『ロックス』(Rocks)は、アメリカのロック・バンドであるエアロスミス(Aerosmith)が1976年にリリースしたアルバムである。
1971年にボーカルのスティーヴン・タイラー(Steven Tyler)、ギタリストのジョー・ペリー(Joe Perry)を中心に結成したエアロスミス。
2年後にはデビュー・アルバム『野獣生誕』(Aerosmith)を発表し、シングル”Dream On”がチャート上位を獲得する。
これにより徐々に世間に知られるバンドとなり、1974年には2ndアルバム『飛べ!エアロスミス』(Get Your Wings)、その翌年には『闇夜のヘヴィ・ロック』(Toys in the Attic)をリリース。特に3rdアルバムは”Walk This Way”、”Sweet Emotion”などの名曲を多く含んでおり、エアロスミスが第一次黄金期に入るきっかけを作った名盤でもあった。
そしてその1年後、エアロスミスは4thアルバム『ロックス』(Rocks)を発表。
本アルバムは、初期のエアロスミス、即ち1970年代の彼らを語るにおいて欠かせない名盤である。
レコーディングが行われたのは、マサチューセッツ州にあるウェアハウス・スタジオ。1976年2月から開始し、僅か1ヶ月ほどで録音を完了させたというから驚きだ。
エアロスミスの楽曲は、ボーカルのスティーヴン・タイラー、もしくはギタリストのジョー・ペリーの作曲によるものが殆どであるが、今作は違う。セカンド・ギタリストのブラッド・ウィットフォード、そしてベースのトム・ハミルトンも楽曲製作に加わっているのだ。
ブラッドは1997年に出版された『WALK THIS WAY – エアロスミス自伝』にて、当時の様子を以下のように語っている。
「俺達はニューヨークにあるスタジオに籠って曲作りをしていた。その時はバンドも売れて贅沢な暮らしをしてたから、アルバムを作ることだけに集中することが出来たね。俺が”Last Child”と”Nobody's Fault”のイントロを持ってきたり、ベースのトムが"Rats in the Cellar"や"Sick as a Dog"のアイデアを披露したりしてたな。」
また、プロデューサーのジャック・ダグラス(Jack Douglas)はこの時の様子を以下のように語っている。
「ロックス(Rocks)は、トムとブラッドが多くのインプットを詰め込んだアルバムだ。これはエアロスミスにとって、大きな出来事なんだよ。うるさくてハードなロックン・ロールであり、”エアロスミスとはどんなバンドか”が表現されている。」
結果、エアロスミスの”純粋なバンド・サウンド”が詰め込まれた『ロックス』(Rocks)は、ビルボード・チャートで3位を獲得。シングル曲の"Last Child"、"Back in the Saddle"、"Home Tonight"もチャート上位にランクインし、1970年代にエアロスミスが発表したアルバムの中で、最も商業的に成功を収めた作品となった。
現在までの売上枚数はアメリカ国内のみで400万枚を突破しており、ローリング・ストーン誌が行った『オールタイム・ベストアルバム500』でも176位にランクインしている。
また、多くのミュージシャンが『ロックス』(Rocks)をお気に入りのアルバムに挙げていることも特筆すべき点だろう。簡単にではあるが、以下の通り紹介することとする。
・ニルヴァーナ(Nirvana)のボーカル兼ギタリスト、カート・コバーン(Kurt Cobain)は、今作をお気に入りのアルバムの一枚として紹介している
・モトリー・クルー(Mötley Crüe)のニッキー・シックス(Nikki Sixx)は、『ロックス』(Rocks)をお気に入りの一枚に挙げている
・メタリカ(Metallica)のボーカル兼ギタリスト、ジェイムズ・ヘットフィールド(James Hetfield)はエアロスミス、そして本アルバムが「ギターを学びたいと思ったきっかけ」と語っている
・ガンズ・アンド・ローゼズ(Guns N' Roses)のギタリスト、スラッシュ(Slash)は『ロックス』(Rocks)に大きな影響を受けており、「人生を変えたアルバム」と語っている。(以下スラッシュのコメント)
「俺がまだ13歳の頃、即ち1978年はチープ・トリック(Cheap Trick)やカーズ(The Cars)が流行っていたと思う。それはどうでもいいんだけど、その時に俺は好きな女の子がいたんだ。その子の前では精一杯かっこつけて、やっと彼女のアパートにいけることになった。そこで彼女が『ロックス』(Rocks)を流したんだけど、それに俺は魅了されちまったのさ。最高のハード・ロック・レコードだとすぐに分かったよ。その時は音楽に集中しすぎて、彼女のことは全く忘れちゃってさ、エアロスミスに夢中だった。このアルバムは、俺の音楽スタイルを形成した一枚と言えるだろうね。」
Rocks - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Back in the Saddle | Steven Tyler, Joe Perry | 4:40 |
2. | Last Child | Steven Tyler, Brad Whitford | 3:26 |
3. | Rats in the Cellar | Steven Tyler, Joe Perry | 4:05 |
4. | Combination | Joe Perry | 3:39 |
5. | Sick as a Dog | Steven Tyler, Tom Hamilton | 4:16 |
6. | Nobody's Fault | Steven Tyler, Brad Whitford | 4:21 |
7. | Get the Lead Out | Steven Tyler, Joe Perry | 3:41 |
8. | Lick and a Promise | Steven Tyler, Joe Perry | 3:05 |
9. | Home Tonight | Steven Tyler | 3:15 |
Rocks - Credit
スティーヴン・タイラー(Steven Tyler)- ボーカル、キーボード、ハーモニカ、ベース(Track 5)
ジョー・ペリー(Joe Perry)- ギター、6弦ベース(Track 1)、ベース(Track 5)、ペダルスチールギター(Track 9)、パーカッション(Track 5)、バックボーカル(Track 4)
ブラッド・ウィットフォード(Bradley Ernest Whitford)- リードギター(Tracks 1, 2, 5, 6, 9)、リズムギター
トーマス・ハミルトン(Thomas Hamilton)- ベース(Track 5)
ジョーイ・クレイマー(Joseph Michael Kramer)- ドラム、パーカッション、バックボーカル(Track 9)