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歴史に残るポップスの名盤。1,000万以上の売り上げを記録したデビュー・アルバム『ソングス・アバウト・ジェーン』(Songs About Jane) - マルーン5(Maroon 5)

『ソングス・アバウト・ジェーン』(Songs About Jane) - マルーン5(Maroon 5)

全世界トータルセールスが1億1000万枚を記録しており、これまでに3つのグラミー賞を受賞しているアメリカのバンド、マルーン5(Maroon 5)
2001年に結成した彼らは現在「世界で最も売れたアーティスト集団」のひとつして数えられており、世界でも有数の大きな影響力を持つポップ・ロックバンドへと成長した。
今回紹介するのは、そんなマルーン5(Maroon 5)のデビュー・アルバム『ソングス・アバウト・ジェーン』(Songs About Jane)である。
このアルバムを解説する前に、マルーン5がどういったバンドなのか簡単に説明しておこう。

マルーン5(Maroon5)のオリジナルメンバーは、アダム・レヴィーン(Adam Levine)、ジェシー・カーマイケル(Jesse Carmichael)、ミッキー・マデン(Mickey Madden)、ライアン・デューシック(Ryan Dusick)の4人。
彼らはロサンゼルスにあるブレントウッド・スクール(Brentwood School)に通っており、そこで全身のバンドとなるカーラズ・フラワーズを1994年に結成した。ちなみにこのバンド名の由来は同じ学校に通っていた女の子から取ったそうだ。

ある日、カーラズ・フラワーズがマリブで行われたビーチ・パーティーで演奏を行っていると、音楽プロデューサーのトミー・アレン(Tommy Allen)が彼らの音楽に感動。
これがきっかけでワーナー・ミュージック・グループのリプリーズ・レコードと契約を交わすことになり、アルバムを製作することとなった。

1997年、カーラズ・フラワーズはロブ・カヴァロ(Rob Cavallo)をプロデューサーに迎え、1stアルバムとなる『ザ・フォース・ワールド』(The Fourth World)をリリース。
1960年代のブリット・ポップを模したようなスタイルの作品となったアルバムとなったこの作品の売上枚数は5000枚に留まり、商業的な成功は収めることはできず、バンドはレコード会社を去ることとなった。

1999年に入ると、ライアンとミッキーはロサンゼルスのカリフォルニア大学ロサンゼルス校へ、アダムとジェシーはニューヨーク州ロング・アイランドにあるファイブ・タウンズ・カレッジへそれぞれ進学し、様々な音楽に触れあうことになる。
特にアダムとジェシーがニューヨークで聴いた都会的なサウンドは、後の彼らの音楽に大きな影響を与えることとなった。


2001年、アダムとジェシーはロサンゼルスへ戻り、ライアンとミッキーとバンド活動を再開。
デモ・テープを作成し、いくつかのレコード会社へ送ってはみたものの、よい反応は得られなかった。
しかし、その後すぐに大きな転機が訪れる。
オクトーン・レコード(Octone Records)のジェームズ・ディーナー(James Diener)との出会いだ。
ジェームズは彼らのデモ・テープに含まれていた"Sunday Morning"に感動し、彼らの才能を絶賛。
すぐに契約を持ちかけ、カーラズ・フラワーズは2001年4月にオクトーン・レコードと契約を結ぶことになった。
ちなみにレコード会社の一人、ベン・バークマン(Ben Berkman)は2001年以前からカラーズ・フラワーズを知っており、新しい彼らの音楽スタイルに驚愕したという。

契約後、オクトーン・レコードはカーラズ・フラワーズに2つの要求を行っている。
まず一つが、「バンド名をポップなものに変えること」。
この結果、彼らは皆様ご存じのマルーン5(Maroon 5)へ改名した。ちなみにバンド名の由来はメンバーと数名しか知らないそうだ。
そうしてもう一つが、「ボーカルのアダムをボーカルだけに専念させ、ギタリストを一人追加すること」だった。
これにより、以前から知り合いだったジェイムス・ヴァレンタイン(James Valentine)がギタリストとして加入。
それまでギターを担当していたジェシーは、キーボードを演奏することとなった。

2002年、マルーン5はデビュー・アルバムとなる『ソングス・アバウト・ジェーン』(Songs About Jane)をリリース。
今となっては彼らを代表する作品だが、発表当初は大きな注目を集めることはなかった。
しかし、収録曲の”Sweetest Goodbye”が『ラブ・アクチュアリー』(Love Actually)のサウンドトラックに含まれたこと、ミシェル・ブランチ(Michelle Branch)やジョン・メイヤー(John Mayer)とのツアーで徐々に知名度を獲得。
ファースト・シングル"Harder to Breathe"がラジオ等でプレイされ始め、2003年8月にビルボード・チャートにて92位を獲得する。
この後も売り上げは止まらず、翌年の2004年にははチャート6位まで上昇し、第47回グラミー賞では「最優秀新人賞」を受賞することとなった。
トータルセールス枚数は、2007年時点で1000万枚を突破しており、現在もその枚数を伸ばし続けている。

アルバムに収録されている曲のほとんどは、ボーカルのアダムがNYに住んでいた時に付き合っていたジェーン・ハーマン(Jane Herman)のことについて歌われている。
出会いはアダムがジェーンをガソリンスタンドで見かけ、一目惚れしたそうだ。
アダムは当時の様子を以下のように語っている。

「ジェーンの為に曲を書いて、彼女の職場に押しかけて演奏したんだ。その曲は酷いものだったけどね。それから数年間、彼女は僕の女神様だった。」

また、アダムは後のインタビューにて、「全ての曲に少なくとも1フレーズは、彼女のことについて歌っている」と発言している。

Song About Jane - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.Harder to BreatheAdam Levine, Jesse Carmichael2:53
2.This LoveAdam Levine, Jesse Carmichael, Ryan Dusick, Michael Madden, James Valentine3:26
3.ShiverAdam Levine, Jesse Carmichael2:59
4.She Will Be LovedAdam Levine, James Valentine4:17
5.TangledAdam Levine3:18
6.The SunAdam Levine4:11
7.Must Get OutAdam Levine, Jesse Carmichael3:59
8.Sunday MorningAdam Levine, Jesse Carmichael4:04
9.SecretAdam Levine, Jesse Carmichael4:55
10.Through with YouAdam Levine, Jesse Carmichael3:01
11.Not Coming HomeAdam Levine, Jesse Carmichael, Ryan Dusick4:21
12.Sweetest GoodbyeAdam Levine4:30

Background & Reception

1曲目を飾るのは、バンドの知名度を挙げるきっかけとなった"Harder to Breathe"
アルバムリリースから約1ヶ月後にシングルカットされた楽曲であり、ラジオで放送されて以降徐々に注目を集めると、複数の国のビルボード・シングルチャートでトップ20にランクイン。これに伴い、アルバムの売上も大きく上昇した。
歌詞の内容については、レーベル会社のオクトワンレコード(Octone Records)に対するフラストレーションを表している。
バンドとしてはアルバムをリリースするのに十分な曲数が揃っていると思っていたが、レーベルに「曲を書き続けろ」とプッシュされたことにストレスを感じ、急いで完成させた曲だそうだ。
評論家のサム・ベレスキー(Sam Beresky)は"Harder to Breathe"について、以下のように語っている。

「聞いていて楽しい楽曲。メロウな側面を持ち、トレイン(Train)、ジョン・メイヤー(John Mayer)の要素を感じる。また僅かではあるが、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)、ジャミロクワイ(Jamiroquai)が持つ雰囲気もある。」

2枚目にシングルカットされた“This Love”は、アダムが彼女と別れ「最も感情的に辛い時期」に書いた失恋ソング。
2006年のグラミー賞では「最優秀ポップ・パフォーマンス賞デュオ/グループ」を受賞している。
この曲はギタリストのジョン・メイヤーもお気に入りの楽曲だそうだ。(リードギターのジェイムズはジョンと同じバークリー音楽大学に通っており、友人でもある)
この曲に対し、メンバーは「スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)に影響を受けた」とも語っている。
1曲目に続きマイナー調の曲でダークな雰囲気を持つ楽曲。
この曲はミュージックビデオも有名だが、オリジナルバージョンは過激だったため、MTVでは編集されたものが使用された。

3曲目"Shiver"は、アダムとジェイムズが作曲したナンバー。
バンドサウンドが強調された楽曲で、ジェイムズのギターがフューチャーされた楽曲でもある。
ブルージーなギターサウンドは、ジョン・メイヤーから影響を受けたものではないだろうか。
作曲はアダム、ジェシーによって行われている。

4曲目"She Will Be Loved"は、アルバム発表から2年後にシングルとして発売され、400万枚以上を売り上げたバラード調のラブソング。
爽やかな楽曲だが、どことなく寂しい雰囲気も持つ楽曲だ。
現在ではアルバムのみならず、マルーン5を代表するナンバーとして広く愛されている。
第47回グラミー賞では「最優秀ポップ・パフォーマンス賞デュオ/グループ」にノミネートされたものの、受賞はならなった。(この時選ばれたのはロス・ロンリー・ボーイズ(Los Lonely Boys)の”Heaven”)
日本では2004年に化粧品メーカー『ノエビア』のCMソングとして使用されている。

ボーカルのアダムが作曲を行った"Tangled"は、5曲目に収録。
こちらも"Shiver"と同じくバンドサウンドが基調とされたマイナー調の楽曲だ。
こちらもギターソロではブルージーなフレーズを聴くことができる。

6曲目"The Sun"は、シングルとして発表されていないものの根強い人気を持つナンバー。
都会的なサウンドやファンクの要素も持ち合わせた楽曲であり、スティーヴィー・ワンダーからの影響も感じる。
リズムを基調とした楽曲を好む人にお勧めで、タイトなリズム隊の演奏にも注目。

2005年にシングルとして発表されている楽曲が、7曲目"Must Get Out"
セールス面では他のシングルに及ばなかったが、オランダ、イギリスなどいくつかのヨーロッパにある国で高く評価され、音楽チャートにランクインした。
爽やかなサウンドで"マルーン5らしい楽曲"と言えるだろう。
作詞・作曲はボーカルのアダムが行っており、歌詞の内容は恋愛における困難な時期について歌われている。

アルバム内で最も人気の高い8曲目"Sunday Morning"は、シングルとして約400万枚を売り上げ、アメリカ国内でプラチナディスクを獲得したポップソング。
この曲からマルーン5(Moroon 5)を聞き始めた方も多いのではないだろうか。
サウンドやメロディー共に暖かい雰囲気を持ち、休みの朝にぴったりの楽曲だ。
現在でも世界中で広く愛されており、2003年の映画『恋愛適齢期』(Something's Gotta Give)やアメリカ合衆国のテレビドラマシリーズ『サード・ウォッチ』(Third Watch)、2005年のアメリカ映画『12人のパパ2』(Dozen 2)など、様々なメディアで使用されている。
日本では2005年にトヨタ自動車の「ヴィッツ」のCMソングとして起用された。
マルーン5のみならず、ポップ界を代表する名曲のひとつだ。

9曲目"Secret"は、都会的なサウンドとミックスが施されたR&B調の楽曲。
個人的にはジャミロクワイのサウンドをアメリカ寄りにしたようなサウンドに感じている。
作詞・作曲はアダム、そしてキーボード奏者のジェシー。

『ソングス・アバウト・ジェーン』(Songs About Jane)は比較的マイナー調の楽曲が多く、10曲目"Through With You"もそれに当てはまる。
R&Bやソウルの要素とマルーン5のポップ・サウンドが融合したナンバー。
アダム、ジェシーが作詞・作曲を行っている。

11曲目"Not Coming Home"は、2001年に作曲されたメロディアスな楽曲。
アメリカ人歌手アリーヤ(Aaliyah)の"Are You That Somebody?"に影響を受けて完成した曲のようだ。
このアルバムでは注目を集めることは少ないものの、完成度は高くライブで演奏されることも多い。
作曲にはアダム、ジェシーに加えライアンも参加している。

アルバムのラストを飾るのは12曲目"Sweetest Goodbye"
前述したとおり、この楽曲は『ラブ・アクチュアリー』(Love Actually)にて劇中で使われ有名となったナンバー。
耳に残るキャッチーなメロディーとサウンドを持つため、映画で使われたのも納得だ。
映画を見たこのない人でもポップス好きならきっと気に入るであろうポップ・ソング。

Songs About Jane - Credit

アダム・レヴィーン(Adam Levine)- ボーカル、リズムギター
ジェイムズ・ヴァレンタイン(James Valentine)- リードギター
ジェシー・カーマイケル(Jesse Carmichael)- キーボード、バックボーカル
ミッキー・マデン(Mickey Madden)- ベース
ライアン・デューシック(Ryan Dusick)- ドラム、パーカッション、バックボーカル

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