50年以上の活動歴を誇り、ファンク界の重鎮として多方面からリスペクトを集めているグループ、タワー・オブ・パワー(Tower of Power)。
グルーヴィ-なリズム隊と力強いホーンセクションが特徴であり、これまでに数々の名盤を残してきた。
今回紹介する『ティー・オー・ピー』(T.O.P)は、タワー・オブ・パワー(Tower of Power)が1993年にリリースした”復活作”として知られるアルバムである。
ジェイムズ・ブラウン(James Brown)、ジョージ・クリントン(George Clinton)らの活躍により、1960年代から流行していたファンクミュージック。
しかし、1970年半ばからディスコ・ブームとなり、ファンクは一時期影を潜めることとなる。これと共にタワー・オブ・パワーも冬の時代を迎えることとなった。
彼らを救ったのは、同じくサンフランシスコを拠点に活動していたアメリカのロックバンドヒューイ・ルイス&ザ・ニュース(Huey Lewis & The News)。ヒューイは同胞である彼らを自身のアルバム『フォア!』(Fore!)、『スモール・ワールド』(Small World)でバックバンドとして起用。
この結果、タワー・オブ・パワーは再び注目を集めることとなった。
この後、タワー・オブ・パワーは2回目の黄金期を迎えることとなるが、”復活作”と呼べるアルバムは2枚存在する。
1枚目は1991年にリリースした『モンスター・オン・ア・リーシュ』(Monster On A Leash)。そして2枚目が1993年に発表された『ティー・オー・ピー』(T.O.P)だ。
どちらも素晴らしい作品であり、甲乙つけがたい名盤であることは確か。
個人的には『ティー・オー・ピー』(T.O.P)の方がキャッチーな楽曲が多く、より多くの人におすすめできる作品だと思う。
1曲目"Soul With a Capital 'S'"のイントロを聞いた瞬間、彼らが如何に優れたバンドであるかを理解できるはずだ。力のあるホーンサウンドとベーシストのロッコが作るグルーブは、他のファンクバンドには真似できない芸当だと言える。
トランペット奏者のアダムが作曲した"It All Comes Back"は、また違ったグルーブ感のあるナンバー。バリトンサックスの低音とギターのカッティングが楽曲に心地よさを与えている。
4曲目に収録された"The Real Deal"では、ロッコのベースとサックスに注目してほしい。単調なリズムながら音の強弱やホーンセクションのアレンジにより、グルーヴィーなナンバーに仕上がっている。
ファンキーな楽曲を楽しみたい方は”I Like Your Style”、”Come on With It”もおすすめ。どちらもグループ感に溢れ、ライブでも盛り上がるナンバーとなった。
また、今作では都会的なサウンドを感じさせる楽曲が2曲含まれている。
6曲目“Cruise Control”はこれまでのタワー・オブ・パワーとは一味違ったスタイリッシュなインスト曲。ソロはサックス奏者として名高いブランドン・フィールズ(Brandon Fields)が演奏している。
ギタリストのカーメン・グリッロ(Carmen Grillo)が作曲を行った”You”も洗練されたサウンドが特徴の楽曲だ。メロディーも日本好みな部分があるため、シティポップを愛する人であればきっと気に入るだろう。
その他の楽曲である”Come to a Decision”、”Mama Lied”などもキャッチーで耳馴染みが良いものばかりだ。
初期の作品と比べ、音質も向上しているため、初めてタワー・オブ・パワー(Tower of Power)に触れる人にもおすすめ出来るアルバムである。
苦しい時期を乗り越えたファンク界の重鎮の復帰作『ティー・オー・ピー』(T.O.P)。
是非あなたの耳で確かめてみてほしい。
T.O.P. - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Soul With a Capital 'S' | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 4:59 |
2. | It All Comes Back | Greg Adams, Neil Jason, John McCurry | 3:55 |
3. | Please Come Back (to Stay) | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka, Nick Milo | 5:28 |
4. | The Real Deal | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 4:30 |
5. | Come to a Decision | Carmen Grillo | 5:32 |
6. | Cruise Control | Greg Adams, Nick Milo | 5:04 |
7. | The Educated Bump, Part I | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 0:54 |
8. | Mama Lied | Emilio Castillo | 3:35 |
9. | Quiet Scream | Greg Adams | 4:21 |
10. | I Like Your Style | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka, Nick Milo | 4:19 |
11. | You | Carmen Grillo, Tommy Keane | 4:31 |
12. | South of the Boulevard | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 5:59 |
13. | Come on With It | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 4:52 |
14. | The Educated Bump, Part II | Emilio Castillo, Stephen "Doc" Kupka | 1:02 |
T.O.P. - Credit
トム・ボウズ(Tom Bowes)- ボーカル
カーメン・グリッロ(Carmen Grillo)- ギター、バックボーカル、ボーカル(Track 11)
フランシス・ロッコ・プレスシャ(Francis "Rocco" Prestia)- ベース
ラス・マッキノン(Russ McKinnon)- ドラム、パーカッション
ニック・ミロ(Nick Milo)- キーボード
エミリオ・カスティロ(Emilio Castillo)- テナーサックス、バックボーカル、ボーカル(Track 13)
ステファン・"ドク"・クプカ(Stephen "Doc" Kupka)- バリトンサックス
グレッグ・アダムス(Greg Adams)- トランペット、トランペットソロ(Track 9)フリューゲルホルン、フリューゲルホルンソロ(Track 6)
リー・ソーンバーグ(Lee Thornburg)- トランペット、フリューゲルホルン、トロンボーン、ボーカル
【Guest】
レニー・ピケット(Lenny Pickett)- サックソロ(Tracks 2, 4, 7, 12, 13, 14)
ブランドン・フィールズ(Brandon Fields)- サックスソロ(Track 6)
ポール・ペリッツ(Paul Perez)- テナーサックス、アルトサックス
ポンチョ・サンチェス(Poncho Sanchez)- コンガ(Tracks 11, 12)