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音楽は国境を越える。フランス生まれナイジェリア育ちの個性派シンガーが生んだアルバム『アシャ』(Asa)

英語とヨルバ語を駆使し、独特の世界観を生み出しているシンガー、アシャ(Asa)
両親は共にナイジェリア人だが、生まれはフランスと少し特殊な生い立ちを持っている。
これは彼女の両親がシネマトグラフィと呼ばれる特殊な撮影技術をパリで学んでおり、その滞在期間中にアシャを出産したためだ。

2歳になるころには両親と共に母国ナイジェリアへ帰国。
アシャは20歳になるまでの18年間を、ナイジェリア南西にあるラゴスで過ごすことになる。
この頃から彼女は歌うことが好きで、よく即興で曲を作り歌っていたそうだ。
父親の影響からブラック・ミュージックを愛し、当時はマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)、ボブ・マーリー(Bob Marley)、フェラ・クティ(Fela Kuti)などを好んで聞いていたという。

2002年にアシャはパリに戻り、音楽学校(IMFP school)へ入学しジャズを学び始める。
しかし、在学中に教師から「レコーディングアーティストを目指した方がいい。学校に通う必要はない」と言われたという。
それからアシャはオリジナル曲"Eye Adaba"をレコーディングし、音楽サイトへ投稿。
それがパリにある音楽レーベルナイーブレコード(Naive Records)の目に留まり、見事契約を勝ち取ったのだった。
そして記念すべきデビュー作となったのが、2007年にリリースした『アシャ』(Asa)である。

独特の音楽性を持つアシャ(Asa)の音楽はフランス国内で高く評価され、トータルセールス30万枚を突破。翌年に行われたフランス音楽の祭典プリックス・コンスタイン(Prix Constantin 2008)では新人賞を受賞した。

今作では全編を通して、クラシックギターのサウンドが基調とされている。

1曲目を飾るのは、リズミカルなバッキングから始まる"Jailer"。アルバムのOPに相応しい、グルーブ感溢れるキャッチーな楽曲だ。
"Fire On The Mountain"では、アシャの敬愛するボブ・マーリー(Bob Marley)からの影響を感じ取ることができる。シングルカットもされており、ライブでもよく演奏される人気の曲となった。
アシャを代表する楽曲となった"360 Degrees"は、アコースティックなサウンドが美しい楽曲。
ちなみに日本国内では「360度」というタイトルで永積タカシ(ハナレグミ)、由紀さおりがカバーしている曲でもある。
他にもストリングのサウンドが印象的な"Bi Ban Ke"や、レコード契約を勝ち取るきっかけとなった"Eye Adaba"など、全曲を通して中毒性が高い曲ばかり。
今作が持つ独特なオリジナリティは、アメリカやイギリスではなく、「フランスで愛されている理由」がなんとなく分かる気がする。

フランスやヨーロッパでデビューしたミュージシャンの知名度は、日本国内ではそれほど高くないだろう。しかし、アシャのように欧米出身でなくとも素晴らしいミュージシャンは数えきれないほど存在している。
アルバム『アシャ』(Asa)は、現在では世界中にファンを持つ作品であり、「音楽は国境を越える」ことを証明した名盤でもあるのだ。

ASA - Track Listing

No.TitleWriterLength
1.JailerAsa4:07
2.360 DegreesAsa3:32
3.Bi Ban KeAsa4:15
4.SubwayAsa4:42
5.Fire On The MountainAsa4:40
6.Eye AdabaAsa5:15
7.No One KnowsAsa3:34
8.AweAsa5:14
9.PeaceAsa3:09
10.So BeautifulAsa4:59
11.Iba (Bonus Track)Asa3:41

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