ヴァン・ヘイレン(Van Halen)は1972年に結成したアメリカ出身のハードロック・バンド。世界的に非常に人気の高いバンドであり、全米で5,650万枚以上、全世界で8,000万枚以上のアルバムセールスを記録している。また、1992年にはグラミー賞を受賞、2007年には遂に「ロックの殿堂入り」を果たした。
1978年にリリースした1stアルバム『炎の導火線』(Van Halen)は現在までに1,000万以上を売り上げており、ヴァン・ヘイレンの最高傑作に挙げられることが多い名盤だ。そして、彼らのアルバムの中でもう1枚、1,000万以上の売り上げを記録している作品がある。
それが1984年にリリースされた『1984』だ。
バンドの結成から10年目の1984年に発表された6thアルバム『1984』は、シンセサイザーによるポップなサウンドで幅広い客層を獲得。全米アルバムチャートで5週間に渡り、2位にランクインした。
1980年代はMTV(ミュージックテレビジョン) の全盛期であり、ミュージックビデオが売り上げを左右する時代でもあった。ヴァン・ヘイレンもその流れに沿い、「ジャンプ」(Jump)、「パナマ」(Pamana)、「ホット・フォー・ティーチャー」(Hot for Teacher)のミュージックビデオを作成。その結果、売り上げは伸び続け、2000年に入る頃にはアメリカ国内のみで1,000万枚を売り上げたメガヒット作品となり、現在ではダイアモンド・ディスクに認定されている。
しかし、このアルバムのリリース後、音楽性の違いから1985年にボーカルのデイヴィッド・リー・ロス(David Lee Roth)がバンドを脱退。その22年後の2007年にバンドに復帰したが、「ヴァン・ヘイレン(Van Halen)黄金期」としては、最後の作品となった。
1984 - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | 1984 | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 1:07 |
2. | Jump | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 4:01 |
3. | Panama | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 3:31 |
4. | Top Jimmy | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 2:59 |
5. | Drop Dead Legs | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 4:14 |
6. | Hot for Teacher | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 4:42 |
7. | I'll Wait | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth, Michael McDonald | 4:40 |
8. | Girl Gone Bad | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 4:35 |
9. | House of Pain | Eddie Van Halen, Alex Van Halen, Michael Anthony, David Lee Roth | 3:19 |
Background & Reception
このアルバムを象徴する曲と言えば、間違いなく2曲目の"Jump"だろう。シングルとして先行リリースされたこの曲は、複数の国でシングルチャート1位を獲得。今日では、ヴァン・ヘイレン(Van Halen)の曲中で、「最も知名度の高い曲」として知られている。特徴的なイントロではあるが、1981年頃にギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレン(Edward Van Halen)がこのアイデアをメンバーに聞かせたところ、全員から不評だったようだ。
作詞はボーカルのデイヴィッド・リー・ロス(David Lee Roth)。
ロスが1951年製のマーキュリーを運転しながら歌詞を考えていると、ふと「飛び降り自殺すると脅迫している男のニュース」を思い出した。そしてロスは、それを見ていた傍観者のうち一人ぐらいは「go ahead and jump!」(飛んでみろ!)などと叫んでいるに違いないと妄想し、これをポジティブな歌詞に書き換え、完成した。
間奏のギターソロ、キーボードソロはどちらもエドワード・ヴァン・ヘイレンが演奏している。
新しい日本でも2007年にauの夏季キャンペーンソングとして、2019年にはサントリーオールフリーのCMソングとして使用されている為、若い世代でも耳にしたことがある方は多いのではないだろうか。
ヴァン・ヘイレンらしいアメリカン・ロックなナンバー"Panama"も非常に人気の高い曲。
タイトルは、ボーカルのデイヴィッドがラスベガスで見たレーシングカー"Panama Express"が由来となっている。それまでファストカーのことは歌っていなかったデイヴィッドだったが、ある日レポーターに「あなたは女性・パーティー・スピードの出る車のことぐらいしか歌わない」と非難された為、速い車のことを歌うことを決めた。この曲のミュージックビデオに登場している車は、改造された1951年製のマーキュリー・コンバーチブル(1951 Mercury convertible)。
"Top Jimmy"、"Drop Dead Legs"はロサンゼルス発のバンドTop Jimmy & The Rhythm Pigsのことを歌ったハードロックなナンバー。"Top Jimmy"ではメタリックなギターソロ、"Drop Dead Legs"ではスウィープを連発した速弾きフレーズを聞くことが出来る。
アレックス・ヴァン・ヘイレン(Alex van Halen)のダブル・ベース・ドラムがフューチャーされた"Hot for Teacher"は、アルバム内で最後にシングルカットされたシャッフルビートの曲。アレックスの複雑なドラミングは1人で叩いているとは思えないほどだイントロのギターも「タッピングのお手本」のようなフレージングで、ヴァン・ヘイレン兄弟のテクニックが光るナンバー。
2番目にシングルカットされたのが7曲目の"I'll Wait"。"Jump"に次ぎ、キーボードがフューチャーされた曲で、ボーカルのロスとプロデューサーのテッド・テンプルマン(Ted Templeman)はアルバムに収録することに反対していたようだ。しかし、ギタリストのエドワードとエンジニアのドン・ランディー(Donn Landee)に押し切られる形で追加され、結果的にはアルバム内でも人気の高い曲となった。
1984 - Credit
デイヴィッド・リー・ロス(David Lee Roth)ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン(Edward Van Halen)- ギター、キーボード、バックボーカル
マイケル・アンソニー(Michael Anthony)- ベース
アレックス・ヴァン・ヘイレン(Alex van Halen)- ドラム