ブレッカー・ブラザーズ(Brecker Brothers)は、ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)、マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)を中心に結成されたフュージョンバンドである。
ランディはトランペット、マイケルはサックス奏者として卓越した技術を持ち、これまでに多くの著名人と共演。その活躍はフュージョンの枠を超え、ロック・ジャズ・ポップ・R&Bなどにまで及び、高い評価を獲得している。
これまでにブレッカー兄弟が共演した一部のアーティストを紹介しよう。
- ジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius)
- チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)
- クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)
- マーカス・ミラー(Marcus Miller)
- ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)
- フランク・ザッパ(Frank Vincent Zappa)
- パット・メセニー(Pat Metheny)
- エアロスミス(Aerosmith)
- カシオペア (Casiopea)
これだけみても、ブレッカー兄弟が如何に優れたミュージシャンであるか分かるだろう。
今回紹介するのは、そんな彼らが初めてブレッカー・ブラザーズ名義で発表した『ザ・ブレッカー・ブラザーズ』(The Brecker Bros.)である。
1975年にアリスタ・レコードからリリースされた今作は、フュージョンというジャンル故に発売当初の売上は伸び悩んだ。
しかし、演奏技術はもちろん、その楽曲の素晴らしさから徐々にファンを獲得。
翌年のグラミー賞では受賞こそならなかったものの、3部門にノミネートされるなど、彼らが広く認知されるきっかけとなった。
現在ではブレッカー兄弟のみならず、フュージョン/ファンクを代表する名盤として世界各国で愛されている。
1曲目"Some Skunk Funk"は、高速で多彩なフレーズが散りばめられており、聞いているだけでワクワクする楽曲。不規則ながらメロディアスなイントロとメロディー、ランディのトランペットソロ、ハーヴィー・メイソンのドラミングなど素晴らしい点を挙げるとキリがない。
ブレッカー・ブラザーズの楽曲で最も人気が高く、彼らの全てが詰まっているいっても過言ではない名曲だ。
この曲は第18回グラミー賞にて「ベスト・ニューアーティスト」「ベスト・インストルメンタル・アレンジメント」にノミネートもされている。
「R&B」「ファンク」「フュージョン」の要素が見事に融合された楽曲が、2曲に並んだ"Sponge"。"Some Skunk Funk"とは打って変わってシンプルな曲構成ながら、グループ感を重視したのノリのよいナンバーだ。ここでの注目は、ランディのトランペットとドン・グロルニックのキーボートの掛け合いだろう。また、後半にかけてのウィル・リーのベースも、フュージョン・サウンド全開の心地よい演奏だ。
3曲目"A Creature of Many Faces"は、曲の展開が目まぐるしく変わる、ある意味"フュージョンらしい"ナンバー。この楽曲ではランディのフリューゲルホルンによるソロをきくことができる。いつも見せてくれるファンキーなソロではなく、楽器本来のサウンドを活かした美しいソロに注目してもらいたい。
複雑で緊張感に溢れる楽曲が、4曲目に並んだ"Twilight"。この楽曲を支えているのは、紛れもなくリズム隊のウィルとハーヴィー、そしてパーカッションのラルフ・マクドナルドだろう。テンポが目まぐるしく変化するものの、安定したビートを生み出し程よい緊張感を演出している。
また、曲管のグロルニックのキーボード・ソロ、ボブ・マンのギターソロもオリジナリティーに溢れた素晴らしい演奏だ。
5曲目"Sneakin’ up Behind You"では、このアルバムで唯一クリストファー・パーカー(Chris Parker)が参加しているナンバー。
ツイン・ドラムならではのダンサンブルなリズムが楽しめ、「ファンク」「ディスコ」の要素を強く感じる。また、コーラスとしてベーシストのウィルが参加していることも特徴だろう。
第18回グラミー賞では「ベスト・R&B・インストルメンタル・パフォーマンス」にも選ばれた人気の高い楽曲だ。
"Some Skunk Funk"と並び、人気が高い楽曲が6曲目"Rocks"である。イントロを終えると、ハーヴィー・メイソンのタイトなドラミングが始まり、それにボブ・マンのファンキーなワウ・ギターサウンドが重なる。曲が進むごとにファンキーが増していき、極めつけは、マイケルのテナーサックス・ソロとサンボーンのアルトサックス・ソロバトル。サックス奏者であれば、一度は彼らのようにプレイすることを夢見るのではないだろうか。
また、このナンバーのハーヴィー・メイソンのドラムについて、評論家の熊谷美広氏は「メイソンがハービー・ハンコック(Herbie Hancock)のアルバム『ヘッド・ハンターズ』(Head Hunters)の"Sly"に並ぶベスト・テイク」と称賛している。
ランディーのバラード曲でのトランペット・ソロが堪能できるのが"Levitate"。高いピッチでスローなテンポながら、ここまで暖かみのあるサウンドが出せるプレイヤーは、世界中でも数えるほどしかいないだろう。ランディのトランペットを堪能しつつ、アルバムの箸休め的な役目も担っている楽曲だ。
"Oh My Stars"は唯一のボーカル曲であり、歌を担当しているのはランディ。彼らの楽曲にしては珍しく、シンプルな曲構成となっている。しかし、ここでもリズム隊のグルーブ感作りは素晴らしく、ベース、ドラムのサウンドだけでも楽しめるほどに心地よい。曲間のサンボーン、マイケルのソロも短い小節ながら完璧に楽曲に馴染んでいる。
アルバムの最後を飾るのは、ブレッカー・ブラザーズらしいナンバーの"D.B.B"。"Some Skunk Funk"、"Rocks"と似た系統の楽曲で、フュージョン色が強く、高速で不規則なキメがかっこいい。また、マイケルのテナーサックスソロも最高にキマっており、それに引けをとらないグロルニックのキーボードにも注目だ。
ブレッカー兄弟を一躍有名にし、歴史に名を刻んだフュージョン/ファンクの名盤『ザ・ブレッカー・ブラザーズ』(The Brecker Bros.)。
エキサイティングな音楽を求めている方に是非おすすめしたい。
The Brecker Bros. - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Some Skunk Funk | Randy Brecker | 5:51 |
2. | Sponge | Randy Brecker | 4:05 |
3. | A Creature of Many Faces | Randy Brecker | 7:40 |
4. | Twilight | Randy Brecker | 5:43 |
5. | Sneakin’ up Behind You | Michael Brecker, Randy Brecker, Don Grolnick, Will Lee, David Sanborn | 4:54 |
6. | Rocks | Randy Brecker | 4:39 |
7. | Levitate | Randy Brecker | 4:31 |
8. | Oh My Stars | Randy Brecker | 3:13 |
9. | D.B.B | Randy Brecker | 4:46 |
The Brecker Bros. - Credit
ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)- トランペット、フリューゲルホルン、ボーカル(Track 8)
マイケル・ブレッカー(Michael Brecker)- テナーサックス
デイヴィッド・サンボーン(David Sanborn)- アルトサックス
ドン・グロルニック(Don Grolnick)- キーボード
ボブ・マン(Bob Mann)- ギター
ウィル・リー(Will Lee)- ベース、ボーカル(Track 5)
ハーヴィー・メイソン(Harvey Mason)- ドラム
クリストファー・パーカー(Chris Parker)- ドラム(Track 5)
ラルフ・マクドナルド(Ralph MacDonald)- パーカッション