ジャズ・ソウル・フュージョン・R&B・ポップスなど、様々なスタイルで数多くの作品を発表しているシンガー兼ギタリスト、ジョージ・ベンソン(George Benson)。
彼はこれまでに10以上のグラミー賞を受賞しており、「最も成功したジャズ・ギタリストの一人」としても数えられることも多い。
今回紹介するのは、そんなジョージ・ベンソンが1980年に発表したアルバム『ギヴ・ミー・ザ・ナイト』(Give Me the Night)である。
今作最大の特徴は、音楽界のレジェンドであるクインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)がプロデューサーした作品であるということだ。
クインシーは多くの人物をまとめ上げる才能に秀でており、今作でも25名以上のミュージシャンを選出。
その中にはハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、リー・リトナー(Lee Ritenour)、ルイス・ジョンソン(Louis Johnson)など、フュージョン界のレジェント達も含まれている。
収録曲については、クインシーの相棒ロッド・テンパートン(Rod Temperton)がその半分を担当。
マイケル・ジャクソンの"Thriller"、"Off the Wall"の作曲者でもあるロッドの協力がなければ、今作はここまで高く評価されなかったのではないだろうか。
ここまで多くの人物が携わっているのにも関わらず、今作はアルバムとして纏まっており、完成度も高い。
これは、アルバム全体のアレンジを行っているクインシー・ジョーンズの力だろう。
結果、『ギヴ・ミー・ザ・ナイト』(Give Me the Night)は150万枚以上を売り上げ、グラミー賞で3部門を受賞するなど、大成功を収めたアルバムとなった。
Give Me the Night - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Love X Love | Rod Temperton | 4:45 |
2. | Off Broadway | Rod Temperton | 5:23 |
3. | Moody's Mood | Eddie Jefferson, James Moody | 3:24 |
4. | Give Me the Night | Rod Temperton | 5:01 |
5. | What's on Your Mind | Glen Ballard, Kerry Chater | 4:02 |
6. | Dinorah, Dinorah | Ivan Lins, Vitor Martins | 3:39 |
7. | Love Dance | Ivan Lins, Gilson Peranzzetta, Paul Williams) | 3:18 |
8. | Star of a Story (X) | Rod Temperton | 4:42 |
9. | Midnight Love Affair | David "Hawk" Wolinski | 3:31 |
10. | Turn Out the Lamplight | Rod Temperton | 4:43 |
background & Reception
オープニングを飾るのはロッド・テンパートン(Rod Temperton)作曲による"Love X Love"。
1980年代のソウル・ミュージックらしい都会的なサウンドが特徴で、ここではジョージ・ベンソンのボーカルがフューチャーされている。
バックボーカルにはパティ・オースティン(Patti Austin) やトム・バーラー(Tom Bahler)も参加。
シングルとしてもリリースされており、ソウル/R&Bチャートでトップ10入りを果たした人気の高い楽曲だ。
2曲目"Off Broadway"は、1曲目とは打って変わってギターがメロディーを奏でるインストナンバー。
R&Bやディスコ、フュージョンの要素が感じられ、サイドギターにはリー・リトナー(Lee Ritenour)も参加している。
ジョージはこの楽曲でグラミー賞のひとつである「ベスト・R&B・インストルメンタル・パフォーマンス」を受賞。
曲の後半にはお得意のギターソロとスキャットのユニゾンも楽しめる、ギタリストは必聴の楽曲だ。
ジャズシンガーであるパティ・オースティンとのデュエット曲"Moody's Mood"は、バラードを好む方におすすめ。
オリジナルはジェイムス・ムーディー(James Moody)とエディ・ジェファーソン(Eddie Jefferson)が1952年に作詞作曲を行っており、それ以降数多くのジャズミュージシャンによりカバーされている名曲だ。
このナンバーも各方面から高い評価を獲得しており、グラミー賞「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」を受賞。
グレッグ・フィリンゲインズ(Greg Phillinganes)が奏でる心地よい鍵盤のサウンドにも注目してほしい。
4曲目”Give Me the Night”は、ロッド・テンパートンが作曲した本作を代表するディスコナンバー。
アルバムのタイトルにも選ばれただけあり、クレジットには数多くのレジェンド達が名を連ねている。
まず、バックボーカリストにパティ・オースティン、トム・バーラー、ジョセリン・ブラウン、ジム・ギルストラップ、ディーバ・グレーの5名。
そしてギターにはリー・リトナー、さらにキーボードにハービー・ハンコック(Herbie Hancock)と、R&B・ジャズ界を代表するプレイヤー達ばかりだ。
シングルとしてもリリースされており、8か国以上の音楽チャートにてトップテンにランクイン。
R&B好きであれば必ず聞いていただきたいグルーブ感溢れる楽曲だ。
あまり話題に上がることはないが、5曲目"What's on Your Mind"も1980年代R&Bを代表する都会的なサウンドが盛り込まれたオシャレなナンバー。
ジョージのボーカルとバッキングのサウンドが絶妙に絡み合っており、キャッチーなメロディーラインも非常に聞き心地が良い。
曲のサビでは、彼の十八番であるギターソロとスキャットのユニゾンで楽曲を盛り上げている。
6曲目"Dinorah, Dinorah"は、ブラジリアン歌手イヴァン・リンス(Ivan Lins)の曲をインスト・アレンジしたナンバー。
イヴァンよりもジョージの方が知名度が高いため、この楽曲を知ったその後にオリジナルを聞いた方も多くいるのではないだろうか。
余談ではあるが、イヴァン・リンスの素晴らしいメロディー・メーカーであるため、興味のある方は是非彼の作品も聞いてみてほしい。
このアレンジでは、1コーラス目はギターでボーカルラインを忠実に演奏し、2コーラス目からジョージの熱いギターソロを披露。
また、「エヴァンス派」のピアニストとして有名なクレア・フィッシャー(Clare Fischer)が鍵盤楽器を担当していることも忘れてはならない。
編曲はクインシー・ジョーンズが行っており、彼はこの曲でグラミー賞「最優秀インストゥルメンタル編曲賞」を受賞している。
7曲目"Love Dance"では、リー・リトナーが奏でる美しいアコースティックギターのサウンドに注目。
作曲は"Dinorah, Dinorah"に続きイヴァン・リンスが行っている。
ブラジリアン・ミュージックらしい、暖かく流れるようなメロディーが特徴だ。
ロッド・テンパートンが作曲した"Star of a Story"は、8曲目に収録。
浮遊感のあるサウンドが特徴で、楽曲の進行も独特なナンバーに仕上がっている。
ハービー・ハンコックがシンセサイザーを担当しており、アレンジはクインシー・ジョーンズによるものだ。
9曲目"Midnight Love Affair"は、ホーク・ボランスキー(David "Hawk" Wolinski)作曲の哀愁漂うナンバー。
日本人好みの渋いメロディーラインが特徴で、9曲目にもってくるのがもったいないぐらいの完成度を誇っている。
バッキングのサックスとして、キム・ハッチクロフト(Kim Hutchcroft)とラリー・ウィリアムズ(Larry Williams)も参加。
アルバムのラストを飾るのは、ロッド・テンパートンが作曲したバラード曲"Turn Out the Lamplight"。
ボーカルがフューチャーされた暖かみのあるメロディーとサウンドが特徴だ。
バックを支えるメンバーもリー・リトナー、ルイス・ジョンソン(Louis Johnson)、パティ・オースティンと、最後まで豪華な面々が並んでいる。
Give Me the Night - Credit
ジョージ・ベンソン(George Benson)- ボーカル、バックボーカル(Tracks 1, 3, 4, 5, 7-10)、ギター(Tracks 1-5, 8, 9, 10)、リードギター(Track 6)、スキャット(Track 6)
リー・リトナー(Lee Ritenour)- ギター(Tracks 2, 4, 5, 8, 9)、アコースティックギター(Track 7)、リズムアレンジ(Track 7)、エレキギター(Track 10)
グレッグ・フィリンゲインズ(Greg Phillinganes)- キーボード(Tracks 1, 2, 3, 10)、シンセサイザー(Track 2, 3)、 ローズ・ピアノ(Track 6)
マイケル・ボディカー(Michael Boddicker)- シンセサイザー(Tracks 4, 5, 8)
ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)- エレキピアノ(Track 4)、シンセサイザー(Tracks 6, 7, 9)、シンセサイザープログラミング(Tracks 6, 8, 9)、ローズ・ピアノ(Tracks 7, 8)
リチャード・ティー(Richard Tee)- シンセサイザーベース(Track 4)、エレキピアノ(Track 5)、シンセサイザー(Tracks 8, 9, 10)
クレア・フィッシャー(Clare Fischer)- ヤマハCS30(Track 6)、アコースティックピアノ(Track 6)、ローズ・ピアノ(Track 6)
ジョージ・デューク(George Duke)- キーボード(Track 9)
ルイス・ジョンソン(Louis Johnson) - ベース(Tracks 1, 2, 6, 10)
エイブラハム・ラボリエル(Abraham Laboriel) - ベース(Tracks 1, 3, 4, 5, 7, 8)
ジョン・ロビンソン(John Robinson)- ドラム(Tracks 1-6, 8, 10)
カルロス・ベガ(Carlos Vega)- ドラム(Tracks 7, 9)
パウリーニョ・ダ・コスタ(Paulinho Da Costa)- パーカッション(Tracks 1, 2, 4, 5–8, 10)
キム・ハッチクロフト(Kim Hutchcroft)- サックス&フルート(Tracks 1, 2, 4, 5, 6, 9)
ラリー・ウィリアムズ(Larry Williams)- サックス&フルート(Tracks 1, 2, 4, 5, 6, 9)
ジェリー・ヘイ(Jerry Hey)- トランペット(Tracks 1, 2, 4, 5, 6, 9)、ホーンアレンジ(Tracks 1, 2, 4, 5, 6, 9)、ストリングスアレンジ(Tracks 1, 2, 4, 5, 6)
デイヴィッド・フォスター(David Foster)- ストリングスアレンジ(Track 1)
クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)- リズムアレンジ(Tracks 2-10)、ボーカルアレンジ(Tracks 5, 8, 9)、シンセサイザーアレンジ(Track 8)
ロッド・テンパートン(Rod Temperton)- リズムアレンジ(Tracks 2, 4)、ボーカルアレンジ(Track 4)
マーティ・ペイチ(Marty Paich)- ストリングスアレンジ&コンダクター(Tracks 3, 8)
シド・シャープ(Sid Sharp)- コンサートマスター(Tracks 1-6, 8)
パティ・オースティン(Patti Austin)- バックボーカル(Tracks 1, 4, 6, 8, 10)、リードボーカル(Track 3)
トム・バーラー(Tom Bahler)- バックボーカル(Tracks 1, 4, 8, 10)、BGVアレンジ(Track 10)
ジョセリン・ブラウン(Jocelyn Brown)- バックボーカル(Tracks 1, 4, 8)
ジム・ギルストラップ(Jim Gilstrap)- バックボーカル(Tracks 1, 4, 8)
ディーバ・グレー(Diva Gray)- バックボーカル(Tracks 1, 4, 8)
マイケル・マクドナルド(Michael McDonald)- バックボーカル