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古き良きジャズを想わせる、スウィンギーな名盤『ダウン・ホーム』(Down Home)- ズート・シムズ(Zoot Sims)

「ダウン・ホーム」(Down Home)- ズート・シムズ(Zoot Sims)

18歳からプロとして活動を始め、ベニー・グッドマン楽団、バディ・リッチ楽団など著名なビッグ・バンドを渡り歩いたズート・シムズ(Zoot Sims)
1947年からは第2期ウディ・ハーマン楽団に籍を置き、スタン・ゲッツ(Stan Getz)らと共にフォー・ブラザーズの一員として数多くの名演を残した。
1950年以降はソロとしての活動を中心に行い、『イン・パリ』(In Paris)、『ズート・シムズ・カルテット』(Zoot Sims Quartet)など数多くの作品をこの世に残している。
今回紹介するのは、そんなズート・シムズが1960年にベツレヘム・レコード(Bethlehem Records)からリリースした『ダウン・ホーム』(Down Home)

彼の作品は"外れ"が無いことで有名だが、その中でも今作は「ズートが生んだ、テナーサックスの名盤」として広く愛されているアルバムだ。
アメリカの音楽業界誌ビルボードは『ダウン・ホーム』(Down Home)を以下のように評価している。

「ズートにしては珍しくオールディーズな楽曲が並んでおり、彼の即興演奏をそれらに当てはめている。完璧なジャズのジュークボックスであり、ズートのスウィング力を堪能するのに最適な作品と言えるだろう。」

また、音楽評論家のスコット・ヤナウ(Scott Yanow)は、本作を「一貫してスウィングを楽しむことができ、若き日のデイブ・マッケンナ(Dave McKenna)のプレイも堪能できるアルバム」と評価。
ペンギン・ガイド・ジャズ (The Penguin Guide to Jazz)でも本作に星4つを与えるなど、各方面から高い評価を獲得している。

そんな『ダウン・ホーム』(Down Home)の特徴は、収録曲の全てがミドル~アップテンポの楽曲で構成されていること。
収録されている8曲全てがスウィング感に溢れており、「古き良き時代のジャズ音楽」が体現されたアルバムなのだ。
「ザ・ジャズ・ミュージック」と呼べる本作は、ジャズ初心者や昔ながらのジャズを聴きたい方にはうってつけの作品と言えるだろう。
また、テナーサックス独特のフレーズやタイム感が詰め込まれているため、テナーサックスを嗜む方にとっては参考になること間違いなしだ。

ズートをサポートする面々も、豪華なミュージシャンが揃っている。

ピアニストは「スリー・ハンド・スウィング」と称された独自の手法でプレイするデイブ・マッケンナ(Dave McKenna)。
ベースを演奏しているのは、短い生涯の中でも数多くの名演を残したジョージ・タッカー(George Tucker)。
そしてドラムには、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)のドラマーとして有名なダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)が選ばれている。
3名共にスウィング感溢れる演奏を得意とするミュージシャン達だ。

さて、ここからは名盤『ダウン・ホーム』(Down Home)の収録曲について説明していこう。

Down Home - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Jive at FiveCount Basie, Harry Edison5:18
2.Doggin' AroundLena Agree4:39
3.AvalonAl Jolson, Buddy DeSylva, Vincent Rose4:29
4.I Cried for YouGus Arnheim, Abe Lyman6:50
5.Bill BaileyHughie Cannon5:17
6.Goodnight, SweetheartRay Noble, Jimmy Campbell, Reg Connelly4:22
7.There'll Be Some Changes MadeBenton Overstreet, Billy Higgins5:24
8.I've Heard That Blues BeforeZoot Sims5:26

Background & Reception

アルバムのオープニングを飾るのは、ジョージ・タッカー(George Tucker)のベースから始まる"Jive at Five"
作曲はカウント・ベイシー(Count Basie)、ハリー・“スウィーツ”・エディソン(Harry "Sweets" Edison)の両名でビッグバンド編成で演奏されることの多い楽曲だ。
4名の奏者が力強くスウィングする、シンプルなコード進行のナンバー。

2曲目"Doggin' Around"は、エドガー・バトル(Edgar Battle)、レイ・エバンズ(Ray Evans)が生んだジャズ・チューン。
アップテンポで演奏されており、メンバーそれぞれのインプロビゼーションが強調された楽曲だ。
四分音符を基調としたベースソロにも注目。

ボビー・デシィルヴァ(Buddy DeSylva)、アル・ジョルソン(Al Jolson)、ヴィンセント・ローズ(Vincent Rose)が1920年に作曲した"Avalon"は、3曲目に収録。
元々メロディーが素晴らしい楽曲だが、ズートが演奏することにより更に深みのあるジャズ・ナンバーへと昇華している。
こちらもアップテンポで演奏されており、ダニー・リッチモンドのタイトでスリリングなドラミングが心地よい。

4曲目"I Cried for You"は、ジャズ・ミュージックを体現したようなスウィング感に満ち溢れたナンバー。
1923年に誕生しており、ガス・アルンハイム(Gus Arnheim)、アーサー・フリード(Arthur Freed)、エイブ・ライマン(Abe Lyman)によって作詞作曲が行われている。
古き良きジャズを求めている方に是非お勧めしたい楽曲だ。

ヒューイ・キャノン(Hughie Cannon)が作曲した"Bill Bailey"は、5曲目に収録。
1902年に誕生した、非常に歴史のある楽曲だ。
ここでもズートを含む4名は安定した演奏を行っており、昔ながらのジャズ・ミュージックを体現している。

6曲目"Goodnight, Sweetheart"は、1931年に誕生し、英国でポピュラーソングとして愛されていたチューン。
ジミー・キャンベル(Jimmy Campbell)、レジナルド・コーネリー(Reginald Connelly)、レイ・ノーブル(Ray Noble)によって作詞作曲が行われている。
ズートの歌心溢れるテーマ、アドリブが楽しめる楽曲だ。
ちなみにサラ・ヴォーン(Sarah Vaughan)やディーン・マーティン(Dean Martin)もこのナンバーをカバーしている。

1921年に作曲され、アメリカでポピュラーソングとして愛されていた"There'll Be Some Changes Made"は、7曲目に収録。
ジャズ・ミュージックとしても広く愛されており、この曲のコード進行は2018年までに404回もレコーディングされたと言われている。(ザ・ジャズ・ディスコグラフィー調べ)
ズートはここでも深みのあるサウンドを聞かせており、安定した演奏を見せつけている。

アルバムのラストを飾るのは、ズート・シムズが作曲した"I've Heard That Blues Before"
今作では唯一のブルース曲で、4名共に自由に音楽を楽しんでいる楽曲だ。
ダニー・リッチモンドの多彩なドラミングが素晴らしく、ドラマーには是非ご視聴いただきたいナンバー。

Down Home - Credit

ズート・シムズ(Zoot Sims)- テナーサックス
デイブ・マッケンナ(Dave McKenna)- ピアノ
ジョージ・タッカー(George Tucker)- ベース
ダニー・リッチモンド(Dannie Richmond)- ドラム

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