ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)を中心に結成されたフュージョンバンド、ブレッカー・ブラザーズ(Brecker Brothers)。
彼らは1975年にファースト・アルバム『ザ・ブレッカー・ブラザーズ』(The Brecker Bros.)を発表し、グラミー賞にて3部門にノミネートされる快挙を達成する。
一気に知名度を高めたブレッカー兄弟は、1976年に『バック・トゥ・バック』、その翌年に『ドント・ストップ・ザ・ミュージック』(Don’t Stop the Music)をリリース。1stアルバムほどではなかったが、好評を博し、ブレッカー・ブラザーズの地位を確固たるものにした。
そして1978年9月、ブレッカー兄弟は初のライブ・アルバムとなる『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』(Heavy Metal Be-Bop)を発表。
本作は、ブレッカー・ブラザーズの最高傑作として知られているだけでなく、フュージョンを代表する作品として広く知られている名盤中の名盤である。
そのグループの実力が顕著に表れるのがライブ・アルバムだが、さすがはブレッカー・ブラザーズ。全ての楽曲でオリジナルを超えたアレンジ、それに加えライブならではの勢いも持ち合わせた演奏を披露している。
また、今作にはドラマーとしてテリー・ボジオ(Terry Bozzio)が参加。テリーは1975年からフランク・ザッパ(Frank Zappa)のドラマーとして活躍し、その後はジェフ・ベック(Jeff Beck)、ビリー・シーン(Billy Sheehan)らと共演。「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のドラマー」では5位を獲得するほど人気の高いドラマーである。本作でも、ドラマーであれば興奮せずにはいられない、最高のパフォーマンスを披露。
『ヘヴィ・メタル・ビ・バップ』(Heavy Metal Be-Bop)が名盤である理由のひとつして、彼の存在は欠かすことが出来ないだろう。
Heavy Metal Be-Bop - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | East River | Neil Jason, Bret Mazur, Kash Monet | 3:35 |
2. | Inside Out | Randy Brecker | 9:31 |
3. | Some Skunk Funk | Randy Brecker | 6:59 |
4. | Sponge | Randy Brecker | 6:23 |
5. | Funky Sea, Funky Dew | Michael Brecker | 8:02 |
6. | Squids | Randy Brecker | 7:56 |
Background & Reception
収録曲はファースト・アルバム、サード・アルバムからそれぞれ2曲、それに新譜2曲を追加した計6曲。捨て曲は一切なく、グループ感に溢れた名盤に相応しい楽曲達が並んでいる。
1曲目は、唯一スタジオで収録したナンバーでもあり、唯一のボーカル曲でもある"East River"。本アルバムで初披露された2曲のうちのひとつであり、イギリスではシングルとしてもリリースされ、音楽チャートで34位を獲得している。シンプルな曲構成と厚みのあるバック・トラックが特徴。
続く2曲目の"Inside Out"も、今作で初披露された楽曲である。
ブルースを基調とした楽曲だが、ランディの作曲したナンバーらしくアウトしたコード進行やオカズが存分に詰め込まれている。エフェクターを使用したランディ&マイケルのソロにも注目だ。
3曲目にはブレッカー・ブラザーズを代表する名曲"Some Skunk Funk"を収録。オリジナルでも十分に素晴らしいのにも関わらず、この演奏はそれを凌駕している。不規則でメロディアスなイントロ、ブレッカー兄弟のソロ、力強いドラミング、グルーブ感溢れるベースライン、その全てが素晴らしい。
フュージョンという枠を越え、音楽史に残る名演といっても過言ではないだろう。
4曲目"Sponge"も"Some Skunk Funk"と同じくファースト・アルバム『ザ・ブレッカー・ブラザーズ』(The Brecker Bros.)からの選曲。ブレッカー兄弟のソロが素晴らしいのはもちろんだが、この曲での注目はバリー・フィナティ(Barry Finnerty)のギター・ソロだろう。ブルースを基調とした泣けるフレーズを連発しており、ギタリストとしての幅の広さを見せつけている。それに鼓舞されたかのようなテリーのドラミングも圧巻の一言。
サード・アルバム『ドント・ストップ・ザ・ミュージック』(Don’t Stop the Music)から選曲されたのは、哀愁漂うナンバー"Funky Sea, Funky Dew"。バラードではないが、本作では唯一落ち着いた楽曲となっている。とはいっても、後半からは少し激しさを増し、タイトル通りファンキーなチューンへと変化。この曲で感じることは、彼らはスローテンポでも、アップテンポでも最高峰の演奏ができるということだ。
ラストを飾るのは、サード・アルバムに収録されている"Squids"。展開が目まぐるしく変わるフュージョンらしい楽曲だ。ここでの注目はベーシスト、ニール・ジェイソン(Neil Jason)のベース・ソロだろう。手数が少ないながらもグルービーなソロは、全てのベーシストの模範となるはずだ。曲間のランディとの掛け合いは、一流ミュージシャンにのみ許された”音楽による会話”とも言い換えできるだろう。
Heavy Metal Be-Bop - Credit
ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)- トランペット、キーボード
マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)- テナーサックス
バリー・フィナティ(Barry Finnerty)- ギター、バックボーカル
テリー・ボジオ(Terry Bozzio)- ドラム、バックボーカル
ニール・ジェイソン(Neil Jason)- ベース
サミー・フィグエロア(Sammy Figueroa)- パーカッション
ラファエル・クルーズ(Rafael Cruz)- パーカッション
キャッシュ・モネット(Kash Monet)- ハンドクラップ、パーカッション、バックボーカル(Track 1)
ポール・シェーファー(Paul Shaffer)- フェンダーローズ(Track 1)
ヴィクトリア(Victoria)- タンバリン(Track 1)
ジェフ・シェーン(Jeff Schoen)- バックボーカル(Track 1)
ロイ・へリング(Roy Herring)- バックボーカル(Track 1)
アラン・シュワルツバーグ(Allan Schwartzberg)- ドラム(Track 1)
ボブ・クリアマウンテン(Bob Clearmountain)- ハンドクラップ(Track 1)