ラグタイム界で最も成功した名盤『ピアノ・ラグ』（Piano Rags 1-3）- スコット・ジョプリン（Scott Joplin）

19世紀後半に人気を博していた音楽ジャンル、ラグタイム。
アメリカ中西部に位置するミズーリ州で栄えたとされるこのジャンルは、多くの優れた作曲家を生み出した。
その中でも、最も知名度が高い人物が、アフリカ系アメリカ人のスコット・ジョプリン（Scott Joplin）だ。

1867年にテキサス州で誕生したスコットは、22歳になる頃にミズーリ州セイントルイスへ移住。ピアニストとして酒場や売春宿などで演奏を行いつつ、作曲を行っていた。
注目を浴びるようになったのは1899年、ジョプリンの作曲した『メイプル・リーフ・ラグ 』（Maple Leaf Rag）の楽譜が発売されてからだ。

当時も今と変わらず、「難易度の高い楽譜は、商業的に成功しない」と言われていた。
しかし、高い演奏技術を要するにもかかわらず、"Maple Leaf Rag"は飛ぶように売れ、最終的には100万枚以上のセールスを記録。
これにより、スコット・ジョプリンは作曲家としての地位を獲得することに成功したのだ。

その後もジョプリンは1902年に"The Entertainer"、1906年には"The Ragtime Dance"など、多くの名曲を生み出し、「ラグタイム」というジャンルの発展にも大きく貢献。
亡くなって100年以上経った現在でも、「ラグタイム王」として広く愛されている人物である。

今回紹介する『ピアノ・ラグ』（Piano Rags 1-3）は、そんなスコット・ジョプリンが作曲した楽曲を収集した作品となっている。
ラグタイムと名の付いたアルバムは色々と発売されているが、今作は「ラグタイム界で最も成功したアルバム」といって間違いないだろう。
今作は1970年11月に発売され、約1ヶ月で10万枚を売り上げを記録。その後も再販を重ね、2009年にはラグタイム・アルバムとして異例のトータルセールス100万枚を超えるという快挙を成し遂げた。

今回演奏を行っているのは、ニューヨーク出身のピアニスト、ジョシュア・リフキン（Joshua Rifkin）。
ラグタイムに深い理解があり、現代においてこのジャンルを演奏させたら右に出る者はいない人物だ。
この作品の評価が高い理由のひとつとして、「リフキンの演奏が素晴らしい」ということも挙げられるだろう。

収録されている楽曲は全てスコット・ジョプリンが作曲したものであり、捨て曲は一切ない。
ジョプリンを一躍有名にした"Maple Lead Rag"や、日本でも広く愛されている"The Entertainer"はもちろん収録。他にも"Pine Apple Rag"、"Magnetic Rag"などラグタイムを代表する曲がズラリと並んでいる。

1970年に発売されたこの『ピアノ・ラグ』（Piano Rags）は、レコードによる発売だったため、収録時間の関係で8曲のみだった。
しかし、1990年にCDで再販された今作『ピアノ・ラグ』（Piano Rags 1-3）は、それらを含む全17曲入りとボリュームも満点だ。

ラグタイムという音楽に興味が無くとも楽しめる名盤、それが『ピアノ・ラグ』（Piano Rags 1-3）だ。

Piano Rag 1-3 - Track Listing

Piano Rag 1-3 - Credit

ジョシュア・リフキン（Joshua Rifkin）- ピアノ