ニューヨークの地下鉄から世界へ。ファンキーなブラス・バンド、待望のデビュー・アルバム『エヌワイシー』（NYC）- ラッキー・チョップス（Lucky Chops）

ニューヨークが世界へ誇るブラス・バンド、ラッキー・チョップス（Lucky Chops）。
彼らはNY市地下鉄から世界へ認知されることとなった、異色のグループである。

ラッキー・チョップス（Lucky Chops）は2006年にジョッシュ・ホルコム（Josh Holcomb）、ダロ・ベロージ（Daro Behroozi）、ラファエル・ブーヨ（Raphael Buyo）が中心となり結成したバンド。
当初からカバー曲を中心に路上ライブを行っていたそうだ。

2014年に入ると、地下鉄で演奏する際に必要な許可（MTA's Music Under New York）を獲得。そこからニューヨーク市地下鉄内でも演奏を行うようになった。
また、同年にバリトンサックス奏者レオ・P（Leo Pellegrino）がバンドに加入。彼の影響からか、この頃からファンク色の強い楽曲を演奏する割合が増えることとなる。

転機となったのは2016年。
レオ・Pをフューチャーした動画"Funky Town/I Got You (I Feel Good)"がYouTubeに投稿されると、これが多くの人の注目を集めることとなる。
この動画の再生数は700万回を超え、ラッキー・チョップス（Lucky Chops）関連の動画は軒並み100万再生を突破。演奏の技術はもちろん、そのパフォーマンスも高く評価され、NY市地下鉄から一気に世界中からファンを獲得することとなった。

今回紹介する『エヌワイシー』（NYC）は、ラッキー・チョップス（Lucky Chops）が大ブレイクを果たした2016年にリリースされた待望のデビューアルバム。
収録曲は、動画で話題になったナンバーをスタジオで録音した内容となっている。
注目を集めるきっかけとなった”Funkytown / I Feel Good”はもちろん、他にもアリアナ・グランデの”Problem”、ジャクソン5の”I Want You Back”などファンキーな楽曲が満載。
サム・スミスのカバー”I'm Not the Only One”や、グレン・ミラーの”Moonlight Serenade”も吹奏楽ならではの美しさが堪能できる素晴らしいカバーだ。

また、今作にはトロンボーン奏者ジョッシュ・ホルコム（Josh Holcomb）が作曲したオリジナル曲が3曲含まれている。
哀愁漂うミッドテンポの”Miami”、メロディアスな”Next to You”、レオ・Pのソロが印象的な”Behroozi”など、どの楽曲も気分が高まるものばかり。
編曲に加え、作曲能力も高いバンドであることを証明したと言えるだろう。

国内において、ラッキー・チョップスは「ファンク・バンド」と紹介されていることが多いが、これには少し違和感がある。
今作を聞けば、クラシックやポップの要素が基調となっているのは明白だ。ファンクの要素はあるものの、そこまで強く強調されている訳ではない。
よって、敢えてラッキー・チョップスのスタイルを表現するのであれば、「ブラス・バンド」という方が正しいと、私は思う。ちなみにアメリカ本国でもBrass Bandと明記されている。
どちらにせよ、彼らが素晴らしいバンドであることには変わりはないのだが。

今回紹介した『エヌワイシー』（NYC）は、ラッキー・チョップス（Lucky Chops）のサウンドが存分に堪能できる仕上がりとなっている。
ラッキー・チョップスのファンでなくとも、ポップなサウンドを好む方、また吹奏楽を経験したことのある方にもおすすめの作品と言えるだろう。

NYC - Track Listing

NYC - Credit

ジョッシュ・ホルコム（Josh Holcomb）- トロンボーン
ダロ・ベロージ（Daro Behroozi）- テナーサックス
ラファエル・ブーヨ（Raphael Buyo）- スーザフォン
レオ・P （Leo Pellegrino）- バリトンサックス
ケビン・コングルトン（Kevin Congleton）- ドラム
ジョシュア・ガウェル（Joshua Gawel）- トランペット