『アヴェンジド・セヴンフォールド』(Avenged Sevenfold)は、アメリカのメタル・バンド、アヴェンジド・セヴンフォールド(Avenged Sevenfold)が2007年にリリースしたアルバムである。
1999年にカリフォルニア州で結成したメタル・バンド、アヴェンジド・セヴンフォールド。
バンド結成当初はメタルコアを基調とした楽曲を中心に演奏しており、そのサウンドは1stアルバム『サウンディング・ザ・セヴンス・トランペット』(Sounding the Seventh Trumpet)、2ndアルバム『ウェイキング・ザ・フォーレン』(Waking the Fallen)の2枚にて確認することができる。
彼らは2003年に2ndアルバムをリリースして間もなく、バンドはメジャー・レーベルであるワーナー・ブラザース・レコードとの契約を獲得。
3rdアルバムの制作にあたり、アヴェンジド・セヴンフォールドはメンバーが好む「メロディアスな楽曲を基調としたスタイルでアルバムを作りたい」と考えていた。
その結果、3rdアルバム『シティ・オブ・イーヴル』(City of Evil)では、メロディアスでパワフルな楽曲を多く収録し、”アヴェンジド・セヴンフォールドのサウンド”を確立。各方面で高い評価を獲得し、一気に世界へその名を広めることとなった。
今回紹介する『アヴェンジド・セヴンフォールド』(Avenged Sevenfold)は、その2年後である2007年に発表された4枚目のセルフタイトルのアルバム。彼らは2021年現在までに7枚のアルバムをリリースしているが、このアルバムは名実ともに「アヴェンジド・セヴンフォールドの最高傑作」として愛されている名盤である。
今作の大きな特徴は、前作より更に”ハードロック・サウンド”が強調されていることだろう。
3rdアルバムでメタルコアから王道のヘビーメタルへ大きく舵を切ったアヴェンジド・セヴンフォールド。4thアルバムではそこから更に”メロディアスでパワフルなサウンド”が追加されており、ロック好き、メタル好きにはたまらないアルバムへ仕上がっているのだ。
4作目にしてバンド名を冠したアルバムを発表したのは、それほど彼らもこの作品に手ごたえを感じていたからだろう。実際にこの『アヴェンジド・セヴンフォールド』(Avenged Sevenfold)はトータルセールス枚数100万枚を突破し、バンド初の「ゴールド・ディスク」も獲得。商業的にも大きな成功を収め、「メタル・バンドとして地位」を確固たるものにした。
忘れてはならないのが、この4thアルバムがオリジナル・メンバーで最後にリリースした作品でもあるということ。
なぜならば、アルバム発表から2年後にドラマーのザ・レヴ(THE REV)がこの世を去ってしまっているためだ。バンドの中心でもあり、優れた作曲家でもあったレヴの死は、非常に残念であり、メタル界にとっても大きな損失となってしまった。
それでもレヴの名は「メタル、ハードロックの名盤」を生んだ一員として、しっかりとメタルの歴史に刻まれている。
Avenged Sevenfold - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Critical Acclaim | Matthew Sanders, Zachary Baker, James Sullivan | 5:14 |
2. | Almost Easy | James Sullivan | 3:54 |
3. | Scream | Matthew Sanders, Zachary Baker, Brian Haner Jr. | 4:48 |
4. | Afterlife | James Sullivan | 5:53 |
5. | Gunslinger | Matthew Sanders, Brian Haner Jr. | 4:11 |
6. | Unbound (The Wild Ride) | Matthew Sanders, Brian Haner Jr., Jonathan Seward | 5:11 |
7. | Brompton Cocktail | James Sullivan, Matthew Sanders | 4:13 |
8. | Lost | Matthew Sanders | 5:02 |
9. | A Little Piece of Heaven | James Sullivan | 8:00 |
10. | Dear God | Matthew Sanders, Brian Haner Jr., Jonathan Seward | 6:33 |
Background & Reception
アルバムのオープニングを飾るのは"Critical Acclaim"。
ボーカルのマシュー・サンダース(Matthew Sanders)、リズムギターのザッカリー・ベーカー(Zachary Baker)、ドラムのレヴ(James Owen Sullivan)により作曲されている。
メロディアスな楽曲が多く並ぶ4thアルバムだが、この1曲目はメタルコアのサウンドが色濃く残っており、3rdアルバムの延長線上にあるようなナンバーだ。
サウンドは「メタルの王道」だが、飽きさせない曲展開にも注目してほしい。
2曲目に並んだ"Almost Easy"は、レヴが作曲した今作を象徴する名曲中の名曲。
アルバム内で最も人気の高く、先行シングルで配信されたナンバーでもある。
メロディアスなボーカルライン、ダウンチューニングで刻むバッキング、ドラムの重厚なサウンド、ドラマチックな曲展開など、素晴らしい点を挙げればキリがない。個人的にはメタリカ(Metallica)の名曲達にも引けをとらない完成度を誇っていると思う。
USシングルチャートでは3位、UKシングルチャートでは1位を獲得している。
ちなみに2007年にはこの曲を題材にYouTube上で「ギター・ソロコンテスト」を開催。優勝者にリードギターであるシニスター・ゲイツ(Synyster Gates)のシグネイチャー・モデルギターが進呈されたそうだ。
3曲目の"Scream"は、タイトルの通り「女性の叫び声」から始まるナンバー。
こちらのナンバーもサウンドが素晴らしいのはもちろんだが、レヴのドラミングにも注目してほしい。随所に細かいテクニックが含まれており、楽曲にメリハリを与えている。こちらもシングルとしてリリースされており、全米チャート9位を記録。
作曲はマシュー、ザッカリー 、シニスターによって行われている。
この曲もYouTube上で開催された「ミュージックビデオ・コンテスト」の題材となった。こちらの企画の優勝者にはなぜか楽器に関するものではなく、マックブック・エアー(MacBook Air)が贈られている。
4曲目の"Afterlife"は、ドラマーのザ・レヴが作曲した”Almost Easy”に匹敵する名曲。
ファンの間でも人気の高く、バンドの公式ウェブサイトで行われた人気投票では1位を獲得している。
楽曲のリズムが心地よく、サウンドもパワフルで美しい。特にサビ部分などは通常のメタルバンドでは生み出せないメロディアスなラインに仕上がっている。
メタル、ハードロック好きには必ず聴いてほしい楽曲だ。
ギタリストであればツインギターソロ、シニスターの速弾きにも注目。
アコースティックギターから始まるバラード・ナンバーが5曲目"Gunslinger"。
力強いボーカルとアコギのみで1コーラスを歌い切り、2コーラス目からメタルサウンドが加わる面白い曲構成となっている。
バラード曲だけあってメロディーが美しく、終末観のある楽曲だ。
作曲はボーカルのマシュー、ギターのシニスターによって行われている。
6曲目の"Unbound(The Wild Ride)"は、アップテンポなメタルの王道らしい楽曲。
ここでも光っているのが、ボーカル、ギター、ピアノのラインの美しさだ。
バッキングでは教会音楽を思わせるようなアルペジオを披露し、楽曲の中間部分では壮大な盛り上がりを見せている。このナンバーも4thアルバムを象徴するような楽曲と言えるだろう。
パーカッションのサウンドから始まる"Brompton Cocktail"は、7曲目に収録。
イントロのフレーズが重厚でクールなナンバーだ。曲全体を通してダークな雰囲気があり、クラシカルなサウンドが随所にみられるのが特徴。
ボーカルはメロディアスに歌い上げるというよりは”パワフル”な部分が強調されているように感じる。
作詞・作曲はレヴ、マシューによるもの。
8曲目"Lost"は、前作『シティ・オブ・イーヴル』(City of Evil)を思わせるような、スピード感溢れる楽曲。恐らく今作で最もテンポが速い曲ではないだろうか。
こちらも4thアルバムを象徴するようなパワフルでメロディアスな楽曲だ。
コーラス(サビ)ではメジャー調に移調し、ドラマチックな展開を見せている。
本作はお勧めの曲がいくつもあるが、この9曲目"A Little Piece of Heaven"も名曲中の名曲である。ストーリー仕立ての曲構成になっており、1曲というよりは”1本の映画”のような作品なのだ。
ストリングスがふんだんに使用されていることも大きな特徴であり、本来交わることのない”クラシック”と”メタル”が絶妙にブレンドされている。
これまでのアヴェンジド・セヴンフォールドでは見られなかったこの楽曲は、メタラー以外にも必聴の楽曲。
ちなみに何故か”ハロウィン感”も強いナンバーのため、そういった音楽をお探しの方にも是非視聴いただきたい。
アルバムの最後を飾るのは、4枚目にシングルとしてリリースされた"Dear God"。
メタルサウンドとカントリーの要素が上手く融合した、こちらも名曲と呼べる完成度だ。
メタル・バンドはアルバム内でこういったバラード調の曲を1~2曲ほど収録することが多々ある。そういったメタル・バンドのバラード曲を数えきれないほど聴いてきたが、個人的に最も気に入っているのがこの”Dear God”だ。
アコギのサウンドが素晴らしく、メロディーラインも力強く美しい。特にサビの泣かせるメロディーなどは良い意味で”メタルバンドらしさ”がない。
ロック好き意外にも是非聴いてもらいたい、そんなナンバーに仕上がっている。
Avenged Sevenfold - Credit
M.シャドウズ(M. Shadows)- リードボーカル、バックボーカル
ザッキー・ヴェンジェンス(Zacky Vengeance)- リズムギター、アコースティックギター(Track 10)、バックボーカル
ザ・レヴ(The Rev)- ドラム、パーカッション、バックボーカル、ピアノ
シニスター・ゲイツ(Synyster Gates)- リードギター、バックボーカル
ジョニー・クライスト(Johnny Christ)- ベース、バックボーカル
[Guest]
ジェイ・E(Jay E)- プログラミング(Tracks 1, 3)
ジェイミー・ミュホベラック(Jamie Muhoberac)- ピアノ、オルガン(Tracks 1, 6, 8 and 9)
グレッグ・クステン(Greg Kusten)- ピアノ(Track 2)
マイルス・モズレー(Miles Mosley)- アップライトベース(Tracks 4, 7, 9)
キャメロン・ストーン(Cameron Stone on)- チェロ(Tracks 4, 7, 9)
キャロライン・キャンベル(Caroline Campbell)- バイオリン(Tracks 4, 7, 9)
ニール・ハーモンド(Neel Hammond)- バイオリン(Tracks 4, 7, 9)
アンドリュー・ダックルズ(Andrew Duckles)- ヴィオラ(Tracks 4, 7, 9)
ゼンダー・アイエロフ(Zander Ayeroff)- バックボーカル(Track 6)
アンマリー・リッツォ(Annmarie Rizzo)- バックボーカル(Track 6)
レニー・カストロ(Lenny Castro)- パーカッション(Track 7)
ビル・リストン(Bill Liston)- アルトサックス(Track 9)、クラリネット(Track 9)
ブランドン・フィールズ(Brandon Fields)- アルトサックス(Track 9)
ラスティ・ヒギンズ(Rusty Higgins)- テナーサックス(Track 9)、クラリネット(Track 9)
デイヴ・ボラフ(Dave Boruff)- テナーサックス(Track 9)
ジョエル・ペスキン(Joel Peskin)- バリトンサックス(Track 9)
ウェイン・バージェロン(Wayne Bergeron)- トランペット(Track 9)
ダニエル・フェルネロ(Daniel Foreno)- トランペット(Track 9)
ブルース・ファウラー(Bruce Fowler)- トロンボーン(Track 9)
アレックス・イリス(Alex Iles)- トロンボーン(Track 9)
ジュリエット・コマジェーレ(Juliette Commagere)- バックボーカル(Track 9)
グレッグ・リーズ(Greg Leisz)- ラップ、ペダルスティール、バンジョー(Tracks 5, 10)
シャナ・クルックス(Shanna Crooks)- バックボーカル(Tracks 5, 10)
ジェイミー・オチョア(Jaime Ochoa)- バックボーカル(Track 1)
ヴァレリー・サンダース(Valary Sanders)- スクリーム(Track 3)