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歴史に残る名曲"Piano Man"が収録されたセカンド・アルバム『ピアノ・マン』(Piano Man)- ビリー・ジョエル(Billy Joel)

セカンド・アルバム『ピアノ・マン』(Piano Man)- ビリー・ジョエル(Billy Joel)

ビリー・ジョエル(Billy Joel)は、ニューヨーク州出身のシンガー兼ピアニスト。
これまでに"Just the Way You Are"、"New York State of Mind"、”The Stranger”など数多くの名曲を生み出しており、グラミー賞を10回以上にわたり獲得。全世界でのセールス枚数は1億5000万枚以上を超え、「アメリカで史上最も売れた音楽アーティスト」では6位にランクインしているレジェンド的存在である。

今回紹介する『ピアノ・マン』(Piano Man)は、ビリー・ジョエルが1973年にリリースした2ndアルバムだ。

ビリーは本作の2年前にファミリー・プロダクションと契約し、デビュー・アルバム『コールド・スプリング・ハーバー』(Cold Spring Harbor)を発表。
しかし、このデビュー作は僅かに早送りされた状態でミックスが行われ、ビリーの思惑とは異なる状態でリリースされてしまった。
またレコ発ツアーでは、その途中で契約上のトラブルが発生し、全てのライブを終える前にツアー自体が中止。
ビリーにとって、1971年は不運が続く年となった。
(ちなみにこの1stアルバムは日本でも『ビリー・ジョエル・ファースト』というタイトルでリリースされたが、商業的に成功せず、すぐに製造が中止されている。)

転機が訪れたのは、1972年。
コロンビア・レコードのハーブ・ゴードン(Herb Gordon)が、ラジオから流れてきた"Captain Jack"を気に入り、ビリーに接触。
彼を自社に紹介し、ビリーはコロンビア・レコードと契約を結ぶこととなった。
その後、ビリーはカリフォルニア州にあるロスアンゼルスへ移住。ピアノの弾き語りを行いながら、曲を書き続けた。ちなみにこの頃は「ビリー・マーティン」という芸名を使っていたらしい。

そしてその翌年となる1973年、ビリーは2枚目のアルバム『ピアノ・マン』(Piano Man)を発表。
コロンビア・レコードも全面的にプロモーションを行い、ビルボード誌では27位を獲得。国外でもギリシャ、オーストラリア、カナダなどで音楽チャート上位をランクインし、売り上げ枚数は400万枚を突破している。

Piano Man - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Travelin' PrayerBilly Joel4:16
2.Piano ManBilly Joel5:37
3.Ain't No CrimeBilly Joel3:20
4.You're My HomeBilly Joel3:14
5.The Ballad of Billy the KidBilly Joel5:35
6.Worse Comes to WorstBilly Joel3:28
7.Stop in NevadaBilly Joel3:40
8.If I Only Had the Words (To Tell You)Billy Joel3:35
9.Somewhere Along the LineBilly Joel3:17
10.Captain JackBilly Joel7:15

Background & Reception

1曲目を飾るのは、カントリーの要素を含んだ"Travelin' Prayer"
この曲の注目はエリック・ワイズバーグ(Eric Weissberg)のバンジョー、ビリー・アームストロング(Billy Armstrong)のバイオリン、そしてビリーのピアノのサウンド。
アップテンポでスリリングな彼らの演奏には、心躍らずにはいられない。
1973年にバンジョー奏者アール・ユージン(Earl Eugene)、1999年には歌手ドリー・パートン(Dolly Parton)にもカバーされている人気のナンバーだ。

2曲目"Piano Man"は今作のみならず、「ビリー・ジョエル」を代表する楽曲と呼んでよいだろう。
ビリーがロスアンゼルスのラウンジで演奏している時代に作曲したナンバーであり、歌詞に登場するのは全て実在する人物。
イントロ、ハーモニカのリフ、ソロ、メロディーラインなど、素晴らしいところを挙げれば切りがないが、意外にもリリース当初は大きな話題にならなかったようだ。
知名度が上がったのは、現在までに1,000万枚を売り上げている5thアルバム『ストレンジャー』(The Stranger)がリリースされてから。
この作品でビリーは一躍世界に名の知れたシンガーとなり、名曲"Piano Man"も高い注目が集まることとなった。
数多くの名曲を生み出してきたビリーだが、その中でも"Piano Man"「ビリー・ジョエルの最高傑作」だと思う。
死ぬ前に必ず聞いていただきたい、まさに歴史に残る名曲だ。

ドラマチックな構成の曲が、西部劇の英雄ビリー・ザ・キッド(BIlly the Kid)のことを歌った"The Ballad of Billy the Kid"
ビリーと同じ名のキッドは、僅か21歳でこの世を去っている。
ジョエルは彼の短く孤独な生涯をこの楽曲で表現しており、"The Ballad of Billy the Kid"は短編映画のような楽曲とも言えるだろう。

一転して、"Worse Comes to Worst"はシンプルで明るい"ビリー・ジョエル"らしいナンバー。
楽曲のスパイスとなっているアコーディオンは、マイケル・オマーティアン(Michael Omartian)によるもの。
音楽評論家のケン・ビーレン(Ken Bielen)は"Worse Comes to Worst"を「カントリー・ロック・ゴスペルの要素を持つ楽曲」と表現している。

アルバムのラストを飾るのは、コロンビア・レコードと契約するきっかけとなった"Captain Jack"
どことなく哀愁漂う、メロディアスなナンバーである。

ビリーがこの楽曲を書き上げたのは、1971年。
彼がニューヨーク州南東部に位置するロング・アイランド島のホテルに滞在しているときだ。
ホテルで作曲を行っていたビリーは、キャプテン・ジャックと呼ばれる密売人が、子供達にヘロインを売っている姿を窓から眺めていた。
この曲を作曲した理由について、ビリーは以下のように語っている。

「"Captain Jack"はニューヨークの郊外で起きたことを歌にしているけど、こういったことはアメリカのどこの州でも起こっていることなんだ。この歌は少し冷酷だけど、彼らの注意を向けるには冷酷さも必要だと思う。」

また、ビリーは"Captain Jack"がドラッグを推奨している曲だと批判された際、以下のように反論している。

「この歌詞に登場しているのは、僕が思う哀れな人生を送っている男性だ。この歌はドラッグやマスタベーションを促進している訳じゃない。よく歌を聞いてくれ。この男は負け犬だよ。」

Piano Man - Credit

ビリー・ジョエル(Billy Joel)- ピアノ、オルガン、エレキピアノ、ハーモニカ、ボーカル
マイケル・オマーティアン(Michael Omartian)- アコーディオン、アレンジ(Tracks 1-4, 6-10)
ジミー・ハスケル(Jimmie Haskell)- アレンジ(Track 5)
リチャード・ベネット(Richard Bennett)- ギター
ラリー・カールトン(Larry Carlton)- ギター
ディーン・パークス(Dean Parks)- ギター
エリック・ワイズバーグ(Eric Weissberg)- バンジョー、ペダルスチールギター
フレッド・ハイルブラン(Fred Heilbrun)- バンジョー
ウィルトン・フェルダー(Wilton Felder)- ベース
エモリー・ゴーディ・ジュニア(Emory Gordy Jr.)- ベース
ロン・タット(Ron Tutt)- ドラム(Tracks 1-9)
リーヌ・クラーク(Rhys Clark)- ドラム(Track 10)
ビリー・アームストロング(Billy Armstrong)- バイオリン
ローラ・クリーマー(Laura Creamer)- バックボーカル
マーク・クリーマー(Mark Creamer)- バックボーカル
スーザン・スチュワード(Susan Steward)- バックボーカル

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