ボーカルのジェイソン・ケイ(Jason Kay)を中心に構成されたイギリス出身のアシッドジャズバンド、ジャミロクワイ (Jamiroquai)。独自の音楽性で多くのオーディエンスを魅了し、世界各国に熱狂的なファンを持つファンクバンドだ。
1993年にリリースした1stアルバム『エマージェンシー・オン・プラネット・アース』(Emergency On Planet Earth)で大成功を収めたケイは、すぐに2ndアルバムの制作に取り掛かった。
しかし、意欲的に曲作りに励んでいたケイに対し、当時ドラマーだったニック・ヴァン・ゲルダー(Nick van Gelder)が長期のバカンスに出てしまう。
これに腹を立てたケイは、ニックを解雇。代わりのドラマーとして、デリック・マッケンジー(Derrick McKenzie)を雇い、バンドメンバーとして迎え入れることとなった。
新しいメンバーも加わり、自信に満ち溢れていたケイだったが、曲作りの際に突然スランプに陥ってしまう。満足のいく作曲も出来ないことが原因でドラッグの量も増え、バンドも一旦頓挫することとなった。
この状態を抜け出すきっかけとなったのが、アルバムのリードシングルにもなった"Space Cowboy"だった。この曲が完成したことにより、作品の方向性が見えたジャミロクワイは、改めてアルバムの制作を開始。無事に全12曲のレコーディングを終え、2ndアルバム『スペース・カウボーイの逆襲』(The Return of the Space Cowboy)を完成させた。
The Return of the Space Cowboy - Track Listing
No. | Title | Writer | Length |
1. | Just Another Story | Jay Kay, Toby Smith | 8:49 |
2. | Stillness in Time | Jay Kay, Toby Smith | 4:15 |
3. | Half the Man | Jay Kay, Toby Smith | 4:48 |
4. | Light Years | Jay Kay, Toby Smith | 5:53 |
5. | Manifest Destiny | Jay Kay, Toby Smith | 6:19 |
6. | The Kids | Jay Kay, Toby Smith | 5:08 |
7. | Mr. Moon | Jay Kay, Toby Smith, Stuart Zender | 5:28 |
8. | Scam | Jay Kay, Toby Smith, Stuart Zender | 7:00 |
9. | Journey to Arnhemland | Jay Kay, Wallis Buchanan, Toby Smith | 5:19 |
10. | Morning Glory | Jay Kay, Stuart Zender | 6:21 |
11. | Space Cowboy | Jay Kay | 6:29 |
Background & Reception
ジェイソン・ケイは、この様々な障害を乗り越え生まれた作品を「最も創造的なアルバムのひとつ」と評価している。
セッション的な要素の強い"Just Another Story"から始まり、2曲目の"Stillness in Time"は軽快なサウンドが特徴のサマーチューン。シングルカットもされており、UKチャートでは9位を獲得している。
3曲目に選ばれた"Half the Man"は浮遊感の漂う暖かみのあるナンバー。生後6ヶ月で亡くなったケイの双子の兄弟、デイビットについて歌われており、ミュージックビデオも作成されている。
本国イギリスよりアメリカでの人気が高いのが"Light Years"。アメリカでリリースされたシングルではDJとして知名度の高いデヴィッド・モラレス(David Morales)がミックスを担当し話題になった。
今作中、最もアップテンポなのが6曲目の"The Kids"。バンド要素が強い楽曲であり、唯一前ドラマーのニック・ヴァン・ゲルダー(Nick van Gelder)がレコーディングを行った曲でもある。
"Mr. Moon"、”Scam”はベーシストのスチュアート・ゼンダー(Stuart Zender)が作曲に参加している。どちらもゼンダーらしい、ファンキーなベースラインを楽しめるファンクナンバーだ。
作品の最後を飾るのは、このアルバムの方向性を決めるきっかけとなった"Space Cowboy"。
ボーカルのジェイ・ケイ自身もこの曲を「カムバック・アンセム」(comeback anthem)と呼んでおり、特別な想いのある楽曲のようだ。独特のメロディー・サウンド・テンポで”ジャミロクワイらしい”ナンバー。
ファンの間でも人気が高く、ジャミロクワイを代表する楽曲のひとつと言えるだろう。
ちなみにこの曲はゼンダーがベースをプレイした"Stoned Again Mix"、Mr. Xがベースを担当したバージョンの2通りがある。※ゼンダーのInstagramの投稿にて、Mr.Xがポール・パウエル(Paul Powell)であることが判明している。
The Return of the Space Cowboy - Credit
ジェイ・ケイ(Jay Kay)- ボーカル、アレンジ
スチュアート・ゼンダー(Stuart Zender)- ベース
デリック・マッケンジー(Derrick McKenzie)- ドラム
エディ・モンスーン(Eddie Monsoon)- フォトグラフィ
クリス・ナッシュ(Chris Nash)- フォトグラフィ
マイケル・ニールセン(Michael Nielsen)- エンジニア
トビー・スミス(Toby Smith)- キーボード
アル・ストーン(Al Stone)- エンジニア、ミックス
ウォーリス・ブキャナン(Wallis Buchanan)- ディジュリドゥ、ビブラフォン
マーティン・ハリソン(Martin Harrison)- ミックス