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1990年代のR&Bを思わせるアリアナの1stアルバム『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Truly)- アリアナ・グランデ(Ariana Grande)

その高い歌唱力から「ネクスト・マライア」と称されているアメリカ出身の歌手アリアナ・グランデ(Ariana Grande)。
当初は女優として活動していたが、2011年に”Put Your Hearts Up”で歌手デビューを果たすと、自身の望んでいた音楽活動へ重きを置くようになる。

2013年に入ると”The Way””Baby I”、”Right There”などヒット曲を連発し、世界各国のファンを獲得。
2014年にはシングル曲”Problem”にて最優秀楽曲賞、2015年には最優秀女性アーティスト賞を受賞するなど一気に世界の歌姫へと成長した。

今回紹介するアルバム『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Trulyは、そんなアリアナのデビュー作であり、彼女の名を世界へ広めた重要な作品である。

今作のスタイルはポップミュージックと1990年代R&Bをミックスしたレトロなサウンド。
アリアナの敬愛するホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)、マライア・キャリー(Mariah Carey)、クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)からの影響を感じる楽曲もある。

作曲に携わった音楽家は実に30名以上。
その中にはベイビーフェイス(Babyface)、ハーモニー・サミュエルズ(Harmony Samuels)など含まれている。2名ともマライア・キャリー、ホイットニー・ヒューストン、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、ニーヨ(Ne-Yo)などに楽曲を提供している大物作曲家だ。
今作でもアリアナの代表曲となった”Baby I”、”Right There”などを書き残している。

レコーディングに要した月日は約3年。
共演アーティストもビッグ・ショーン(Big Sean)、マック・ミラー(Mac Miller)など豪華なメンバーが並ぶこととなった。

“The Way”、”Baby I”などの先行シングルのヒットや共演者にビッグネームが並んだことにより、発売前から注目を集めていた今作。
結果としてリリースから初週で138,000枚を売り上げ、ビルボードのアルバムチャートで1位を獲得。現在までにトータルセールス85万枚を超えるヒット作品となった。

Yours Truly - Track listing

No.TitleWriterLength
1.Honeymoon AvenueBabyface, Antonio Dixon, Khristopher Riddick-TynesLeon, Thomas III, Thomas Lee Brown, Travis Sayles, Victoria McCants, Roahn Hylton, Dennis Jenkins, Maurice Wade5:39
2.Baby IBabyface, Antonio Dixon, Patrick Smith3:17
3.Right There (featuring Big Sean)Ariana Grande, Harmony Samuels, Helen Culver, Joseph Bereal, James Smith, Al Sherrod, Lambert, Sean Anderson, Jeff Lorber4:07
4.Tattooed HeartBabyface, Antonio Dixon, Khristopher Riddick-Tynes, Thomas III, Ariana Grande, Squire, Sean Foreman3:14
5.Lovin' ItBabyface, Antonio Dixon, Riddick-Tynes, Thomas III, Mark Rooney, Nathaniel Robinson, Kirk Robinson, Mark Morales, Rickey Offord3:00
6.PianoH. Samuels, Ariana Grande, Jahmaal Noel Fyffe, Parker Ighile, Anisa Moghaddam, Moses Ayo Samuels, Olaniyi Michael Akinkunmi3:54
7.Daydreamin'Squire, Thomas Lee Brown, Victoria McCants3:31
8.The Way (featuring Mac Miller)H. Samuels, Lambert, Amber Streeter, Jordin Sparks, Malcolm McCormick, Brenda Russell3:47
9.You'll Never KnowBabyface, Antonio Dixon, Riddick-Tynes, Thomas III3:34
10.Almost Is Never Enough (with Nathan Sykes)H. Samuels, Lambert, Ariana Grande, M. Samuels, Akinkunmi, Culver5:27
11.Popular Song (Mika)Mika, Priscilla Renea, Mathieu Jomphe, Stephen Schwartz3:20
12.Better Left UnsaidH. Samuels, Lambert, Grande, M. Samuels, Akinkunmi, Courtney Harrell3:32

Background & Reception

1曲目は煌びやかなオーケストラのサウンドから始まる"Honeymoon Avenue"。作曲にはベイビーフェイス(Babyface)を含む、約10名の大物ライターが携わっている。
1960年代にアメリカで流行したドゥーワップ (doo-wop)と都会的なサウンドが特徴。
アリアナの伸びのある歌声が活きる、懐かしくも新しいナンバーだ。

次の"Baby I"は90年代R&Bを思わせるキャッチーな楽曲。今作の中でも人気が高く、シングルとして100万枚以上を売り上げ、YouTubeのMVの再生回数は1.5億万再生を突破している。
またライブで披露されることも多く、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)とのライブや、日本のサマーソニックでもこの曲を選曲していた。
アリアナの広いボーカルレンジ(Low D♭4 ~ High G♭6)が堪能できる、「ネクスト・マライア」と呼ばれるに相応しい楽曲だ。

アメリカのラッパーであるビッグ・ショーン(Big Sean)をフューチャーしたのが、3曲目"Right There"
こちらもアリアナの愛するR&Bを意識して書かれており、本人も作曲に参加している。
90年代のマライア・キャリー(Mariah Carey)を思わせるサウンドが特徴。
後に発売されたシングルでは、ビルボードチャートのダンス・クラブ・ソング部門リズミック部門にてTOP10入りを果たした。
ミュージック・ビデオも作成されており、シェイクスピア作品『ロミオとジュリエット』をコンセプトにしている。ちなみに作中に登場している男性はアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)の息子パトリック・シュワルツェネッガー(Patrick Schwarzenegger)。

6曲目"Piano"はタイトルが示すように、ピアノのループを元に作曲されたナンバー。歌詞は失恋した女性について歌われているものの、サウンドはアップテンポでリズミカルな明るい曲に仕上がっている。
余り目立つ楽曲ではないが、『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Truly)らしさのあるキャッチーな楽曲だ。

次に収録されている"Daydreamin'"もピアノを基調とした曲だが、こちらは落ち着いたサウンドが特徴。キュートなバラードナンバーといった感じだ。
ちなみに"Daydreamin'"は当初、アルバム名にも使用される予定だった。
しかし、アリアナが今作をラブ・レターのように感じた為、英語で「敬具」を意味する『Yours Truly』が採用されたそうだ。

マック・ミラー(Mac Miller)をゲストボーカルに迎えた"The Way"は、アルバム内でも1,2を争う人気の楽曲。
バックトラックはブレンダ・ラッセル(Brenda Russell)の"A Little Bit of Love"、メロディーはビッグ・パン(Big Pun)の"Still Not a Player"が元となっている。
もちろんシングルとしてリリースもされており、全世界で250万枚以上のセールスを記録。YouTubeに投稿されているMVの再生回数は脅威の4億万再生を突破している。
3曲目"Right There"と似た曲構成となっており、この2曲はセットで演奏されることが多い。
こちらも初期のアリアナらしい、R&Bの要素を持つキャッチーなナンバーだ。

11曲目"Popular Song"はレバノン出身のソングライター、ミーカ(Mika)が作曲したポップソング。
元はミーカのアルバム用に書かれた楽曲であるが、アリアナをフューチャーした楽曲の為、今作にも追加されたようだ。
ギターのカッティングが心地よい、晴れた日に聞きたくなるナンバー。

他にもダンスミュージックの"Better Left Unsaid"、ネイサン・サイクス(Nathan Sykes)をフューチャーしたバラード"Almost Is Never Enough"など、良曲がズラリ。
90年代の洋楽を愛する人であれば、今作『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Truly)もきっと気に入るはずだ。

Yours Truly - Credit

アリアナ・グランデ(Ariana Grande)- ボーカル
ビッグ・ショーン(Big Sean)- ボーカル(track 3)
マック・ミラー(Mac Miller)- ボーカル(track 8)
ネイサン・サイクス(Nathan Sykes)- ボーカル(track 10)
ミーカ(Mika) – ボーカル(track 10)
レオン・トーマス三世(Leon Thomas III)- バックボーカル(tracks 1, 4)
カルメン・リース(Carmen Reece)– バックボーカル
コートニー・ハレル(Courtney Harrell)- バックボーカル
インディア・ベネイ(India Benét)- バックボーカル
ジョヴァンナ・クレイトン(Giovanna Clayton)- チェロ
バネッサ・フリーバーン=スミス(Vanessa Freebarin-Smith)- チェロ
ポーラ・ホッホハルター(Paula Hochalter)- チェロ
ジョン・キャッチングス(John Catchings)- チェロ
アンソニー・ラマルチーナ(Anthony LaMarchina)- チェロ
パメラ・シックスフィン(Pamela Sixfin)- ストリングスコンダクター、バイオリン
ベン・デビット(Ben Devitt)- トロンボーン
アンドリュー・カーニー(Andrew Carney)-トランペット
ファビオ・スピネラ(Fabio Spinell)-トランペット
モニサ・エンジェル(Monisa Angell)- ヴィオラ
クリスティン・ウィルキンソン(Kristin Wilkinson)- ヴィオラ
デイビット・エンジェル(David Angell)- バイオリン
デイビット・デイビッドソン(David Davidson)- バイオリン
クレイトン・ハスロップ(Clayton Haslop)- バイオリン
シャーロン・ジャクソン(Sharon Jackson)- バイオリン
ソンガ・リー(Songa Lee)- バイオリン
マーク・ロバートソン(Mark Robertson)- バイオリン
ジュリー・ロジャース(Julie Rogers)- バイオリン
メアリー・キャスリン・ヴァン・オズデイル(Mary Kathryn Van Osdale)- バイオリン
サージ・ディミトリエビッチ(Serg Dimitrijevic)- ギター
ジョー・フリードマン(Joe Friedman)- ギター
ランディー・エリス(Randy Ellis)- ホーンアレンジ、テナーサックス

Conclusion

世界的歌姫となったアリアナ・グランデ(Ariana Grande)のデビューアルバム『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Truly)
個人的な感想を言えば、今作はアリアナが発表したアルバムの中で最も完成度が高いと思う。
その理由はこのアルバムがアメリカのポップスらしさと、アリアナが持つR&Bの要素が交わりどちらの持ち味も発揮されているから。
商業的な作品ともいえるが、その中でしっかりとオリジナリティーも溢れるアルバム、それが『ユアーズ・トゥルーリー』(Yours Truly)なのだ。

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