7歳でサックスを初め、20歳になる頃にはジャズの帝王マイルス・デイヴィス(Miles Davis)と共演していた天才サックス奏者、ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)。
これまでに数多くの名演や名盤を残しており、伝説のサックスプレイヤーの一人として数えられている。
また、コンポーザーとしての能力が高いことでも有名であり、"St. Thomas"、"Oleo"、"Pent-Up House"、"Doxy"、"Airegin"などはロリンズ作曲によるもの。現在でも世界中で愛されているジャズスタンダードナンバーも生み出しているのだ。
そんな歴史に名を刻んだ彼が広く知られるきっかけとなった作品、それが『サキソフォン・コロッサス』(Saxophone Colossus)である。
当時25歳ながら落ち着いた暖かみのある音を聴かせ、多くのメディアがこの作品を絶賛。アメリカのみならず、世界にソニー・ロリンズの名を知らしめることとなった。
レコーディングが行われたのは、ニュージャージー州にあるルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)のスタジオ。1956年にリリースされた作品だが、音質やバランスが良く、聞く人を選ばないアルバムでもあると思う。
また、後ろを支えるメンバーも非常に豪華である。
ベーシストはジャズ・メッセンジャーズ(Jazz Messengers)でも活躍していたダグ・ワトキンス(Doug Watkins)。ピアノは名盤請負人のトミー・フラナガン(Tommy Flanagan)。そしてドラムでメロディーを奏でる男マックス・ローチ(Max Roach)が参加している。
この三人が、ロリンズの演奏をより良いものにしていることは言うまでもないだろう。
今作はレコードにて発売されているため、収録曲はオリジナル3+カバー2の計5曲と比較的少なめ。しかし、全ての曲が素晴らしいクオリティーを誇り、内容の濃い演奏を楽しむことが出来る。
Saxophone Colossus - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | St. Thomas | Sonny Rollins | 6:49 |
2. | You Don't Know What Love Is | Gene de Paul, Don Raye | 6:30 |
3. | Strode Rode | Sonny Rollins | 5:17 |
4. | Moritat (a.k.a Mack The Knife) | Kurt Weill, Bertolt Brecht | 10:05 |
5. | Blue 7 | Sonny Rollins | 11:17 |
Background & Reception
アルバムのオープニングを飾るのはジャズスタンダード定番中の定番となった"St. Thomas"。このメロディーはロリンズの母親が歌っていたイングランド民謡"The Lincolnshire Poacher"が元となっている。ロリンズもお気に入りの曲で現在でも彼のライブで演奏されることが多い。
カリプソのリズムに乗ったメロディアスなソロを是非ご堪能あれ。
次の”You Don't Know What Love Is”は、1941年にジーン・デ・ポール(Gene de Paul)が作曲した美しいバラード曲。こちらではロリンズの深い暖かみのあるサウンドを楽しむことが出来る。
ムーディーなメロディーが特徴の3曲目"Strode Rode"も、ロリンズによるオリジナルナンバー。ソロ部分のサックス&ベースのスリリングな演奏に注目してほしい。
次の"Moritat"は別名"Mack the Knife"、もしくは"The Ballad of Mack the Knife"とも呼ばれているジャズスタンダード。このメロディーは日本でもCMなどで使われている為、耳にしたことのある方は多いのではないだろうか。オリジナルはクルト・ヴァイル(Kurt Weill)が1928年に作曲したもの。陽気な曲ではあるが、ロリンズが演奏することにより、アダルトな要素が足されているように感じる。
アルバムのラストを飾るのはロリンズのオリジナル曲"Blue 7"。10分越えの大作ながら、聞き手を飽きさせない曲構成になっており、ロリンズの作曲能力の高さがうかがえる。個人的にはいわゆる”バーで流れてそうな音楽”のような印象を受ける。(もちろん良い意味で!)
Conclusion
これまでに60作以上のアルバムに参加している彼だが、今作を最高傑作に挙げる人も多い。それほどまでに隙のない完璧なアルバム、それが『サキソフォン・コロッサス』(Saxophone Colossus)だ。