ジプシージャズへの原点回帰。現代のジャンゴが生んだアルバム『ジプシー・プロジェクト』（Gipsy Project）- ビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）

ジプシージャズの創始者として知られ、「史上最高のジャズ・ギタリストの一人」として数えられているアーティスト、ジャンゴ・ラインハルト（Django Reinhardt）。
そんなジャンゴに大きな影響を受け、「現代のジャンゴ・ラインハルト」と称されているギタリストが、フランス出身のビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）だ。

ビレリ・ラグレーンは4歳からギターを始め、その3年後にはジャンゴに近いスタイルでソロを演奏。僅か13歳でレコーディングに参加し、その卓越した技術で周囲を驚かせた。
その後、ヨーロッパやアメリカ遠征を重ね、アル・ディ・メオラ（Al Laurence Di Meola）、パコ・デ・ルシア（Paco de Lucía）、ベニー・グッドマン（Benny Goodman）、ジャンゴの相棒だったステファン・グラッペリ（Stéphane Grappelli）などと共演。ジプシージャズの枠を超え、コンテンポラリージャズやポストバップなどのジャンルを吸収していった。1986年にはジャコ・パストリアス（Jaco Pastorius）とも共演し、フュージョン・アルバム『シュトゥットガルト・アリア』（Stuttgart Aria）をリリースしている。

様々な経験を得たビレリは、2000年頃から彼の原点と呼べるジプシージャズ・スタイルへ回帰。
そして2001年、初の本格的なジプシージャズ・アルバム『ジプシー・プロジェクト』（Gipsy Project）をリリースした。多くのファンが待ち望んでいた「現代のジャンゴ」によるジプシージャズ・アルバムは、期待を裏切らない内容となり、各方面で高い評価を獲得した。

編成は「フランス・ホット・クラブ五重奏団」を彷彿とさせるギター3本、ヴァイオリン、ベースの弦楽器のみ。収録曲はジャンゴが作曲した”Blues Clair”や”Belleville”、ジャンゴがレコーディングで演奏した”Viper's Dream”、”Limehouse Blues”などが含まれている。フランスで最も売れた曲と言われている"La Mer"はフランス出身のビレリらしい選曲だ。ちなみにこの曲は、アメリカでは”Beyond the Sea”のタイトルで知られており、ジョージ・ベンソン（George Benson）、ロビー・ウィリアムズ（Robbie Williams）など、多くのアーティストがカバーしている。

10代のころから卓越した技術を身に付けていたビレリは、今作でも更に磨きのかかったプレイを披露している。
ジプシージャズギターは速弾きが使用されることが多くあり、必然的に演奏技術の高いプレイヤーが多い。
その中でもビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）は、最も高いテクニック・フレージング力・表現力を持つジプシージャズギタリストだろう。

全て生楽器で演奏されており、レコーディング状態も良い為、リラックスして聞くことができるのも今作の特徴。「ジャズ」という音楽に興味が無い方達にも、お勧めできる一枚に仕上がっている。

Gypsy Project - Track Listing

Gypsy Project - Credit

ビレリ・ラグレーン（Biréli Lagrène）- ギター
ホノ・ヴィンターシュタイン（Hono Winterstein）- ギター
ウッドマノ・ラグレーン（Holzmano Lagrene）- ギター
フローリン・ニクレスク（Florin Niculescu）- バイオリン
ディエゴ・インベルト（Diego Imbert）- アップライトベース
リシャール・ガリアーノ（Richard Galliano）- アコーディオン（Track 15）