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1970年代フュージョン・ブームにおいて、重要な役割を果たした名盤『キャプテンズ・ジャーニー』(The Captain's Journey)- リー・リトナー(Lee Ritenour)

『キャプテンズ・ジャーニー』(The Captain's Journey)- リー・リトナー(Lee Ritenour)

16歳でプロとしてのキャリアを歩み始め、数多くの名演・名曲を生み出し続けているギタリスト、リー・リトナー(Lee Ritenour)。

ソロ活動を始めたのは1970年半ばで、1976年にはファースト・アルバム『ファースト・コース』(First Course)、その翌年にはセカンド・アルバム『キャプテン・フィンガーズ』(Captain Fingers)をリリースしている。
(1977年にはリー・リトナー&ジェントル・ソウツ名義にて『ジェントル・ソウツ』(Gentle Thoughts)も発表)
特に2ndアルバムの評価は高く、ビルボードチャートでは自身初の200位以内を獲得。現在でも「フュージョン史に残る名盤のひとつ」として数えられている。
今回紹介する『キャプテンズ・ジャーニー』(The Captain's Journey)は、そんな2作目の延長線上にあるアルバムと言えるだろう。

1978年にリリースされた今作は、”フィージョン”というジャンルながら、多くの人にとって聴きやすいアルバムに仕上がっている。
難解で複雑な曲構成ではなく、ほとんどの曲はメロディー重視の明るい楽曲ばかり。当時を知る人間ならば、1970年代の雰囲気を存分に感じるサウンドだろう。

本作を聞くと、サウンド面や楽曲の構成において、日本のフュージョン・ミュージシャン達にも大きな影響を与えていることが分かる。
ただ彼らとの大きな違いは、海外のフュージョン・ミュージシャンは「ジャズをバックグラウンドに持っている」ということだ。
これは「日本のフュージョンと海外のフュージョンが大きく異なる」理由の一つだと思う。
もちろんリー・リトナーもこれに当てはまり、ジャズの演奏も難なく熟すことが出来る。
これにより、ポップな楽曲でも深みのある「フュージョン」というジャンルに仕上がっているのだと、私は考えている。

また、参加ミュージシャンも若手の新星達がズラリと並んでいる。

まず、注目すべきは当時33歳のスティーヴ・ガッド(Steve Gadd)。この時期は今ほど有名ではなかったが、ドラムの腕前は流石としか言いようがない。若き日のガッドのドラミングを聴きたい方にもおすすめアルバムと言えるだろう。
他にも29歳のデイヴィッド・フォスター(David Foster)、34歳のアレックス・アクーニャ(Alex Acuña)、31歳のビル・チャンプリン(Bill" Champlin)など、音楽界に欠かせない人物が参加しているのだ。
下記にクレジットを記載しておくので、興味のある方は是非チェックしてみてほしい。

それでは本作『キャプテンズ・ジャーニー』(The Captain's Journey)の収録曲について、簡単に解説していこう。

The Captain's Journey - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.The Captain's JourneyLee Ritenour8:03
2.Morning GloryLee Ritenour, Bill Champlin5:53
3.Sugarloaf ExpressLee Ritenour5:06
4.MatchmakersLee Ritenour4:53
5.What Do You Want?Don Grusin5:27
6.That's Enough for MePatti Austin, Dave Grusin5:24
7.EtudeDave Grusin3:49

Background & Reception

1曲目”The Captain's Journey”は、”Part I: The Calm”、” Part II: The Storm”の二部構成になっている面白い楽曲だ。タイトル通り、暖かな波の上をゆったりと進むようなメロディーとサウンドから始まり、4:30の辺りから徐々に嵐が近づく。5:10からは激しく波がうねりはじめる、といったところだろうか。8分を超える楽曲ながら、全く飽きさせない曲構成になっており、これぞ1970年代のフュージョンといった感じだ。

ボーカルにビル・チャンプリン(Bill" Champlin)を迎えたのが、2曲目”Morning Glory”
ビルはセカンド・アルバムに収録されたスティービー・ワンダーのカバー曲”Isn’t She Lovely”でもゲスト参加している。
この曲は歌モノではあるが、ボーカルとリトナーのギターが半々といった感じ。
フュージョンに加え、R&Bやディスコの要素を含んだ珍しい楽曲だ。

3曲目"Sugarloaf Express"は、海岸沿いで聴きたくなる軽快なナンバー。パーカッションが効果的に使われており、楽曲によいスパイスを与えている。日本のフュージョン・ミュージシャン達にも大きな影響を与えた楽曲とも言えるだろう。
また、この楽曲のみスティーヴ・ガッドではなく、アレックス・アクーニャ(Alex Acuña)がドラムをプレイしている。

マイナー調のムーディーな雰囲気を持つ”Matchmakers”での注目は、ジャズ奏者アーニー・ワッツ(Ernie Watts)のサックス・ソロ。当時33歳ながら、深みのある音色で素晴らしいソロを聴かせている。ブルースの要素を含んだメロディアスなギターソロも印象的だ。

上に紹介した4曲は全てリー・リトナーによる作曲だが、ここからの3曲はドン・グルーシン(Don Grusin)が作曲を行ったものとなっている。

まずは5曲目"What Do You Want?"
まさに「フュージョン」といった感じの曲で様々な雰囲気を持った曲だ。
ここでのリトナーは、ドライブの効いた心地よいギター・サウンドでソロを演奏している。曲間のピアノソロは、ドン・グルーシン本人によるもの。

R&B歌手のパティ・オースティン(Patti Austin)が参加したのが、6曲目"That's Enough for Me"。とは言っても、あくまでバック・ボーカルとして参加しており、ほぼギターのインスト・ナンバー。こちらも3曲目と並び、海岸沿いを連想させるような、軽快で跳ねたリズムが心地よい楽曲だ。

アルバムのラストを飾るのは、落ち着いた雰囲気のある”Etude”。哀愁漂うナンバーで、ここでのリー・リトナーはクラシック・ギターを演奏している。バックトラックにはストリングス、フルートが含まれており、アニメのEDにでも使われていそうなボサノバ・チューンである。

The Captain's Journey - Credit

リー・リトナー(Lee Ritenour)- ギター、ギターシンセサイザー、リズムアレンジ(Track 2を除く)
デイヴ・グルーシン(Dave Grusin)- シンセサイザー(Tracks 1, 3)、ミニモーグ(Tracks 1, 3, 5)、ローズピアノ(Tracks 2, 7)、エレキグランドピアノ(Tracks 5, 6)、ピアノ(Tracks 3, 4, 7)、パーカッション(Tracks 6, 7)、リズムアレンジ(Track 2)、ストリングスアレンジ、フルートアレンジ
アーニー・ワッツ(Ernie Watts)- テナーサックス、ソプラノサックス
レイ・ベックスタイン(Ray Beckstein)- フルート(Track 7)
エディ・ダニエルズ(Eddie Daniels)- フルート(Track 7)
デイヴ・ヴァレンティン(Dave Valentin)- フルート(Track 7)
デイヴィッド・フォスター(David Foster)- ローズピアノ(Track 4)、ピアノ(Track 2)、リズムアレンジ(Track 2)
ドン・グルーシン(Don Grusin)- ピアノ(Track 5)
パトリース・ラッシェン(Patrice Rushen)- ローズピアノ(Track 1)、エレキグランドピアノ(Track 1)
イアン・アンダーウッド(Ian Underwood)- シンセサイザー(Track 1)
ジェイ・グレイドン(Jay Graydon)- ギター(Tracks 2, 4)
ミッチ・ホルダー(Mitch Holder)- ギター(Tracks 3, 6)
アンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson)- ベース(Track 1)
エイブラハム・ラボリエル(Abraham Laboriel)- ベース
スティーヴ・ガッド(Steve Gadd)- ドラム(Track 3を除く)
アレックス・アクーニャ(Alex Acuña)- ドラム(Track 3)、パーカッション(Track 1, 3)
パウリーニョ・ダ・コスタ(Paulinho Da Costa)- パーカッション(Tracks 3, 5, 6)
スー・エバンス(Sue Evans)- パーカッション(Track 4-7)
スティーブ・フォーマン(Steve Forman)- パーカッション(Track 1, 3)
ラリー・ローゼン(Larry Rosen)- パーカッション(Track 7)
スティーヴ・ソーントン(Steve Thornton)- パーカッション(Track 4)

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