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ブリットポップの幕開け。1,000万枚以上を売り上げ、イギリスの歴史に名を刻んだ名盤『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)- オアシス(Oasis)

『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)- オアシス(Oasis)

2010年までに7,500万枚以上のトータルセールスを記録し、2018年には「史上最も人気のある100のロックバンド」にも選出されているイギリス・マンチェスター出身のバンド、オアシス(Oasis)。
1991年に結成し、解散する2009年までに7枚のスタジオ・アルバムを残した。
その中で自他ともに認める名盤の一つが、オアシスのデビュー・アルバム『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)だ。

1994年にリリースされた今作は、リリース初週で86,000枚を売り上げ、イギリスの音楽チャートで1位を獲得。当時における「最も早く売れたデビュー・アルバム」の記録を更新した。
全ての曲を作曲したノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)は、この作品を「オアシスにおける最高傑作のひとつ」と評価。
また、ファンからの人気も非常に高く、「ブリットポップを誕生させたアルバム」としても広く知られている。
2014年には20周年記念盤が発売され、ライブ音源などが追加された3枚組のデラックス盤もリリース。
通常版やデラックスエディションの売上を含めると、今作の総売上枚数は1,000万枚を突破している。
今回はオアシス結成からこのブリットポップの名盤が誕生するまでを紹介していこう。

オアシス(Oasis)は、1991年にイギリスのマンチェスターにて結成したバンド。
前身はレイン(Rain)と呼ばれるバンドで、ここにはポール・マクギガン(Paul McGuigan)、ポール・アーサーズ(Paul Arthurs)、トニー・マッキャロル(Tony McCarroll)、クリス・ハットン(Chris Hutton)の4名で構成されていた。

しかし、ボーカルのクリスに満足がいかなかった他の3人は、オーディションを行うことを決意。ここで出会ったリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)をボーカルとして加入させることにした。

リアムは加入してすぐにバンド名を変えることを提案。
それから彼ら4人はレインではなく、オアシス(Oasis)として活動することとなった。
ちなみにこのバンド名は、インスパイラル・カーペッツ (Inspiral Carpets)と呼ばれるロックバンドのツアー・ポスターが由来となっている。(このポスターにライブ会場の一つとして、オアシス・レジャー・センターが記載されていた)

オアシスが初めてのライブを行ったのは、1991年8月18日。
マンチェスターにあるボードウォーク(Boardwalk)でのライブだった。
このライブを見に来ていたリアムの兄、ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)とノエルの友人達のオアシスに対する評価は高くはなかった。
しかし、ノエルは彼らに可能性を感じ、「自分がリーダー兼作曲者として加入すること」を条件にバンドへアプローチ。
ポール・アーサーズは当時の様子を以下のように語っている。

「ノエルは加入した時点で沢山の曲を書いていた。俺達は4つぐらいしかオリジナル曲がなかったんだけど、ノエルが加入してからあっという間にオリジナルチューンが増えたんだ。」

ノエルがバンドに加わったことにより、バンドはシンプルな楽曲を多く生み出した。
しかし、当初は「バレーコード」と「ルート弾き」が増えたことに、ギタリストのポールとベーシストのマクギガンは不満を抱いていたそうだ。
それでもオアシスはノエルの楽曲を中心にライブ活動を行いながら、デモテープ『ライブ・デモンストレーション』(Live Demonstration)を作成するなど、精力的に活動を続けていった。

オアシスがブレイクを果たすきっかけとなったのは、1993年5月にグラスゴーで行ったライブである。
この会場にいたクリエーション・レコード(Creation Records)のアラン・マギー(Alan McGee)はオアシスのライブに感銘を受け、彼らに契約を持ちかける。
様々な問題が発生し、契約成立までには7ヶ月ほど時間が掛かったものの、オアシスは無事にレコーディング契約を結ぶことに成功。
ここから1stアルバムの制作が進むことになる。

1994年、オアシスはファースト・シングル”Supersonic”のプロモーションを兼ねたUKツアーを開催。
同年4月にリリースされたこのシングルは、UKシングルチャートにて31位を獲得し、まずまずの成功を収めることとなった。
その後、オアシスは続けて”Shakermaker””Live Forever”をリリースし、どちらも高い評価を獲得。
特に”Live Forever”はバンド初の音楽チャート・トップ10入りを果たす結果となった。

そして1994年8月29日、オアシスは遂にデビュー・アルバム『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)をリリース。
初週で86,000枚を売り上げた本作は、イギリスのアルバム・チャートで1位を獲得。
当時における「最も早く売れたデビュー・アルバム」の記録を更新し、オアシスの名を一気に全英に轟かせることとなった。
ここからは名盤『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)に収録された楽曲達を紹介していこう。

Definitely Maybe - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Rock 'n' Roll StarNoel Gallagher5:23
2.ShakermakerNoel Gallagher5:08
3.Live ForeverNoel Gallagher4:36
4.Up in the SkyNoel Gallagher4:28
5.ColumbiaNoel Gallagher6:17
6.SupersonicNoel Gallagher4:43
7.Bring It on DownNoel Gallagher4:17
8.Cigarettes & AlcoholNoel Gallagher4:49
9.Digsy's DinnerNoel Gallagher2:32
10.Slide AwayNoel Gallagher6:32
11.Married with ChildrenNoel Gallagher3:15

Background & Reception

アルバムのオープニングを飾るのは、「ブリットポップの幕開け」を感じさせる"Rock 'n' Roll Star"。アップテンポでノリも良く、ライブでも頻繁に演奏されていた人気のナンバーだ。
作曲者のノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)曰く、「俺の言いたいことは"Rock 'n' Roll Star"、"Live Forever"、"Cigarettes & Alcohol"の3曲に要約してある」と語っている。

2ndシングルとしてリリースされた"Shakermaker"は、ブルース進行を基調としたロックチューン。1970年代にイギリスで流行したフィギュアを作るおもちゃ『Shaker Maker』が曲のタイトルとして使用されたようだ。
実はオアシスはこの曲が原因でコカ・コーラから訴えられ、賠償金50万ドルを支払っている。
訴訟内容は「曲のAメロがコカ・コーラのCMソング"I'd Like to Teach the World to Sing"と酷似しているから」だったらしい。

3曲目"Live Forever"はバンド初のトップ10入りを果たした、アルバムを代表するナンバー。
この曲が完成したのは1991年、ノエルがまだ地元マンチェスターの建設会社で働いていたときだ。

当時ノエルは肉体労働に従事していたが、仕事中にパイプで足を骨折する怪我を負ってしまう。
幸か不幸か、その後は倉庫内での仕事を割り当てられるようになり、作曲をする時間が増えることになった。
ある夜、ノエルはザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)のアルバム『メイン・ストリートのならず者』(Exile on Main St.)を聞きながら、それを自分独自のコード進行で演奏していた。その際にオリジナルのコード進行とメロディーを思い付き、"Live Forever"が完成。
この曲について、ノエルは「"Shine a Light"からインスパイアされたナンバー」と語っている。
また、タイトルの"Live Forever"はアメリカのバンド、ニルヴァーナ(Nirvana)に反論する意味も込めて付けられたもののようだ。※以下ノエルのインタビューより

「この曲を書いたときは、グランジ全盛期だった。確か、ニルヴァーナが”I Hate Myself and Want to Die”って曲をリリースした時だと思う。俺はこの曲のタイトルや内容を”受け入れられない”って思ったね。”自分が嫌いで、死にたい”なんて歌が好きな人達も受け入れられない。子供達はこんなナンセンスな曲を聞く必要はないよ。」

"Supersonic"は、哀愁漂うメロディアスな楽曲。
シングルとしてもリリースされ、プラチナ・ディスクを獲得した名曲だ。
録音場所はリバプールにあるピンク・ミュージアム・スタジオ(Pink Museum studio)。

元々は"Bring It On Down"を録音するため、このスタジオを訪れていたオアシス。
ウォームアップでジャムをしていると、ノエルがその場で思いついたメロディーを鼻歌で歌い始める。これをメンバーのボーンヘッドとマッキャロルに聞かせながら、徐々に曲を構成。この作業は"Bring It On Down"のレコーディング開始直前まで行われたようだ。

時間になり、オアシスは"Bring It On Down"の録音を始めた。しかし思ったような演奏ができず、レコーディングを一時中断。ノエルを除くメンバーは食事を取るため、スタジオを後にした。

その間ノエルはスタジオに残り、ジャムで行った曲のリフとメロディーをブラシュアップ。
そしてメンバーが食事から戻る前には、全ての部分を完成させてしまい、"Supersonic"が誕生した。

結局この日は"Bring It On Down"のレコーディングは行わず、新しく生まれた"Supersonic"を録音したそうだ。
ちなみにサッカーのアルゼンチン代表であるリオネル・メッシ(Lionel Messi)も”Live Forever”と”Supersonic”を「僕にとっての最高傑作」と語っている。

4枚目にシングルとしてリリースされ、全英チャートで7位を記録したのが8曲目”Cigarettes & Alcohol”。 階級社会のイギリスにおいて、労働階級出身者の鼓舞する内容の歌詞は、多くの共感を集めた。
またこの曲も"Shakermaker"と同じく、剽窃の疑いで訴えられている。

その内容は、「メインリフがT・レックス(T. Rex)の”Get It on”と酷似している」というものだった。
しかし、”Get It on”自体もチャック・ベリー(Chuck Berry)の”Little Queenie”から引用されたフレーズの為、こちらは大きな問題にはならなかったようだ。

Definitely Maybe - Credit

リアム・ギャラガー(Liam Gallagher)- ボーカル、タンバリン
ノエル・ギャラガー(Noel Gallagher)- リードギター、リズムギター、アコースティックギター、バックボーカル、ベース、ピアノ
ポール・”ボーンヘッド”・アーサーズ(Paul "Bonehead" Arthurs)- リズムギター、アコースティックギター、ピアノ
ポール・マッギーガン(Paul McGuigan)- ベース
トニー・マッキャロル(Tony McCarroll)- ドラム

Conclusion

ブリットポップの幕開けを告げるオアシス(Oasis)のデビュー作『ディフィニトリー・メイビー』(Definitely Maybe)
UKロック好きはもちろん、「ロックンロール」を愛する方にもおすすめの一枚だ。

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