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名曲"I Got Rhythm"を収録したジャズ・アルバム『キスィズ・イン・ザ・レイン』(Kisses in the Rain)- ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)

『キスィズ・イン・ザ・レイン』(Kisses in the Rain)- ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)

リズムギタリストとして名を馳せたバッキー・ピザレリ(Bucky Pizzarelli)を父に持つジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)。
父と同じくストレート・アヘッドなジャズを好み、ギタリスト兼ボーカリストとしてこの世に数多くの名盤を送り出している偉大なミュージシャンの一人だ。
リーダーとして実に25枚以上のアルバムをリリースしているジョンだが、今回は彼が2000年にリリースした『キスィズ・イン・ザ・レイン』(Kisses in the Rain)を紹介しよう。

『キスィズ・イン・ザ・レイン』(Kisses in the Rain)は、ジョン・ピザレリが14枚目のアルバムとしてリリースしたアルバム。
ジョンが発表するアルバムの特徴として、歌モノを中心にバラード、ミドル~アップテンポのナンバーがバランスよく並んでいることが多い。
今作も心安らぐバラード曲や、ご機嫌なスウィング感溢れる楽曲が詰まっており、聴く人を選ばない素晴らしいジャズ・アルバムと言えるだろう。

著者が今作の特徴として挙げたいのは、「ジョン・ピザレリの十八番である"I Got Rhythm"が収録されている」というところだ。

ジョンはライブでこそ"I Got Rhythm"を好んで演奏するものの、アルバムとして収録されたのは本アルバムが初。それだけでも、今作を購入する価値があるというものだ。
ジョン・ピザレリとジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)の書いたこの名曲は、非常に相性が良い。
ジョンはスピード感溢れる演奏を得意としており、バラード、もしくは明るいナンバーを選ぶことがほとんどだ。
元々が明るくアップテンポな楽曲の"I Got Rhythm"は、ジョンの”陽気”で”軽快”な部分を表現するのにピッタリの楽曲と言えるだろう。

またこの曲の「リズムチェンジ」と呼ばれるコード進行も、ジョンが得意とする形の一つであることも忘れてはならない。
「リズムチェンジ」の楽曲は速いテンポで演奏されることが多く、本アルバムのバージョンも非常にアップテンポなリズムで演奏されている。
しかし、ジョンはこのスピードにも負けることなく、歌心溢れるソロとそれとユニゾンするスキャットまで披露。これはまさに、歌もギターも一流のジョン・ピザレリならではの芸当だ。

もちろん、この楽曲意外にも素晴らしい収録曲達がズラリと並んでいる。

アップテンポな”From Monday On”がOPを飾り、2曲目にはナット・キング・コールも愛した”When I Take My Sugar to Tea”を収録。
父であるバッキー・ピザレリも好んで演奏した”Don't Be That Way”や、ギターとボーカルのみで演奏する”I Thought About You”も、心温まる名演だ。
タイトル・ナンバーの”Kisses in the Rain”は、ジョンにしては珍しくマイナー調の渋いオリジナル・ボーカル曲。
他にもライブでよく演奏されるスウィンギーな”Baby Just Come Home to Me”、オスカー・ピーターソンに捧げられた”Oscar Night”など、聴きどころ満点の楽曲達ばかり。

ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)の入門編としても最適なアルバム『キスィズ・イン・ザ・レイン』(Kisses in the Rain)

聴きやすいジャズ・アルバムでもあるため、ジャズ初心者にも是非おすすめしたい作品だ。

Kisses in the Rain - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.From Monday OnBing Crosby, Harry Barris3:22
2.When I Take My Sugar to TeaIrving Kahal, Sammy Fain, Pierre Norman Connor3:52
3.I'm In the Mood for LoveDorothy Fields, Jimmy McHugh4:06
4.I Can't Get Up the NerveBennie Benjamin, George Weiss2:42
5.I Got RhythmIra Gershwin, George Gershwin3:45
6.When Lights Are LowBenny Carter, Spencer Williams3:39
7.I Thought About YouJohnny Mercer, Jimmy Van Heusen2:34
8.Should I?Arthur Freed, Nacio Herb Brown3:10
9.Don't Be That WayMitchell Parish, Edgar Sampson, Benny Goodman4:02
10.I Could Have Told You SoJimmy Van Heusen, Carl Sigman4:11
11.Kisses in the RainJohn Pizzarelli3:36
12.Oscar NightRay Kennedy4:26
13.Polka Dots and MoonbeamsJohnny Burke, Jimmy Van Heusen3:56
14.Baby Just Come Home to MeJohn Pizzarelli2:33
15.A Lifetime or TwoJessica Molaskey, John Pizzarelli2:31
16.I Wouldn't Trade YouJessica Molaskey, John Pizzarelli2:16

Kisses in the Rain - Credit

ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)- ボーカル、ギター
レイ・ケネディ(Ray Kennedy)- ピアノ
マーティン・ピザレリ(Martin Pizzarelli)- ベース

ジョン・ピザレリ(John Pizzarelli)氏のコメント

「ライブ感のあるアルバムを作ろう!」と思ってみても、実際にそういった作品を生み出すのは難しい。
カーネギーホールやお気に入りのクラブでのライブを思い浮かべながら録音しても、舞台での緊張感や期待感を生み出すのは大変なことなんだ。
しかし、このアルバムにはライブに必要な「成分」を存分に詰め込むことが出来たと思う。
それはプロデューサーのロバート・ウッド(Robert Wood)、エンジニアのロバート・フリードリヒ(Robert Friedrich)、僕とトリオを組んでくれたレイ・ケネディ(Ray Kennedy)とマーティン・ピザレリ(Martin Pizzarelli)、そしてこの作品を作るのには協力してくれたみんなの支えがあったからこそだ。

レコーディング・スタジオはすごく狭くて、レイは僕の左肩にぶつかりそうなぐらい近い位置でピアノを弾いていたね。(笑) マーティンは僕の右側でベースを演奏していた。

録音ではヘッドホンを使用することが多いけど、3人が近い距離にいたから今回は必要なかった。「リビング・ルームでのジャムセッション」ってぐらいにリラックスした雰囲気で演奏することができた。
僕達3人はもう7年以上一緒にプレイを共にしているけど、レコーディングしていない曲もあったから今回はそういったナンバーも収録しているよ。所謂「ライブ感」もしっかりと含まれた作品に仕上がったと思う。

1曲目の“From Monday On”は、ビング・クロスビー(Bing Crosby)が作曲したナンバー。僕の父バッキー・ピザレリ(Bucky Pizzarelli)が影響を受けたジョー・ムーニー・カルテット(Joe Mooney Quartet)が好んでプレイした楽曲でもあるね。

“I’m in the Mood for Love”は、ニューヨークマガジンが僕のアレンジを「チェット・ベイカーとアルファルファと混ぜたような歌声だ」と表現してからよく演奏するようになった。

“I Thought About You”は、1997年にブロードウェイ・ミュージカル『ドリーム』(Dream)でオープニング・アクトの時に演奏をした思い出の曲なんだ。

オリジナルに関しては、僕達お気に入りの”昔ながらのジャズ・スタンダート”のグルーブ感を意識して作っていることが多いね。
“I Wouldn’t Trade You”、”A Lifetime or Two”は僕の奥さんであるジェシカ・モラスキー(Jessica Molaskey)と一緒に作曲を行った。

“Baby Just Come Home to Me”は”Bye Bye Blues”と”Lover Come Back to Me”を組み合わせた僕オリジナルのリズム・チューンだ。

“Oscar Night”は、レイ・ケネディが僕達のヒーローであるオスカー・ピーターソンに向けて書いた楽曲さ。

タイトル・ナンバーの“Kisses in the Rain”は、僕が作曲したマイナー調のバラードナンバーだよ。

そういった様々な楽曲達が素晴らしい状態で音源化されている。
レイのハード-ドライビングなピアノ、マーティンのロックでソリッドなベースラインにも是非注目してほしいね。
このアルバムが、いつも僕達のライブを楽しんで聞いてくれる人達に届き、いつものように楽しんでくれるといいな。

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