ビッグバンドで蘇る1960年代の名曲達。アレンジャーは必聴の一枚『プレイズ・ヒップ・ヒット』（Plays Hip Hits）- クインシー・ジョーンズ（Quincy Jones）

マイケル・ジャクソン（Michael Jackson）の『スリラー』（Thriller）、『バッド』（Bad）などを手掛け、数々の名盤を生み出してきたクインシー・ジョーンズ（Quincy Jones）。
プロデュース業だけでなく、自身でも多くのアルバムをリリースしており、アレンジャーや作曲家としての能力も高く評価されている。
特に自己名義の1981年『愛のコリーダ』（The Dude）や1891年『バック・オン・ザ・ブロック』（Back on the Block）ではグラミー賞を複数獲得。この2枚はクインシーの能力が遺憾なく発揮された名盤と言えるだろう。
今回紹介する作品『プレイズ・ヒップ・ヒット』（Plays Hip Hits）は、1963年にリリースされたカバー・アルバムである。

内容は1960年代のヒット曲をビッグバンド編成にアレンジしたもの。
選曲はジャズミュージックが中心だが、クインシーらしい編曲で親しみやすい音楽に変身している。

参加メンバーもジャズ界のレジェント達が揃っており、ビッグバンド編成で聞くのがもったいないぐらいだ。その中にはジョー・ニューマン（Joe Newman）、ズート・シムズ（Zoot Sims）、ジム・ホール（Jim Hall）もなども含まれている。
余りに名人が多くここでは紹介しきれないため、詳細は下記クレジットで確認してほしい。

前述したとおり、選ばれている楽曲はジャズ界で名曲とされているものが多い。

大人の雰囲気のある1曲目"Comin' Home Baby"は、現在でも良くカバーされているナンバー。ジャズシンガーであるメル・トーメ（Mel Tormé）が歌ったことにより有名となった。元々がポップの要素を含む楽曲のため、原曲に忠実なアレンジが施されている。

9曲目には大人気のジャズナンバー”Take Five”を収録。ポール・デスモンド（Paul Desmond）による作曲であり、日本でもよく知られた曲のため、耳にしたことのある方も多いのではないだろうか。原曲にはない、ビッグバンドらしい豪華なホーンセクションのサウンドが特徴。

"Watermelon Man"は、ハービー・ハンコック（Herbie Hancock）が1962年に作曲したジャズ・フュージョンナンバー。ソロ回しなどはなく、フュージョンの要素は無くなっているものの、シンプルな構成で商業性の高い音楽に仕上がっている。ジャズ・フュージョン好きでもない方は原曲よりもこちらの方が好みだろう。

また、今作はジャズナンバーに加え、ブラジル音楽もいくつか含まれている。

3曲目に並んだ"Desafinado"は1959年に発表されたボサノバの曲。この曲と言えば、1962年に発表されたチャーリー・バード（Charlie Byrd）とスタン・ゲッツ（Stan Getz）の共作『ジャズ・サンバ』（Jazz Samba）が有名だろう。
原曲の軽やかなリズムに管楽器の煌びやかさがブレンドされた素晴らしいアレンジだ。

他にもナット・アダレイ（Nat Adderley）の"Jive Samba"や、デイヴ・ブルーベック（Dave Brubeck）の"Bossa Nova U.S.A."も収録。
どの楽曲も原曲にポップの要素を加えた編曲のため、聞く人を選ばない作品と言えるだろう。

注意すべき点は、このアルバムにはソロがほぼないということ。
ジャズの巨匠達が多く参加しているが、好みのミュージシャンのアドリブを期待しての購入は控えたほうが良い。
逆にビッグバンドを愛する人や、アレンジャーを目指している人には非常に勉強になる一枚だろう。

世界有数の音楽家であるクインシー・ジョーンズ（Quincy Jones）のカバー・アルバム『プレイズ・ヒップ・ヒット』（Plays Hip Hits）。
まだ聞いたことのない人は、是非一度視聴してほしい。

Plays Hip Hits - Track Listing

Plays Hip Hits - Credit

アル・コーン（Al Cohn）- サックス
フランク・ウェス（Frank Wess）- サックス
ジェームス・ムーディ（James Moody）- サックス
ローランド・カーク（Roland Kirk）- サックス
ウォルター・レビンスキー（Walter Levinsky）- サックス
ズート・シムズ（Zoot Sims）- サックス
バド・ジョンソン（Budd Johnson）- クラリネット
ジェローム・リチャードソン（Jerome Richardson）- フルート、クラリネット
セルダン・パウエル（Seldon Powell）- フルート
ロミオ・ペンク（Romeo Penque）- フルート、クラリネット
アル・パルシ（Al Perisi）- トランペット
クラーク・テリー（Clark Terry）- トランペット
アーニー・ロイヤル（Ernie Royal）- トランペット
ジェームス・ノッティンガム（James Nottingham）- トランペット
ジョー・ニューマン（Joe Newman）- トランペット
スヌーキー・ヤング（Snooky Young）- トランペット
ビリー・バイヤーズ（Billy Byers）- トロンボーン
ジミー・クリーブランド（Jimmy Cleveland）- トロンボーン
カイ・ウィンディング（Kai Winding）- トロンボーン
メルバ・リストン（Melba Liston）- トロンボーン
ポール・フォーリーズ（Paul Faulise）- トロンボーン
クウェンティン・ジャクソン（Quentin "Butter" Jackson）- トロンボーン
サント・ルッソ（Santo Russo）- トロンボーン
トーマス・ミッチェル（Thomas Mitchell）- トロンボーン
アール・チャパン（Earl Chapin）- フレンチホルン
フレッド・クライン（Fred Klein）- フレンチホルン
ジェームス・バフィントン（James Buffington）- フレンチホルン
ジュリアス・ワトキンス（Julius Watkins）- フレンチホルン
ポール・イングラハム（Paul Ingraham）- フレンチホルン
レイ・アロンジ（Ray Alonge）- フレンチホルン
ボブ・ノーザン（Bob Northern）- フレンチホルン
ウィリー・ルフ（Willie Ruff）- フレンチホルン
チャールズ・マッコイ（Charles McCoy）- ハーモニカ
ボビー・スコット（Bobby Scott）- ピアノ、オルガン
ラロ・シフリン（Lalo Schifrin）- ピアノ、オルガン
Patti Bown（Patti Bown）- ピアノ、オルガン
ジム・ホール（Jim Hall）- ギター
ケニー・バレル（Kenny Burrell）- ギター
サム・ハーマン（Sam Herman）- ギター
ウェイン・ライト（Wayne Wright）- ギター
レイ・クロフォード（Ray Crawford）- ギター
アート・デイヴィス（Art Davis）- ベース
ベン・タッカー（Ben Tucker）- ベース
クリス・ホワイト（Chris White）- ベース
ジョージ・デュヴィヴィエ（George Duvivier）- ベース
メジャー・ホーリー（Major Holley）- ベース
ミルト・ヒントン（Milt Hinton）- ベース
エド・ショネシー（Ed Shaughnessy）- ドラム
オジー・ジョンソン（Ossie Johnson）- ドラム
ルディ・コリンズ（Rudy Collins）- ドラム
ビル・コスタ（Bill Costa）- パーカッション
カルロス・ゴメス（Carlos Gomez）- パーカッション
ジョージ・デベンス（George Devins）- パーカッション
ジャック・デル・リオ（Jack Del Rio）- パーカッション
チャールズ・マッコイ（Charles McCoy）- パーカッション
ジェームス・ジョンソン（James Johnson）- パーカッション
ホセ・パウラ（Jose Paula）- パーカッション