバムの楽曲殆どを作曲しており、優れたギタリストでありながら、優れた作曲家でもあった。
しかし、彼はアルバム発表から2年足らずで飛行機事故により、僅か25歳でこの世を去ってしまう。だが、短い生涯の中でランディーが音楽業界に残した功績は図り知れず、現在でも最も偉大なギタリストの一人として、数えられている。
『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』(Blizzard of Ozz)はオジー・オズボーンのデビュー作でもあり、ランディ・ローズがこの世に残した最後の作品でもあるのだ。
Blizzard of Ozz - Track Listing
No. | Title | Writer | length |
1. | I Don't Know | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 5:16 |
2. | Crazy Train | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 4:57 |
3. | Goodbye to Romance | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 5:36 |
4. | Dee | Randy Rhoads | 0:50 |
5. | Suicide Solution | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 4:20 |
6. | Mr. Crowley | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 4:57 |
7. | No Bone Movies | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley, Lee Kerslake | 3:58 |
8. | Revelation(Mother Earth) | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 6:09 |
9. | Steal Away(The Night) | Ozzy Osbourne, Randy Rhoads, Bob Daisley | 3:28 |
Background & Reception
1曲目である"I Don't Know"のイントロを聞くだけで、オジー・オズボーンとランディー・ローズの相性の良さを感じることが出来る。ボーカルのオジーを引き立てつつ、メロディアスな合いの手を入れるランディーのギターは、多くのギタリストの参考になるだろう。80年代らしい乾いたようなサウンドも、聴いていて心地が良い。
次の"Crazy Train"はアルバム内で最初にシングルカットされ、アメリカだけで200万以上売り上げを突破したメタルナンバー。現在ではオジーを代表する曲として世界中で愛されている。力強い低音のリフから始まり、メジャーのメロディアスなフレーズへ転調する箇所がたまらなくかっこいい。ギターソロも歌っており、アメリカの月刊音楽雑誌「Guitar World」が企画した「偉大なギターソロトップ100」では第9位に選ばれたこともある。
ちなみに、ランディーが在籍していたバンドであるクワイエット・ライオット(Quiet Riot)にランディーの後釜として加入したグレッグ・レオン(Greg Leon)は、「Crazy Trainのリフを作るのに手を貸した」と主張している。彼によると、「スティーヴ・ミラー(Steve Miller)の"Swingtown"のフレーズをスピードアップして弾いてランディーに聞かせた。それをランディーがブラシュアップして"Crazy Train"を完成させたんだ。」とのことだ。
次の"Goodbye to Romance"はアルバム内で最初に書かれた曲。「ブラック・サバス(Black Sabbath)をクビになったことにより、自分のキャリアは終わった。」と感じていたオジーが作曲した、スローバラードのナンバーだ。
4曲目"Dee"はギタリスト、ランディー・ローズによるソロ演奏。クラシカルな演奏を好んでいた彼らしい、美しい旋律の曲だ。ちなみにランディーは将来、クラシックギタリストとして生きることも考えていたようだ。
問題作の"Suicide Solution"は急性アルコール中毒で亡くなったAC/DCの元リード・シンガー、ボン・スコット(Bon Scott)を偲んで書かれた曲。ヘビーなサウンドがフューチャーされた人気の高い曲だ。
ジョン・マッカラム(John McCollum)という少年がこの曲を聞いた後、自殺したという事件が起きた為、オジーは少年の両親に訴えられたが、オジーに責任はないとされ無罪となった。(Suicideは自殺、Solutionは解決という意味がある)
ドン・エイリー(Don Airey)の邪悪なイントロから始まる"Mr. Crowley"もオジー・オズボーンバンドを代表する人気のナンバー。この"Crowley"とは1910年頃にオカルト団体を主宰し、世間を賑わせていたアレイスター・クロウリー(Aleister Crowley)のことである。メロディアスなギターソロは多くの音楽ファンを魅了し、「Guitar World」が企画した「偉大なギターソロトップ100」では第28位に選ばれている。
イントロのリフがクールな"No Bone Movies"はアルバム内で最後に完成したハードロック調のナンバー。元は昔で言うB-sideのみに収録される予定だったが、作曲に携わったドラマーのリー・カースレイク(Lee Kerslake)の名前をクレジットする為、追加された曲らしい。
"Revelation (Mother Earth)"はドン・エイリー(Don Airey)が作曲したイントロが特徴的なダークなスローバラード。この曲と"Mr. Crowley"のイントロは彼がスタジオで書いたものだったが、作曲者として名前が追加されることは無かった。
最後の"Steal Away (The Night)"もギタリストに人気の曲。ディープ・パープル(Deep Purple)のリッチー・ブラックモア(Ritchie Blackmore)に影響を受けたランディー・ローズのクラシカルなギターソロは一聴の価値アリ。
Conclusion
メタルの名盤として、必ず挙げられるのがこのオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)のデビュー作『ブリザード・オブ・オズ〜血塗られた英雄伝説』(Blizzard of Ozz)だ。「メタル・アルバム」という、ポップスほど需要が大きくないにも拘らず、現在も愛され、600万枚以上を売り上げた理由は、このアルバムが「単純にかっこいいから」に他ならないだろう。
メタルファン以外でも楽しめる作品なので、ロック好きはもちろん、ギタリストには是非おすすめしたい名盤だ。