『セトル』(Settle)は、ディスクロージャー(Disclosure)が2013年にリリースしたデビュー・アルバムである。
本作は発表から初週で約45,000枚を売り上げ、同年には英国で最も優れたアルバムに対して贈られる賞「マーキュリー賞」(Mercury Prize)にノミネート。
2014年のグラミー賞では「ベスト・ダンス/エレクトロニクス・アルバム」にノミネートされるなど、ディスクロージャーの名を世界へ広めるきっかけとなった作品である。
今回は、ディスクロージャー、そして1stアルバム『セトル』(Settle)の内容を紹介していこう。
ディスクロージャー(Disclosure)は、ローレンス兄弟が結成したエレクトロニクス・ミュージック・デュオ。
兄のガイ・ローレンス(Guy Lawrence)1991年5月25日、弟のハワード・ローレンス(Howard Lawrence)は1994年5月11日に誕生している。
彼らの両親はプロの音楽家として活動しており、父はロックバンド、母はセッションミュージシャンとして活躍していた。
その影響から、兄のガイは3歳でドラムを、弟のハワードは8歳でベースを開始。
兄弟はそれ以外にもギター、ピアノ、そしてハワードはボーカルの勉強もしていたそうだ。
その後、ガイはイギリスのサリー州ライゲートにあるライギット大学へ入学。
在籍中はクラシック音楽に興味を持ち、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)やクロード・アシル・ドビュッシー(Claude Achille Debussy)の楽曲を研究していた。
それに加え、ミシガン州のラッパー、J・ディラ(J Dilla)の影響からヒップホップやダブステップにも関心を持ち、それがきっかけでハウス・ミュージックの制作を開始することになる。
また、兄の紹介でハウスに興味を持ったハワードも、ほぼ同時期にハウス・ミュージックの楽曲を作曲し始めたようだ。
ローレンス兄弟が特に影響を受けたミュージシャンとして、ジョイ・オービソン(Joy Orbison)、ジェイムス・ブレイク(James Blake)、ブリアル(Burial)、マウント・キンビー(Mount Kimbie)らを挙げている。
2010年、ローレンス兄弟は父のオークションハウスで流れていたライブ音楽のコピーや編曲を行いながら腕を磨いていく。
またそれと同時にオリジナル楽曲の制作も開始し、それらをMyspaceで公開。
その結果、彼らの楽曲は多くの人の関心を集め、兄弟は見事レコード契約を獲得する。
そこから兄弟はツアーやDJとのコラボ演奏等を行い、その知名度を更に高めていった。
2010年8月29日、ローレンス兄弟はアーティスト名をディスクロージャー(Disclosure)と改め、デビュー・シングルとなる『オフライン・デクステリティ』(Offline Dexterity)をリリース。
また、2011年1月には2枚目のシングル『カーニバル / アイ・ラブ・ザット・ユー・ノー』(Carnival / I Love...That You Know)を発表し、これがきっかけとなりサム・エヴィット(Sam Evitt)とマネジメント契約を結ぶこととなった。
2012年に入り、ディスクロージャーは1月にシングル『テンダリー / フロウ』(Tenderly / Flow)、6月にミニ・アルバム『ザ・フェイス』(The Face)をリリース。
そして11月には1stアルバムにも収録させることになるシングル『ラッチ』(Latch)を発表。サム・スミス(Sam Smith)をボーカルに迎えたこの作品は、UKシングルチャートにてそれまでで最高位の11位を獲得し、一般的にも広く知られるきっかけとなった。
そして来たる2013年。
ディスクロージャーは6月3日に満を持してデビュー・アルバム『セトル』(Settle)を発表する。
サム・スミスを筆頭にアルーナジョージ(AlunaGeorge)、イライザ・ドゥーリトル(Eliza Doolittle)など著名なボーカリストを迎えた今作は、瞬く間に世界中から高い評価を獲得。
「マーキュリー賞」(Mercury Prize)、グラミー賞「ベスト・ダンス/エレクトロニクス・アルバム」にもノミネートされ、現在までに約50万枚以上の売り上げを記録している。
さて、ここからは『セトル』(Settle)に収録された素晴らしい楽曲達について紹介していこう。
Settle - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Intro | Disclosure | 1:00 |
2. | When a Fire Starts to Burn | Disclosure | 4:43 |
3. | Latch | Disclosure | 4:16 |
4. | Defeated No More | Disclosure | 4:29 |
5. | F for You | Disclosure | 4:38 |
6. | White Noise | Disclosure | 6:09 |
7. | Stimulation | Disclosure | 5:22 |
8. | Voices | Disclosure | 4:05 |
9. | Second Chance | Disclosure | 2:22 |
10. | Grab Her! | Disclosure | 5:15 |
11. | You & Me | Disclosure | 4:29 |
12. | January | Disclosure | 5:55 |
13. | Confess to Me | Disclosure | 4:11 |
14. | Help Me Lose My Mind | Disclosure | 4:06 |
Background & Reception
1曲目の"Intro"はそのタイトル通り、このアルバムの導入。この流れから次の"When a Fire Starts to Burn"へ移行する。この曲は透明感のあるサウンドが印象的だ。
3曲目の"Latch"はジミー・ネイプス(Jimmy Napes)と共に作曲し、ボーカルにサム・スミス(Sam Smith)を迎えたナンバー 。2012年にシングルとしてリリースされており、イギリス国内のシングルチャートで11位を記録、国外のチャートでも軒並み上位を獲得した。
今でこそ有名なサム・スミスだが、この作品に参加した当時は現在ほど知名度のあるシンガーではなかった。"Latch"の成功は、サム・スミス(Sam Smith)、ディスクロージャー(Disclosure)双方にとって良い結果を生んだ作品と言えるだろう。
4曲目の"F for You"は打ち込みサウンドがメインの曲。アルバム内では唯一、ゲストボーカルなしの曲でシングルカットされた曲でもある。人気サッカーゲーム『FIFA』シリーズの2014年度バージョン”FIFA 14"でも使用された。
アルーナジョージ(AlunaGeorge)をボーカルに迎えた"White Noise"は、アルバム発表前にシングルとしてリリースされており、シングルチャート2位を獲得した曲。作曲はアルーナジョージに加え、ニュージーランド出身のライター、ジェームス・ネイピア・ロバートソン(James Napier)も参加している。アップテンポでノリが良く、尚且つメロディアスなナンバー。
"Defeated No More"はイギリスのシンガーソングライターであるエド・マクファーレン(Ed Macfarlane)をリードボーカルとしてフューチャー。アルバムの中では比較的BPMが抑えられた曲だ。
"Stimulation"は"F for You"と同じく打ち込みメインの曲。リードボーカルなしのハウスミュージックだ。
"Voice"は弟のハワードと同じ1994年生まれのイギリス人シンガー、サーシャ・キーブル(Sasha Keable)をフューチャーした曲。グルーブ感溢れるアップテンポなナンバーだ。また、アルバム中で最後にシングルカットされた曲でもある。
"Second Chance"、"Grab Her!"は共にボーカルなしのEDM。"Grab Her!"は後にエミル・ソーニン(Emile Sornin)を監督に迎え、ミュージック・ビデオも作成されている。
11曲目の"You & Me"はイライザ・ドゥーリトル(Eliza Doolittle)をボーカルに迎えた曲。このアルバムの3rdシングルとしてもリリースされている。"Latch","White Noise"に次いで人気の高い曲と言えるだろう。1950~1970年代の音楽を愛しているイライザがリードボーカルなだけあり、どこか懐かしさを感じるナンバー。
12曲目は英国の歌手、ジェイミー・ウーン(Jamie Woon)をリードボーカルに迎えた"January"。ジェイミーも打ち込みサウンドがメインなのでディスクロージャー(Disclosure)との相性は抜群だ。
次の"Confess to Me"はロンドン出身のシンガーソングライターであるジェシー・ウェア(Jessie Ware)をフューチャーした曲。イギリスのEDMらしい独特のサウンドが特徴の曲だ。
最後の"Help Me Lose My Mind"はイギリスのインディーポップバンド、ロンドン・グラマー(London Grammar)をリードボーカルに迎えた曲。作曲にはバンドメンバーのハンナ・レイド(Hannah Reid)もクレジットされており、6番目にシングルカットもされている。
Settle - Credit
ディスクロージャー(Disclosure) – ミックス、プロダクション
ハワード・ローレンス(Howard Lawrence)- ボーカル(track 4, 13)
イライザ・ドゥーリトル(Eliza Doolittle)- ボーカル(track 11)
アルーナ・フランシス(Aluna Francis)- ボーカル(track 5)
スチュアート・ホークス(Stuart Hawkes)- マスタリング
サシャ・キーブル(Sasha Keable)- ボーカル(track 8)
エド・マクファーレン(Ed Macfarlane)- ボーカル(track 6)
ハナー・リード(Hannah Reid)- ボーカル(track 14)
サム・スミス(Sam Smith)- ボーカル(track 3)
ジェシー・ウェア(Jessie War)- ボーカル(track 13)
ジェイミー・ウーン(Jamie Woon)- ボーカル(track 12)
Conclusion
デビューアルバムにして、世界中にその名を轟かせたディスクロージャー(Disclosure)。
2013年には"White Noise"でコラボしたアルーナジョージ(AlunaGeorge)と共に来日し大阪、新木場などでライブを行い、同年のフジロック・フェスティバルにも出演している。日本での知名度は海外ほどは高くないないが、EDMを愛するものであれば、知っておくべきデュオグループだ。そしてそんなローレンス兄弟のデビューアルバムにして名盤となった『セトル』(Settle)。是非あなたの耳で確かめてほしい。